複合機や車両などをリースで導入すると、毎月、決まった金額が口座から引き落とされます。
支払いのたびに経費として記帳している会社も多いと思います。

ただし、リース料の会計処理は、支払った金額をそのまま経費にする方法だけではありません。
リース物件を資産として計上し、今後支払う金額を負債として計上する方法もあります。

中小会計要領では、リース取引について次のように定めています。

10. リース取引

リース取引に係る借手は、賃貸借取引又は売買取引に係る方法に準じて会計処理を行う。

引用元:日本税理士連合会|「中小企業の会計に関する基本要領」

規定にある「賃貸借取引に係る方法」は、リース期間の経過に応じて、支払リース料を費用にする方法です。

一方、「売買取引に係る方法」では、資金を借りて資産を購入した場合に近い取引として、リース資産とリース債務を計上します。

リース料を経費にするか、リース物件を資産にするかによって、貸借対照表の見え方が変わります。
毎月の仕訳だけでなく、リースによって使用している資産と、今後の支払額まで確認することが大切です。

今回は、中小会計要領の各論のうち、リース取引について確認していきます。

なお、中小会計要領については、下記の関連記事をご覧ください。

この記事の要点
  • リース取引には、賃貸借処理と売買処理がある
  • 賃貸借処理では、リース期間の経過に応じて支払リース料を費用にする

リース取引には2つの会計処理がある

中小会計要領で想定されているリース取引は、リース会社から機器などを借り、一定期間にわたってリース料を支払う取引です。
車両を数日だけ借りるような、短期のレンタルとは区別して考えます。

リース取引の会計処理は、大きく次の2つに分かれます。

  • 支払リース料を費用にする賃貸借処理
  • リース資産とリース債務を計上する売買処理

違いが表れるのは、毎月の仕訳だけではありません。

賃貸借処理では、使用しているリース物件と今後の支払額が、原則として貸借対照表に計上されません。
売買処理では、リース物件を資産に、今後の支払額を負債に計上します。

2つの処理で異なるのは、経費の計上方法だけではありません。
リース物件と今後の支払額を貸借対照表に示すかどうかも変わります。

賃貸借処理ではリース料を費用にする

リース期間の経過に応じて費用を計上する

賃貸借処理では、リース物件を借りて使用しているものと考え、リース期間の経過に応じて支払リース料を費用にします。

たとえば、毎月5万円のリース料を支払う契約であれば、毎月のリース料を「支払リース料」などの勘定科目で処理するイメージです。

契約開始時にリース物件を資産として計上しないため、売買処理に比べると帳簿上の処理は簡潔になります。

ただし、「支払ったときに経費にすればよい」とだけ考えるのは適切ではありません。
前払いなどがある場合には、支払日ではなく、リース期間の経過に応じて費用が計上されているかを確認します。

今後の支払額は貸借対照表に表れない

賃貸借処理では、リース物件をリース資産として計上しません。

今後支払うリース料も、原則としてリース債務には計上されないため、貸借対照表だけでは将来の負担を把握できない場合があります。

たとえば、決算日後も3年間にわたって支払いが続く契約であっても、今後支払うリース料の総額は、貸借対照表の負債に表示されません。

賃貸借処理は記帳しやすい一方で、決算書だけを見ると、リース契約による今後の資金負担を見落としやすいという特徴があります。

売買処理では資産と負債を計上する

リース物件をリース資産として計上する

売買処理では、リース物件を購入した場合に近い取引として処理します。

会社がリース物件を直接購入していなくても、リース物件を長期間使用するという取引の実質を踏まえ、「リース資産」として貸借対照表に計上します。

借りている物件を自社の資産にすることへ、違和感を持つかもしれません。

売買処理では、単に物件を借りていると考えるのではなく、リース会社から資金の提供を受けて設備を導入した場合に近いものとして捉えます。

今後の支払額をリース債務として計上する

リース資産を計上すると同時に、借入金に相当する金額を「リース債務」として、貸借対照表の負債に計上します。

リース資産が表すのは、会社が事業に使用している資産です。
リース債務には、今後支払わなければならない金額が反映されます。

売買処理を採用すると、リースによって導入した資産と将来の支払負担を、貸借対照表で確認できるようになります。

リース資産は減価償却する

貸借対照表に計上したリース資産は、計上したままにするのではなく、使用する期間にわたって減価償却します。

減価償却とは、資産にかかった金額を、使用する期間に配分して費用にする手続きです。
中小会計要領では、リース資産は、一般的に定額法で減価償却するとされています。

定額法では、毎期、おおむね一定の金額を減価償却費として計上します。

そのため、売買処理では、支払ったリース料の全額をそのまま費用にするわけではありません。
支払いに応じてリース債務の減少などを記録し、リース資産については減価償却費を計上します。

2つの処理では決算書の見え方が異なる

賃貸借処理と売買処理の違いを整理すると、次のようになります。

確認項目賃貸借処理売買処理
リース料の支払い期間の経過に応じて費用にするリース債務の減少などとして処理する
費用の計上支払リース料を費用にするリース資産の減価償却費などを計上する
リース物件原則として資産計上しないリース資産として計上する
今後の支払額原則として負債計上しないリース債務として計上する

賃貸借処理では、支払リース料が損益計算書の費用となります。
売買処理では、リース資産とリース債務が貸借対照表に計上され、減価償却費などが損益計算書に費用計上されます。

なお、中小会計要領で2つの方法が示されているからといって、決算の都合に合わせて、毎期自由に処理を変更するものではありません。

現在採用している会計処理や、過年度からの継続性も踏まえて判断する必要があります。
処理方法を変更する場合は、変更する理由も整理しておきましょう。

賃貸借処理では未経過リース料を確認する

未経過リース料は今後支払うリース料を表す

賃貸借処理を採用した場合でも、毎月のリース料を費用にしておわりではありません。

決算では、契約期間のうち、決算日後に残っている期間のリース料を確認します。
この今後支払う予定の金額が、未経過リース料です。

たとえば、5年間のリース契約について、決算日時点で2年間の支払いが残っていれば、残り2年間に支払う金額が未経過リース料に当たります。

未経過リース料を整理すると、貸借対照表には負債として表れない、リース契約による将来の支払負担を把握できます。

金額に重要性がある場合は注記を検討する

中小会計要領では、賃貸借処理を行った場合、金額に重要性がある未経過リース料について、注記することが望ましいとされています。

注記は、貸借対照表や損益計算書だけでは分からない情報を補足するものです。

賃貸借処理ではリース債務を計上しないため、未経過リース料を注記すれば、決算書を見る人も今後の支払負担を把握しやすくなります。

重要性の判断は、未経過リース料の金額だけで決まるものではありません。
会社の規模や財政状態から見て、無視できない金額かどうかも踏まえて検討します。

決算では契約書と支払予定表を確認する

リース料の請求書や預金通帳だけでは、契約期間や支払総額まで分からないことがあります。
決算では、リース契約書と支払予定表を用意し、次の項目を整理しましょう。

  1. リース物件の内容を確認する
  2. 契約開始日と終了日を確認する
  3. リース料総額と支払済額を整理する
  4. 現在の会計処理を確認する
  5. 決算日後に支払う金額を計算する
  6. 未経過リース料の注記を検討する

毎月の支払額だけを見ていると、契約があと何年残っているのか、今後いくら支払うのかを見落としやすくなります。

支払済みの金額と今後支払う金額を分け、契約全体を把握することが、リース取引については重要です。

注意点

中小会計要領に基づいて賃貸借処理をした場合でも、対象となるリース取引が、法人税では売買があったものとして扱われることがあります。
会計上の勘定科目だけを見て、法人税の取扱いまで同じではないため、注意が必要です。

支払リース料として費用計上した金額が、法人税では減価償却費として取り扱われる場合もあります。

消費税についても、毎月のリース料を支払った時点で、その都度仕入税額控除を行うとは限りません。
契約内容を確認したうえで、法人税と消費税の取扱いをそれぞれ整理する必要があります。

次のような場合は、専門家に確認すると安心です。

  • 新しいリース契約を結んだ
  • 過年度と異なる処理を検討している
  • リース資産とリース債務の計上額が分からない
  • 未経過リース料の金額が大きい
  • 会計上の処理と税務上の取扱いを整理したい

まとめ|リース料だけでなく今後の支払額も把握する

リース取引には、支払リース料を費用にする賃貸借処理と、リース資産・リース債務を計上する売買処理があります。

賃貸借処理は帳簿上の処理が比較的簡潔ですが、今後支払うリース料は、原則として貸借対照表に負債として計上されません。
そのため、決算では未経過リース料を整理し、金額に重要性がある場合は注記を検討します。

売買処理では、使用しているリース物件が資産に、今後の支払額が負債に表れます。
リース資産を計上した後は、使用する期間にわたって減価償却が必要です。

リース取引を確認する目的は、毎月の仕訳を正しく行うことだけではありません。

契約書や支払予定表から今後の支払額を整理すれば、貸借対照表に表れない負担も含めて、会社の資金繰りを確認できます。

リース料を経費にしているかどうかだけで終わらせず、リース物件の使用状況と、契約終了までに支払う金額をあわせて確認しましょう。

リース取引の会計処理によって、損益計算書に計上される費用だけでなく、貸借対照表に表れる資産と負債も変わります。
賃貸借処理では今後支払うリース料が貸借対照表に表れないため、未経過リース料を整理し、将来の支払負担を把握しておくことも大切です。
当事務所では、確認したい範囲に応じて、次のサービスをご用意しています。

  • 個別のリース契約について、現在の会計処理が適切か確認したい場合は、メール相談
  • 複数のリース契約について、リース資産・リース債務や未経過リース料を整理したい場合は、個別コンサルティング
  • 決算時のリース処理と今後の支払負担を継続して確認したい場合は、税務顧問

リース契約が決算書にどのように反映されているか分からない方や、今後の支払額を資金繰りとあわせて確認したい方は、ご相談ください。


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