毎年、会計事務所から決算書を受け取っているが、中身はあまり見ていない。
銀行へ決算書を提出するときも、受け取った決算書をそのまま渡している。
このような会社は珍しくありません。
決算書は、税務申告に必要な書類ですが、役割は税金の計算だけではありません。
決算書は、自社の財務状況の把握や外部に説明する際に非常に重要です。
しかし、すべてを自社のルールで経理処理していると、銀行などが財務状況を確認する際に困ってしまします。
そこで参考になるのが、中小会計要領です。
今回は、中小会計要領の基本と、中小会計要領に基づいた決算書を作るときの確認事項を見ていきます。。
- 中小会計要領は、中小企業向けの会計ルール
- 会社の実態を決算書へ反映することが重要
- 決算書の内容を整理すると、銀行などへ説明しやすくなる
- B/Sの確認は大切
中小会計要領に関する各論点につきましては、下記の関連記事をご覧ください。
中小会計要領とは

中小会計要領(正式名称「中小企業の会計に関する基本要領」)は、中小企業が決算書を作るときの会計ルールのひとつです。
中小企業の会計に関する基本要領(中小会計要領)は、次のような中小企業の実態を考えてつくられた会計ルールです。
引用元:中小企業庁|中小会計要領について
- 経理人員が少なく、高度な会計処理に対応できる十分な能力や経理体制を持っていない
- 会計情報の開示を求められる範囲が、取引先、金融機関、同族株主、税務当局等に限定されている
- 主に法人税法で定める処理を意識した会計処理が行われている場合が多い
中小企業の実態に配慮した会計ルール
会計ルールについて、中小企業と上場企業では経理体制が異なります。
中小企業では、次のような状況が多いです。
- 経理を担当する人が少ない
- 経営者が経理も担当している
- 複雑な会計処理への対応が難しい
- 法人税を意識した会計処理が多い
決算書を確認する利害関係者も、取引先、金融機関、同族株主、税務当局などに限られています。
このような中小企業では、上場企業で使用する会計基準を導入することが困難です。
中小会計要領は、中小企業の実務に配慮しています。
税制との調和を図りながら、作成時の負担を抑える考え方も取り入れています。
一般的な中小企業が活用を検討できる
中小会計要領は、一般的な中小企業が利用することが想定されています。
とくに利用が法律で強制されている制度ではありません。
しかし、決算書が会計ルールのしたがって適正に作られ、財務状況がわかりやすいことは、銀行融資などを受ける際にメリットとなります。
中小会計要領を活用する3つの意味

中小会計要領という言葉を知らなくても、毎年の決算は行えます。
では、なぜ中小会計要領を活用するのがおすすめなのでしょうか?
主な理由は、次の3つです。
- 会社の実態を数字へ反映する。
- 銀行や取引先へ説明しやすくする。
- 自社の経営判断に役立てる。
それでは、順番に見ていきましょう。
会社の実態を数字に反映できる
会計ソフトへ取引を入力すれば、貸借対照表や損益計算書を作れます。
しかし、会計ルールにしたがって入力されていなければ、貸借対照表や損益計算書が会社の実態と表すとは限りません。
売掛金、在庫や固定資産が適正に計上されていないと、会社が持っている資産を正確に把握できません。
会計ソフトから出力しただけでは、決算書は完成しません。
決算時には、帳簿の数字を確認します。
必要があれば、会社の実態に合わせて修正します。
ここが、中小会計要領を活用する出発点です。
銀行や取引先へ説明しやすくなる
銀行へ融資を申し込むと、決算書の提出を求められることがあります。
銀行へ決算書を提出した後に、数字の内容を聞かれる場合もあるでしょう。
たとえば、次のような質問です。
- 売上が増えた理由は何か?
- 利益が減った原因は何か?
- 借入金を何に使ったのか?
- 売掛金が増えた理由は何か?
- 現預金が減った原因は何か?
質問を受けたときに、毎年決められた会計ルールで決算書を作成していれば、数字の変動を把握できるため、銀行に対して変動理由を説明しやすくなります。
たとえば、現預金が減った場合でも、必ずしも経営状態が悪化したとは限りません。
設備投資や借入金の返済を進めたことが原因の可能性があります。
中小会計要領の利用だけで、融資や取引の結果が決まるわけではありません。
それでも、中小会計要領という会計ルールにしたがって決算書の中身を整理しておけば、会社の状況を伝える土台になります。
自社の経営判断に使いやすくなる
決算書は、銀行へ提出するためだけの資料ではありません。
会社の財務状況を、経営者自身が確認するための資料でもあります。
ただし、利益だけを見ても、会社の状況を十分には把握できません。
たとえば、売上を計上しても、入金前であれば現預金は増えません。
在庫を仕入れれば、現預金は減ります。
一方で、在庫という資産は増えます。
借入金を返済した場合も、返済額が費用になるとは限りません。
利益と手元のお金は、同じ動きをしないからです。
経営判断では、次の項目も確認しましょう。
- 現預金は、いくら残っているか?
- 売掛金は、予定どおり回収できているか?
- 在庫は、増えすぎていないか?
- 借入金は、いくら残っているか?
- 純資産は、増えているか?
これらの確認をする際にも、同じ会計ルールを使っていれば前年との比較が行えます。
現在の数字をみることで、今後の資金繰りや財務状況を検討することができます。
前年との比較をすることで、前年から良くなったのか悪くなったのかを比較することができます。
数字と率の両方をあわせて見ることで、会社の財務状況を把握しやすくなります。
決算書の信頼性を高めるために確認したいこと

中小会計要領を活用するには、決算書に載る数字を確認すること重要です。
経営者として、どこを確認すべきかを押さえましょう。
帳簿と実際の残高を照合する
決算時には、会計ソフトに表示された金額と、実際の残高が合っているかを確認します。
主な確認項目は、次のとおりです。
- 現金預金
- 売掛金
- 買掛金
- 棚卸資産
- 固定資産
- 借入金
預金は、通帳や残高証明書と照合しましょう。
金額が違う場合は、入力漏れや二重入力がないかを調べます。
売掛金は、取引先ごとに残高を確認しましょう。
何年も残っている売掛金があれば、回収できるかを検討する必要があります。
買掛金も、売掛金と同じように確認しましょう。
すでに支払った金額が、帳簿に残っている場合があります。
在庫を持つ会社では、実際の数量を数えて確認しましょう。
帳簿には残っていても、販売できない商品が含まれるかもしれません。
また、集計ミスや破損・紛失で帳簿上の在庫数量と実際の在庫数量が異なる場合もあります。
固定資産は、現在も使っているかを見ます。
帳簿上には存在していても、実際には稼働していない固定資産がないかを調べます。
借入金は、銀行の返済予定表などと照合しましょう。
支払利息分も借入金の元金に含めて借入金を減少させているケースがあります。
利益だけでなく貸借対照表も確認する
決算書を受け取ったとき、最初に損益計算書の利益を見る人は多いと思います。
「今年はいくらもうかったのか」は、経営者にとって気になる数字です。
しかし、利益を確認するだけでは、決算書を十分に活用できていません。
貸借対照表の資産・負債・純資産も確認しましょう。
貸借対照表には、決算日時点の財務状況が載っています。
たとえば、次の内容を確認できます。
- 会社が保有している資産
- 今後返済する必要がある負債
- 会社に蓄積された純資産
黒字でも、借入金が増えている場合があります。
売掛金が増え、入金が遅れているかもしれません。
在庫が増えた結果、手元の現預金が減ることもあります。
上の状況は、損益計算書の利益だけを見ても分かりません。
利益を確認した後は、貸借対照表の変化も見ましょう。
前期と比べて、大きく増減した項目を確認してみてください。
数字の変化を追うと、会社の課題に気づきやすくなります。
経営者も数字が変わった理由を確認する
会計処理を会計事務所に依頼していても、経営者は次の質問に答えられる状態を目指しましょう。
- 今期の利益はいくらか?
- 現預金はいくら残っているか?
- 借入金はいくらあるか?
- 純資産は増えているか?
- 前期から大きく変わった数字は何か?
数字に変化があれば、理由を検討します。
売上が増えたのに、利益が減っているかもしれません。
設備投資によって、現預金が減っている場合もあります。
新たな借入れを行えば、現預金と借入金が同時に増えます。
決算書の数字には、会社が行った取引の結果が表れます。
会計事務所の担当者から決算内容の説明を受けるときも、数字の増減理由を担当者へ確認しましょう。
決算書の分析では数字が変化した理由を理解することが重要です。
数字の変動理由が分かれば、翌期に取り組む課題も見えやすくなります。
中小会計要領を決算書づくりに活用しましょう
中小会計要領は、中小企業の実態に配慮した会計ルールです。
会社の実態を数字へ反映すると、決算書の内容を説明しやすくなります。
銀行や取引先への説明だけが目的ではありません。
自社の財務状況を知り、今後の経営を考えるためにも役立ちます。
決算時には、帳簿と実際の残高を照合しましょう。
損益計算書だけでなく、貸借対照表の変化も確認します。
前期から大きく変わった数字があれば、変化した理由を考えてみてください。
「決算書を作って、税務申告をすれば終わり」の状態から一歩進み、決算書を翌期の判断に役立てていきましょう。
毎年決算書を作っていても、数字の中身までは確認できていない場合があります。
次のような不安はないでしょうか。
- 銀行へ決算書の内容を説明できない
- 利益と資金繰りの関係が分からない
- 貸借対照表の見方に自信がない
- 借入金の状況を整理できていない
- 前期から数字が変わった理由が分からない
このような不安がある場合には、税務顧問、個別コンサルティング、メール相談をご検討ください。
経営者と一緒に数字の内容を確認し、今後の判断に使える形へ整理するお手伝いをさせていただきます。
会社によって、取引内容や必要な会計処理は異なります。
決算書の内容に不安がある方は、ご相談ください。
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