決算書に載っている売掛金や借入金について、その金額がどのように決まっているかを確認したことはありますか?
中小会計要領では、金銭債権(売掛金や貸付金など)および金銭債務(買掛金や借入金など)は、下記のようなルールがあります。
3. 金銭債権及び金銭債務
(1) 金銭債権は、原則として、取得価額で計上する。
(2) 金銭債務は、原則として、債務額で計上する。
(3) 受取手形割引額及び受取手形裏書譲渡額は、貸借対照表の注記とする。
引用元:日本税理士連合会|「中小企業の会計に関する基本要領」
今回は、中小会計要領の論点のうち、金銭債権、金銭債務について確認していきます。
そもそも中小会計要領とは何か?を確認されたい方は、下記の関連記事をご覧ください。
- 金銭債権(売掛金・貸付金)は、原則として取得価額で計上する
- 金銭債務(買掛金・借入金)は、原則として債務額で計上する
- 受取手形の割引額と裏書譲渡額は、注記する
金銭債権と金銭債務では計上する金額が異なる

金銭債権と金銭債務は、どちらも将来のお金の動きにかかわります。
実務上は、請求書などに記載された金額で金銭債権や金銭債務を計上していることが多いと思います。
中小会計要領にルールでは、金銭債権と金銭債務として計上する金額が定められているので確認していきます。
- 金銭債権→相手からお金を受け取る権利
- 金銭債務→相手へお金を支払う義務
売掛金や貸付金は金銭債権にあたる
金銭債権は、貸借対照表の資産に表示されます。
代表的な科目は、次のとおりです。
- 受取手形
- 売掛金
- 貸付金
商品を掛けで販売すると、会社には代金を受け取る権利が生じます。
売掛金は、その権利を金額で表したものです。
会社が取引先などへお金を貸した場合には、貸付金を計上します。
貸した元本について、返済を受ける権利があるためです。
中小会計要領では、金銭債権を原則として取得価額で計上します。
「取得価額」という言葉は、売掛金には少し当てはめにくく感じるかもしれません。
売掛金の場合は、商品やサービスを提供した取引によって発生した金額が、計上の基礎になると考えると分かりやすいでしょう。
買掛金や借入金は金銭債務にあたる
金銭債務は、貸借対照表の負債に表示されます。
代表的な科目には、次のものがあります。
- 支払手形
- 買掛金
- 借入金
商品を掛けで仕入れると、仕入先へ代金を支払う義務が生じます。
その支払義務を表す科目が買掛金です。
金融機関などから融資を受けた場合には、借入金を計上します。
借入金は、将来返済しなければならない義務を表しています。
金銭債務は、原則として債務額で計上します。
債務額とは、決算日において、将来支払わなければならない金額です。
金銭債権は取得価額で計上する

金銭債権の計上では、債権が発生したときの金額だけでなく、決算日までの回収状況も確認します。
入金額の消込の処理を忘れていると、すでに入金された分まで資産に含まれてしまうからです。
売掛金は未回収となっている金額を確認する
商品を11万円で販売し、代金を翌月に受け取る契約の場合には、売上とあわせて11万円の売掛金を計上します。
決算日までに11万円をすべて回収していれば、売掛金は残りません。
6万円だけ入金されている場合には、未回収の5万円が決算日の残高になります。
売掛金を確認するときは、請求書の金額を見るだけでは不十分です。
請求後の入金まで反映されているかを確認しなければなりません。
入金済みの売掛金が帳簿に残っていると、貸借対照表の資産は実際より多くなります。
反対に、請求済みで未回収の金額が帳簿に載っていなければ、資産が少なく表示されます。
売掛金では、取引によって発生した金額と、決算日までに回収した金額の両方を確認します。
貸付金は元本の残高を計上する
貸付金は、貸し付けた元本から、すでに返済を受けた元本を差し引いた残高を計上します。
ここで注意したいのが、元本と利息の区別です。
取引先へお金を貸していた場合に、取引先から10万円の返済を受けてもその全額が元本とは限りません。
返済額のうち、9万円が元本、1万円が利息という場合もあります。
この場合、貸付金から減らすのは9万円です。
残りの1万円は、受取利息として処理します。
返済額の全額を貸付金から減らすと、決算書の貸付金残高が実際より少なくなってしまいます。
契約書や返済明細を見て、内訳を確かめることが大切です。
金銭債務は債務額で計上する

金銭債務は、決算日に支払う義務が残っている金額を計上します。
買掛金なら仕入先へ支払うべき金額、借入金なら金融機関などへ返済すべき元本の残高です。
買掛金は決算日に支払うべき金額を計上する
商品を22万円で仕入れ、代金を翌月に支払う場合には、仕入れとあわせて22万円の買掛金を計上します。
決算日までに全額を支払っていれば、買掛金は残りません。
10万円だけ支払っている場合には、未払いとなっている12万円が決算日の残高です。
買掛金では、請求書が届いた日だけを見て判断しないようにします。
決算日前に商品を受け取っていても、請求書が届くのは決算後になることがあります。
請求書が届いていないという理由だけで計上を見送ると、仕入れと買掛金が翌期へズレてしまいます。
納品日や検収日など、会社が採用している基準と実際の取引内容を確認したうえで、決算日に支払義務が生じている金額を計上します。
借入金は返済していない元本を計上する
借入金で間違えやすいのは、通帳から引き落とされた金額を、そのまま借入金から減らす処理です。
毎月の支払額には、元本だけでなく利息が含まれていることがあります。
毎月10万円が引き落とされていても、内訳が元本8万円、利息2万円であれば、借入金から減らすのは8万円です。
2万円は支払利息として処理します。
借入金の残高は、返済予定表や金融機関の残高証明書から確認することができます。
ただし、追加融資や繰上返済があった場合には、借入当初の返済予定表どおりにならないこともあります。
残高を確認する際には、最新の情報を使って確認しましょう。
受取手形を割引・裏書した場合は注記する

受取手形を金融機関で割り引いた場合や、取引先へ裏書譲渡した場合には、対象となった手形が貸借対照表から外れます。
貸借対照表に計上されていなければ、確認しなくてもよいわけではありません。
割引・裏書した手形は貸借対照表から外れる
手形の割引とは、満期日前の手形を金融機関へ譲渡し、手数料などを引いた金額を受け取る取引です。
裏書譲渡とは、自社が保有する受取手形を、仕入代金などの支払いに使うことです。
割引や裏書譲渡をすると、対象となった手形は、貸借対照表の受取手形残高から外れます。
そのため、貸借対照表の残高を見ただけでは、会社がどれだけ受取手形を割り引いたのか、取引先へどれだけ裏書譲渡したのかは分かりません。
割引額と裏書譲渡額は注記で補う
中小会計要領では、受取手形割引額と受取手形裏書譲渡額を、貸借対照表の注記とします。
割引額や裏書譲渡額は、貸借対照表の受取手形残高だけでは見えない情報です。
注記を加えることで、手形の利用状況や資金繰りを把握しやすくなります。
決算では、手形台帳や金融機関の明細を確認し、割引額と裏書譲渡額を集計します。
受取手形が貸借対照表から外れていても、決算上の確認が終わったわけではありません。
決算では金額の根拠まで確認する
会計ソフトの残高がもっともらしく見えても、その数字が正しいとは限りません。
決算で大切なのは、残高を眺めることではなく、取引先ごとの明細や契約書などと照らし合わせることです。
売掛金と買掛金は取引先ごとに確認する
売掛金は、取引先ごとの請求額と入金記録を照合します。
買掛金では、仕入先から届いた請求書と支払記録を比べます。
決算日前後の入出金まで確認すると、次のような誤りに気づきやすくなります。
- 入金済みの売掛金が残っている
- 支払済みの買掛金が残っている
- 同じ請求を二重に計上している
- 決算日前の取引が翌期へずれている
長期間動いていない残高が見つかった場合には、その売掛金の内容を確認します。
貸付金と借入金は元本残高を確認する
貸付金と借入金は、契約書や返済予定表を使って元本残高を確認します。
預金通帳には、元本と利息を合計した金額が記載されることがあります。
通帳の入出金額だけで判断すると、元本残高を間違える原因になります。
金融機関から残高証明書を取得している場合には、帳簿上の借入金と一致しているかも確認しましょう。
受取手形は割引・裏書後も確認する
受取手形は、帳簿と手形台帳を照合します。
確認するのは、決算日に保有している手形だけではありません。
すでに金融機関で割り引いた手形や、取引先へ裏書譲渡した手形も対象です。
決算日に保有している受取手形は、貸借対照表に計上します。割引額と裏書譲渡額は、注記で補います。
- 売掛金に、決算日までの入金が反映されているか
- 買掛金に、決算日までの支払いが反映されているか
- 貸付金と借入金が、元本残高と一致しているか
- 受取手形の割引額と裏書譲渡額を集計したか
- 長期間動いていない残高の内容を説明できるか
決算書の数字が合っているかだけでなく、資料をもとに数字の根拠を説明できるかまで確認することが大切です。
まとめ
金銭債権と金銭債務は、貸借対照表に将来の入金と支払いを表す項目です。
売掛金や貸付金などの金銭債権は、原則として取得価額で計上します。
買掛金や借入金などの金銭債務は、原則として債務額で計上します。
ただし、会計ソフトに残っている数字が正しいとは限りません。
売掛金や買掛金は、請求書と入出金記録を確認し、貸付金や借入金は、契約書や返済予定表と照合しましょう。
受取手形については、貸借対照表に残っている手形だけでなく、割引額と裏書譲渡額も確認します。
数字が合わないときに、会計ソフトの残高だけを直してしまうと、差額が生じた原因は分からないままです。
まずは、どの取引から差額が生じたのかを確かめてみてください。
決算書の残高と、その根拠となる資料を結びつけて確認することが、正確な会計処理につながります。
売掛金や借入金などの残高は、会計ソフトに表示された金額だけで判断せず、請求書や契約書、返済予定表などと照らし合わせて確認することが大切です。
また、受取手形を割引・裏書した場合には、貸借対照表から外れた金額についても、注記の要否を確認する必要があります。
当事務所では、確認したい範囲に応じて、次のサービスをご用意しています。
- 個別の売掛金や借入金などの処理を確認したい場合は、メール相談
- 複数の債権・債務や決算時の確認方法を整理したい場合は、個別コンサルティング
- 毎月の残高や資金繰りを継続して確認したい場合は、税務顧問
自社の金銭債権・金銭債務の計上額に迷っている方や、決算書の残高と根拠資料が合っているか確認したい方は、ご相談ください。
当ブログに掲載している内容は、一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する専門的な助言を行うものではありません。
内容の正確性および最新性の確保には十分留意しておりますが、法令の改正や個別の事情等により、実際の取扱いが異なる場合があります。また、理解しやすさを重視し、一部表現を簡略化または意訳している箇所がございます。
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