機械やパソコンを買ったときには、貸借対照表にいくらで計上するのか、「支払った金額をそのまま計上すればよいのでは?」と思うかもしれません。

しかし、購入代金とは別に、機械の運送費や、設置工事費が発生している場合があります。

買掛金や借入金などの負債についても、貸借対照表に計上する金額にはルールがあります。

中小会計要領では、資産と負債の会計処理について、以下のように規定されています。

2. 資産、負債の基本的な会計処理

(1) 資産は、原則として、取得価額で計上する。

(2) 負債のうち、債務は、原則として、債務額で計上する。

引用元:日本税理士連合会|「中小企業の会計に関する基本要領」

今回は、中小会計要領の論点のうち、資産負債について確認していきます。

そもそも中小会計要領とは何か?を確認されたい方は、下記の関連記事をご覧ください。

この記事の要点
  • 資産は、原則として取得価額をもとに計上する
  • 取得価額は、資産本体の購入金額だけとは限らない
  • 資産の時価が変わっても、帳簿の金額をその都度変えるわけではない
  • 負債のうち債務は、将来支払うべき金額で計上する
  • 帳簿の金額は、請求書や契約書などの資料とあわせて確認する

資産と債務では金額の決め方が異なる

資産と債務は、どちらも貸借対照表に記載します。

ただし、金額を決めるときの出発点は同じではありません。

資産は、原則として取得価額(資産を取得したり、製造したりするためにかかった金額)をもとに計上します。

一方、負債のうち債務は、原則として債務額(取引先や金融機関などへ、将来支払うべき金額)で計上します。

両者の違いを簡単に整理すると、次のようになります。

項目金額
資産取得するまでに、いくらかかったか
負債将来、いくら支払う必要があるか

資産は取得価額をもとに計上する

会社が持っているもののうち、会計上の資産にあたるものは以下のように数多くあります。

  • 取引先から回収する売掛金
  • 販売前の商品や材料
  • 会社で使う建物や機械
  • 保有している株式や債券

中小会計要領では、資産を手に入れるまでに、会社がいくら負担したのかを確認します。

資産を取得価額に基づいて計上する考え方は、一般に「取得原価主義」と呼ばれています。

取得原価主義では、資産を買った金額+使える状態にするまでにかかった金額を見ていきます。

取得価額は本体価格だけとは限らない

資産を買ったとき、請求書の本体価格だけを見て処理してしまうことがあります。

しかし、本体価格だけが取得価額になるとは限りません。

会社で使う機械を購入したとします。

機械を工場まで運び、専門業者に設置してもらわなければ使えない場合には、本体価格とは別に費用がかかります。

支払った金額が次のとおりだった場合、

  • 機械本体 100万円
  • 運送費 5万円
  • 据え付け費用 10万円

運送費と据え付け費用が、機械を取得して使える状態にするために直接かかった費用であれば、115万円を取得価額とするのが基本です。

機械を100万円で買ったからといって、100万円で資産に計上するわけではありません。

ポイント

本体の購入金額だけで判断せず、資産を使える状態にするまでにかかった費用も確認しましょう。

請求書が作業を行った業者ごとに分かれている場合は、本体代以外の支払いを見落とさないことが大切です。

一方で、資産の購入に近い時期に支払った費用が、すべて取得価額に含まれるわけでもありません。

同じ「手数料」や「工事費」という名称でも、支出の内容によって扱いが変わることがあります。

請求書の合計金額だけではなく、何に対して支払ったのかまで確認したうえで判断しましょう。

購入後の時価をそのまま帳簿へ反映するわけではない

資産を買ったあとで、市場価格が変わることもあります。

わかりやすい例が土地です。

土地を買ったあと、周辺の開発が進み、購入時より高く売れるようになったとします。

土地の時価が上がったとしても、原則として、値上がりするたびに帳簿の金額を増やすわけではありません。

時価が少し下がった場合も、価格が動くたびに帳簿の金額を書き換えるものではないのです。

ここで分けて考えたいのが、現在いくらで売れるのか(時価)という金額と、貸借対照表にいくらで計上しているのか(簿価)という金額です。

貸借対照表に1,000万円の土地が載っていても、現在1,000万円で売れるとは限りません。

反対に、現在は1,500万円で売れる土地でも、帳簿には購入時をもとにした1,000万円が残っています。

貸借対照表の数字だけを見て、資産の現在価値まで判断しないことが大切です。

注意

時価と簿価は別です。

貸借対照表に計上している金額が、現在の売却価格を表しているとは限りません。

経営判断をするときは、帳簿上の金額と現在の時価を、必要に応じて分けて把握します。

債務は将来支払うべき金額で計上する

資産では、取得するためにいくらかかったのかを確認しました。

債務では、会社がこれからいくら支払う必要があるのかを見ていきます。

負債のうち債務は、原則として、将来支払うべき債務額で貸借対照表に計上します。

代表的な債務には、次のようなものがあります。

  • 商品を掛けで仕入れたときの買掛金
  • 経費を後払いにしたときの未払金
  • 金融機関などから借りた借入金

買掛金や借入金は決算日時点の残高を確認する

商品を30万円で仕入れ、代金を翌月に支払う場合を考えてみましょう。

決算日時点で30万円を支払っていなければ、原則として30万円を買掛金に計上します。

借入金も、基本的な考え方は同じです。

金融機関から500万円を借りたあと、決算日までに100万円を返済したとします。この場合、貸借対照表で確認するのは、借りた当初の500万円ではありません。

決算日時点で返済していない400万円を、借入金の残高とします。

買掛金や借入金の残高は、次のような資料と照らし合わせます。

  • 請求書
  • 契約書
  • 借入金の返済予定表
  • 取引先から届いた残高確認書
ポイント

決算前に、帳簿に載っている債務と、実際に支払うべき金額が合っているかを確認しましょう。

支払いが終わった債務が残っていないか、まだ計上が漏れている請求書がないかの確認が必要です。

支払いが終わった買掛金が帳簿に残っていると、負債が実際より多く見えます。

未払いの請求書を計上していなければ、反対に負債が少なく表示されるます。

未計上の内容によっては、その期の費用や利益にも影響する可能性があるので、債務額の確認は重要です。

負債のすべてが債務ではない

ここで、ひとつ注意したい点があります。

負債に含まれるものが、すべて債務にあたるわけではありません。

買掛金借入金は、支払う金額がすでに決まっている債務です。

一方、将来の支出に備えて計上する引当金なども、負債に含まれます。

引当金は、買掛金のように請求額をそのまま計上するものではありません。計上できる条件や見積金額を、個別に検討する必要があります。

今回の負債の会計ルールを、「負債は、すべて将来の支払額で計上する」と覚えてしまうと、正確ではありません。

あくまでも、負債のうち債務は、原則として債務額で計上することになります。

貸借対照表は金額の根拠まで確認する

貸借対照表は、数字が合っていれば終わりというものではありません。

経営に使うなら、なぜ、その金額が計上されているのかまで確認したいところです。

機械が115万円で計上されているなら、次のような説明ができる状態にしておきます。

  • 本体価格が100万円
  • 運送費が5万円
  • 据え付け費用が10万円

借入金が400万円なら、借入時の500万円から100万円を返済し、決算日時点で400万円が残っていることを確認します。

金額の内訳がわかれば、帳簿の間違いにも気づきやすくなります。

資産確認項目
  • 購入金額を資料で確認できるか
  • 取得にともなう費用が整理されているか
  • 帳簿に載っている資産が実際に存在するか
  • 取得後に必要な会計処理がおこなわれているか
負債確認項目
  • 支払うべき金額が計上されているか
  • 未計上の請求書が残っていないか
  • 支払い済みの債務が帳簿に残っていないか
  • 借入金残高が返済予定表と合っているか

取得価額に含めるべき支出を、その期の費用として処理すると、資産が本来より少なく表示されます。
資産が本来より少ない(費用が本来より多い)と、その期の利益は本来より少なくなります。

支払いが終わった債務が残っていれば、今後必要となる支払額も正しく把握できなくなります。

貸借対照表を見るときは、資産や負債の合計額だけを眺めるのではなく、数字の中身と根拠まで確認することが大切です。

取得価額を確認すると、会社が資産へいくら投じたのかがわかります。

債務額を確認すれば、今後いくら支払わなければならないのかも見えてきます。

さらに、帳簿に載っている資産の金額現在の時価を分けて把握すれば、自社の財産をより実態に近い形で考えられるでしょう。

貸借対照表の数字を経営に使うためには、計上されている金額の根拠を知ることが大切です。

まとめ

今回は、中小会計要領に基づいて、資産と債務を貸借対照表にいくらで計上するのかを確認しました。

資産は、原則として取得価額をもとに計上します。

取得価額は、本体の購入金額だけとは限りません。
資産を使える状態にするまでにかかった運送費や設置費などを含める場合があります。

また、資産の時価が変わっても、そのたびに帳簿の金額を書き換えるわけではありません。
現在の時価と、貸借対照表に載っている金額は、分けて考える必要があります。

負債のうち債務は、原則として将来支払うべき金額で計上します。
請求書や返済予定表などと照らし合わせて、実際の支払義務と帳簿の金額が合っているかを確認しましょう。

貸借対照表の金額は、会計ソフトに表示されているから正しいとは限りません。

「なぜ、この金額になっているのか」を説明できる状態にしておくと、決算書の間違いを防ぐだけでなく、自社の資産や支払義務を経営判断に生かしやすくなります。

実際の会計処理は、同じような支出に見えても、取引の内容によって判断が変わることがあります。
そのため、契約書や請求書などを確認し、取引の実態に合わせて処理することが大切です。

当事務所では、確認したい範囲に応じて、次のサービスをご用意しています。

  • 個別の取引について確認したい場合は、メール相談
  • 複数の取引や今後の処理方針を整理したい場合は、個別コンサルティング
  • 毎月の資産や負債を継続して確認したい場合は、税務顧問

自社の会計処理に迷っている取引がある方や、資産と負債の計上ルールを整理したい方は、ご相談ください。


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