売上は、入金された日に計上している。
費用は、支払った日に計上している。

「通帳を見ればすぐに確認できるから」と、お金が動いた日で売上や費用を計上している会社があります。

しかし、売上や費用を計上する時期は、入金日や支払日だけでは決まりません。

商品を販売した場合には、いつ出荷し、いつ取引先へ引き渡したのかの確認が必要です。
サービスを提供した場合には、契約した作業がいつ完了したのかが重要となります。

費用についても、支払った日だけを見るのではありません。
いつサービスを受けたのか、何月分の支払いなのかを確認する必要があります。

売上や費用を適切な時期に計上しないと、その月や事業年度の利益が実態とズレてしまいます。

中小会計要領においても、下記のような「収益、費用の基本的な会計処理」というルールがあります。

ルールにしたがった会計処理を行うことは、会社の利益を正しく計算するためには欠かせません。

1. 収益、費用の基本的な会計処理

(1) 収益は、原則として、製品、商品の販売又はサービスの提供を行い、かつ、これに対する現金及び預金、   
  売掛金、受取手形等を取得した時に計上する。

(2) 費用は、原則として、費用の発生原因となる取引が発生した時又はサービスをの提供を受けた時に計
  上する。

(3) 収益とこれに関連する費用は、両者を対応させて期間損益を計算する。

(4) 収益及び費用は、原則として、総額で計上し、収益の項目と費用の項目とを直接に相殺することによっ
  てその全部又は一部を損益計算書から除去してはならない。

引用元:日本税理士連合会|「中小企業の会計に関する基本要領」

今回は、中小会計要領の論点のうち、売上(≒収益)費用について確認していきます。

そもそも中小会計要領とは何か?を確認されたい方は、下記の関連記事をご覧ください。

この記事の要点
  • 売上は、入金日だけで判断しない
  • 費用は、支払日だけで判断しない
  • 売上と関連する費用は、同じ期間に反映する
  • 売上と費用は、原則として分けて計上する

売上は入金日だけで判断しない

商品を販売しても、その場で代金を受け取るとは限りません。
取引先へ請求書を送り、翌月以降に入金されることもあります。

また、入金が翌月になったからといって、売上も翌月になるとは限りません。
売上の計上時期は、商品やサービスをいつ提供したのかを確認して判断します。

中小会計要領では、商品やサービスを提供し、その対価を受け取る権利(=売掛金・受取手形など)が生じたときに、売上を計上する考え方が示されています。

代金を後から受け取る場合は、売上とあわせて売掛金を計上します。
売掛金とは、販売した商品やサービスの代金を、取引先から受け取る権利です。

この売上に関する考え方は、一般に「実現主義」と呼ばれます。

入金の有無だけでなく、販売やサービス提供がいつ行われたのかを確認します。

商品販売では引渡しや検収の時期を確認する

商品の売上では、相手へ商品を引き渡した時期がひとつの判断材料になります。

たとえば、次の取引があったとします。

  • 3月25日に商品を出荷した
  • 3月28日に取引先へ納品した
  • 4月10日に代金が入金された

入金日だけを見れば、4月の売上に見えますが、3月中に商品の納品が完了していれば、3月の売上となる場合があります。

実際にどの日を売上の計上日とするかは、契約内容や取引の流れによって異なります。
実務上は、主に次の時点が判断の基準になります。

  • 商品を出荷した時点
  • 取引先へ納品した時点
  • 取引先の検収が終わった時点

検収とは、納品された商品の内容や数量を、取引先が確認する手続きです。

もし、検収の完了で売上を計上している場合は、商品を出荷しただけでは売上を計上できないので注意しましょう。

請求書の日付だけで決めない

請求書は、月末にまとめて発行することもあります。そのため、請求書の日付と、商品の販売が完了した日は必ずしも一致しません。

売上の計上日を判断するときは、請求書だけでなく、契約内容や納品状況も確認しましょう。

自社の取引に合った計上基準を決め、毎期継続して使うことが大切です。

売上を早く計上するか、遅く計上するかを、会社の都合だけで選ぶことはできません。
実際の取引に合う基準を使い、同じ基準を継続する必要があります。

サービスでは提供した時期を確認する

サービス業でも、入金日だけで売上を判断することはできません。
実際にサービスを提供した時期や、契約上の作業がどこまで終わっているかを確認します。

3月中に依頼された作業を終え、4月に請求書を発行したとします。
代金の入金が5月になったとしても、契約上の作業が3月に完了していれば、3月の売上となる場合があります。

反対に、サービスを始める前に代金を受け取る取引もあります。
その場合、先に入金されたという理由だけで、すぐに全額を売上にできるとは限りません。

先に入金されただけで、まだサービスを提供していない部分が残っているためです。

年間契約のように、継続してサービスを提供する取引もあります。
このような契約では、契約期間やサービスの提供状況を確認したうえで、売上を計上します。

売上の計上時期を考えるときは、以下の資料などを確認する必要があります。

  • 契約書
  • 申込書
  • 納品書
  • 作業完了報告書

請求日や入金日だけを見るのではなく、何を、いつ提供したのかを資料から確認することが大切です。

費用は支払日だけで判断しない

費用についても、支払った日に計上するとは限りません。

すでにサービスを受けていれば、まだ支払っていなくても費用になる場合があります。
反対に、支払いが済んでいても、すぐに全額が費用になるとは限りません。

中小会計要領では、費用の原因となる取引が発生したときや、サービスを受けたときに、費用を計上する考え方が示されています。

この考え方は、一般に「発生主義」と呼ばれます。

費用の計上では、支払日だけでなく、サービスを受けた時期や支払いの対象期間を確認します。

後払いでも費用になることがある

会社の費用には、利用した後に請求されるものが数多くあります。

たとえば、以下のような費用です。

  • 電気料金
  • 通信料金
  • 外注費
  • 専門家への報酬

3月中にサービスを受け、4月に請求書が届き、5月に支払ったとします。
3月分のサービスであれば、3月に費用計上します。

請求書が届いていないからといって、費用が発生していないとは限りません。

決算後に届いた請求書も確認する

決算後に届いた請求書は、請求日だけでなく、何月分の費用なのかを確認しましょう。

決算日までに受けたサービスであれば、未払いでも決算に反映する場合があります。

請求書の日付や支払日だけで判断しないことがポイントです。

ただし、未払いになっている支出が、すべて費用になるわけではありません。

購入した商品が決算日に売れ残っていれば、在庫として計上する場合があります。
備品や設備の場合は、固定資産として扱う必要があります。

支払いの有無だけでなく、何に対する支出なのかも確認しましょう。

前払いしても全額が費用とは限らない

代金を支払った後でも、サービスの提供をまだ受けていないことがあります。

たとえば、1年分の保険料をまとめて先払いするケースです。
保険の対象期間が決算日をまたいでいれば、支払額には翌期分の保険料も含まれています。

翌期分まで当期の費用にすると、当期の利益が実際より少なく表示されます。
そのため、サービスを受ける期間に合わせて、当期分と翌期分に分ける必要があります。

対象期間を確認したい支出には、以下のようなものがあります。

  • 家賃
  • 保険料
  • 年間契約の利用料
  • 翌期に開催される研修の参加費

「支払ったか」より「何月分か」を確認する

支払いが済んでいても、全額が当期の費用になるとは限りません。

契約書や請求書を確認し、どの期間に対応する支払いなのかを整理しましょう。

決算日をまたぐ支払いは、当期分と翌期分に分けて考えます。

自社では毎年どの費用について期間対応の検討をしているのかを確認しておきましょう。

売上と関連する費用は同じ期間に反映する

中小会計要領では、売上と関連する費用を対応させる考え方も示されています。

たとえば、商品を販売して売上を計上したら、販売した商品に対応する原価も、同じ期間の費用として計上します。

売上だけを先に計上すると、その期間の利益が大きくなり、費用だけを先に計上すれば、利益は小さくなります。

年間の利益が同じでも、売上と費用を計上する月がズレると、月ごとの利益は実態と合わなくなります。

毎月の数字を経営判断に使うためにも、売上と関連する費用の時期をそろえることが大切です。

売れ残った商品は在庫に含める

商品を仕入れても、決算日までにすべて売れるとは限りません。
決算時点で残っている商品は、原則として在庫に含めます。

仕入れた商品をすべて費用にすると、まだ販売していない商品までその期間の利益から差し引くことになります。

販売した商品に対応する原価だけを費用にすることで、その期間の利益を適切に計算できます。

決算時点で残っている商品を確認する方法として「棚卸し」があります。

棚卸しとは、決算日に残っている商品の数量等を確認する作業です。
単に商品の数を数えるだけではなく、売上と原価を同じ期間に反映するための手続きでもあります。

在庫の評価方法は、商品の内容や取引状況によって確認が必要です。
まずは、決算日に残っている商品を正しく把握しましょう。

売上と費用は原則として分けて計上する

中小会計要領では、売上と費用を総額で計上する考え方も示されています。

売上が1,000万円あり、その売上に関連する費用が800万円かかった場合には、最終的な利益は200万円です。

利益だけを見れば、差額の200万円だけで問題ないように思えるかもしれませんが、中小会計要領に基づいた会計処理では、次のように計上します。

  • 売上:1,000万円
  • 費用:800万円
  • 利益:200万円

差額の200万円だけを売上として計上すると、会社がどの程度の取引をしているのかがわからなくなります。
また、どのような費用がかかったのかも見えません。

売上と費用を分けることで、取引の規模だけでなく、どこに費用がかかり、どのくらいの利益が残ったのかを確認できます。

受取家賃と支払家賃は分けて計上する

中小会計要領では、建物を転貸する取引が例として示されています。

会社が借りた建物を、従業員などへ貸しているケースです。
このケースでは、従業員などから月額20万円の家賃を受け取り、建物の所有者へ月額15万円を支払っているとします。

差額は5万円ですが、5万円だけを収益として計上するわけではありません。

  • 受取家賃20万円を売上(または雑収入)として計上する。
  • 支払家賃15万円を費用として計上する。

両方を計上することで、取引の全体像が損益計算書に表れます。

差額だけでは取引の全体像が見えない

売上と費用を分けて計上すると、次の内容を確認できます。

  • どのくらいの売上があるか?
  • どのくらいの費用がかかっているか?
  • 最終的にいくらの利益が残ったか?

利益だけを見るのではなく、売上と費用の中身も確認することが大切です。

ただし、仲介や立替えのように、契約上の立場によって処理が変わる取引もあります。

したがって、取引の名前だけで判断しないで、誰が商品やサービスを提供し、誰が責任を負っているのかを確認する必要があります。

決算前に売上と費用を確認する

決算前は、通帳の入出金だけを確認しても十分ではありません。

入金前の売上や、支払前の費用が残っているかもしれません。
また、翌期分の売上を先に受け取っていたり、翌期分の費用をすでに支払っているかもしれません。

決算前には、お金が動いた日だけでなく、取引が完了した日や、サービスの対象期間を確認しましょう。

決算前のチェックリスト

決算前のチェックリスト
  • 納品済みで、未請求の売上はないか?
  • サービス提供済みで、未入金の売上はないか?
  • 入金済みで、未提供のサービスはないか?
  • サービスの提供を受けた後で、未払いの費用はないか?
  • 支払い済みで、翌期分となる費用はないか?
  • 売れ残った商品は、在庫に含まれているか?
  • 売上と費用を相殺して処理していないか?
  • 売上の計上基準にしたがって、売上を計上しているか?

計上時期を判断する出発点は、実際に行われた取引です。

納品日や作業完了日だけでなく、契約期間や検収条件も整理しておきましょう。
取引に関する資料がそろっていれば、会計処理の根拠も確認しやすくなります。

日頃から整理しておきたい資料は、次のとおりです。

  • 契約書
  • 請求書
  • 納品書
  • 検収書
  • 作業完了報告書

計上時期を自由に動かすことはできない

利益を調整する目的で、売上や費用の計上時期を動かすことはできません。

契約内容や実際の取引に基づいて判断し、採用した基準は毎期継続して使います。

売上と費用の根拠を説明できる状態にしましょう

売上や費用は、入金日や支払日だけでは判断できません。

売上では、商品やサービスをいつ提供したのかを確認します。
費用では、サービスを受けた時期や支払いの対象期間を見ることが大切です。

また、売上に関連する費用は同じ期間に反映し、売上と費用は原則として分けて計上します。

中小会計要領で示されているのは、正しい利益を計算するための基本的な考え方です。

ただ会計処理を済ませるのではなく、いつ、どの取引を計上したのかを、数字と資料で説明できる状態にしておくことが重要です。

売上と費用の根拠がわかれば、利益が増減した理由も確認しやすくなり、今後の経営判断にもつなげやすくなります。

決算前に慌てないためにも、納品日や作業完了日がわかる資料を、普段から整理しておくことが大切です。

今回は、中小会計要領に基づく、収益と費用の基本的な会計処理を確認しました。

考え方は共通していても、実際に売上や費用を計上する時期は、契約内容や取引の流れによって異なります。納品日と検収日が異なる場合や、決算期をまたいでサービスを提供する場合など、判断に迷う取引もあるでしょう。

こうした取引では、入金日や支払日だけを見るのではなく、契約書や請求書、納品状況などを確認しながら、会計処理を整理する必要があります。

当事務所では、確認したい内容に応じて、次のサービスをご用意しています。

  • 個別の取引について確認したい場合は、メール相談
  • 複数の取引や今後の処理方針を整理したい場合は、個別コンサルティング
  • 毎月の売上や費用を継続して確認したい場合は、税務顧問

自社の会計処理に迷っている取引がある方や、売上・費用の計上ルールを整理したい方は、ご相談ください。

いつ、どの取引を計上したのかを、数字と資料で説明できる状態へ整えるお手伝いをします。


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