機械やパソコン、ソフトウェアなどを購入したとき、請求書の合計額を固定資産として登録していないでしょうか。

固定資産は、原則として購入代金に付随費用を加えた取得原価で計上し、資産の種類に応じて減価償却します。
運送費や据付費など、購入した資産を事業で使える状態にするまでにかかった費用も、取得原価に含まれる場合があります。

固定資産の管理は、会計ソフトで減価償却費を計算すれば終わるものではありません。
決算では、固定資産台帳と実際の資産を照らし合わせ、売却や廃棄、使用状況の変化が帳簿に反映されているかを確かめる必要があります。

中小会計要領では、固定資産について、次のように定めています。

8. 固定資産

(1) 固定資産は、有形固定資産(建物、機械装置、土地等)、無形固定資産(ソフトウェア、借地権、特許権、
  のれん等)及び投資その他の資産に分類する。

(2) 固定資産は、原則として、取得原価で計上する。

(3) 有形固定資産は、定率法、定額法等の方法に従い、相当の減価償却を行う。

(4) 無形固定資産は、原則として定額法により、相当の減価償却を行う。

(5) 固定資産の耐用年数は、法人税法に定める期間等、適切な利用期間とする。

(6) 固定資産について、災害等により著しい資産価値の下落が判明したときは、評価損を計上する。

引用元:日本税理士連合会|「中小企業の会計に関する基本要領」

固定資産の処理では、購入したものを正しく分類したうえで、取得原価、償却方法、耐用年数を順番に整理していきます。

中小会計要領について確認されたい方は、下記の関連記事をご覧ください。

この記事の要点
  • 固定資産は、原則として取得原価で計上する
  • 取得原価には、事業で使える状態にするまでの付随費用を含める場合がある
  • 有形固定資産と無形固定資産では、減価償却方法が異なる
  • 耐用年数は、資産の構造や用途を踏まえて選ぶ
  • 固定資産台帳と実際の資産を照合し、売却や廃棄を帳簿へ反映する
  • 評価損は、会計上の計上と税務上の損金算入を分けて考える

固定資産は内容に応じて分類する

固定資産は、長期間にわたって使用または保有する資産です。
中小会計要領では、次の3つに分類しています。

  • 有形固定資産
  • 無形固定資産
  • 投資その他の資産

分類によって、減価償却の要否や方法が変わります。
固定資産台帳へ登録するときは、勘定科目だけでなく、購入した資産の内容まで整理することが大切です。

建物や機械装置は有形固定資産に分類する

有形固定資産とは、物理的な形があり、長期間にわたって事業に使用する資産です。

建物や機械装置のほか、車両運搬具、工具器具備品などが該当します。
使用や時間の経過によって価値が減少する資産は、耐用年数にわたって減価償却を行います。

土地も有形固定資産ですが、通常は減価償却の対象になりません。
土地は、時間の経過によって価値が減少する資産とは限らないためです。

有形固定資産であっても、すべてを減価償却するわけではありません。

ソフトウェアなどは無形固定資産に分類する

無形固定資産とは、物理的な形はないものの、長期間にわたって事業に利用される資産です。

主な例として、次の資産があります。

  • ソフトウェア
  • 借地権
  • 特許権
  • のれん

無形固定資産には、ソフトウェアのように利用期間にわたって償却する資産がある一方、借地権のように通常は償却しないものもあります。
無形固定資産という分類だけで判断せず、資産ごとの取扱いを確かめなければなりません。

ソフトウェアについても、毎月利用料を支払うクラウドサービスと、自社で利用するために購入または開発したものとでは、会計処理が同じとは限りません。
したがって、契約内容や利用形態まで整理して判断します。

投資その他の資産には、長期保有する投資有価証券や長期貸付金などが含まれます。
有形固定資産や無形固定資産と同じように一律に減価償却するのではなく、資産の内容に応じて評価や回収可能性を検討します。

固定資産は取得原価で計上する

固定資産は、原則として取得原価で計上します。

取得原価とは、資産の購入代金に、事業で使える状態にするまでに直接かかった費用を加えた金額です。
請求書に記載された本体価格だけで決まるとは限りません。

なお、中小会計要領では「取得原価」、法人税法では「取得価額」という表現が使われます。
会計と税務では、付随費用を含める範囲などを個別に検討する場合があります。

購入代金に付随費用を加える

機械を購入しても、会社へ搬入しただけでは使用できない場合があります。
据付工事や試運転が必要であれば、使用開始までに追加の費用が発生します。

取得原価に含まれる可能性がある付随費用には、次のようなものがあります。

  • 引取運賃や荷役費
  • 運送保険料
  • 購入手数料
  • 据付費
  • 試運転費

例えば、機械本体の購入代金が100万円、運送費が5万円、据付費が10万円だったとします。

運送費と据付費が、機械を事業で使える状態にするために直接必要な支出であれば、本体価格の100万円だけではなく、付随費用を含めた115万円を取得原価として検討します。

取得原価を整理するポイント

請求書の本体価格だけを見るのではなく、購入した資産を事業で使える状態にするまでに、どのような支出が必要だったかを確認します。

請求書の合計額だけで判断しない

1枚の請求書に、取得原価へ含める支出と、別に処理する支出が混在することもあります。

設備の購入代金と一緒に、使用開始後の保守サービス料が請求されている場合を考えてみましょう。

据付費は、設備を使える状態にするための支出です。
一方、使用開始後の保守サービス料は、設備を維持するための支出に当たります。
同じ請求書に記載されていても、支出の目的は異なります。

請求書の合計額をそのまま一つの固定資産として登録せず、次の資料などから内訳を整理します。

  • 契約書
  • 見積書
  • 請求書
  • 納品書

取得原価に含めるかどうかは、支払先や請求日ではなく、支出の内容をもとに判断します。

また、固定資産に該当する支出であっても、取得価額や一定の要件によっては、税務上、取得時に費用処理できる場合があります。
少額の資産に関する取扱いは、会社の状況や適用要件を踏まえて別に検討する必要があります。

固定資産の種類に応じて減価償却する

減価償却とは、固定資産の取得原価を、使用する期間にわたって費用として配分する手続きです。

建物や機械装置は、複数年にわたって事業に利用されます。
購入した年度に全額を費用にするのではなく、資産を使用する各年度に減価償却費を計上することで、利用期間に応じて費用を配分します。

中小会計要領における「相当の減価償却」は、一般的に、耐用年数にわたって毎期規則的に減価償却を行う考え方です。
利益の金額に合わせて、減価償却費を計上する年度と計上しない年度を任意に分けるものではありません。

有形固定資産は定額法や定率法で償却する

有形固定資産の主な償却方法には、定額法と定率法があります。

定額法

毎期、原則として一定額を償却する方法

定率法

未償却残高に一定の率を乗じて償却額を計算する方法

定額法と定率法では、各年度に計上される減価償却費が異なります。
また、資産の種類によっては、選択できる償却方法が限られます。

会計ソフトが減価償却費を自動計算していても、入力した内容が正しいとは限りません。
取得原価、償却方法、耐用年数のいずれかが誤っていれば、計算結果も変わります。

無形固定資産は原則として定額法で償却する

ソフトウェアなどの無形固定資産は、原則として定額法で償却します。
利用期間にわたり、毎期一定の額を費用へ配分する方法です。

ただし、無形固定資産に分類されるものが、すべて同じ方法で償却されるわけではありません。
借地権のように通常は償却しない資産もあります。

固定資産台帳へ登録するときは、資産名だけでなく、資産区分と償却の要否まで確認する必要があります。

耐用年数は資産の構造や用途を踏まえて選ぶ

耐用年数とは、固定資産を使用する期間として、減価償却費の計算に用いる年数です。

中小会計要領では、法人税法に定める期間など、適切な利用期間を耐用年数とすることが示されています。
中小企業の実務では、法人税法上の耐用年数を使用することが一般的です。

ただし、耐用年数表から似た名前を選ぶだけでは、取得した資産の実態と合わない場合があります。

同じように見える設備でも、構造や用途によって耐用年数が異なることがあります。
請求書に「設備一式」としか書かれていなければ、請求書だけで適切な耐用年数を選ぶことは困難です。

判断に必要な情報は、見積書や製品仕様書から確認します。

耐用年数は、会計ソフトに表示された候補から何となく選ぶのではなく、取得した資産の実態に合わせて選ぶ必要があります。

著しく価値が下がった固定資産は評価損を検討する

毎期、減価償却を行っていても、災害などによって固定資産の価値が大きく下がることがあります。

減価償却は、通常の使用や時間の経過による価値の減少を、耐用年数にわたって費用にする処理です。
災害などによる予測できない著しい価値の下落は、通常の減価償却だけでは帳簿に反映できない場合があります。

中小会計要領では、災害などにより著しい資産価値の下落が判明したときは、評価損を計上するとしています。

減価償却と評価損の違い
  • 減価償却
    通常の使用や時間の経過による価値の減少を、耐用年数にわたって費用にする
  • 評価損
    災害などによって生じた著しい資産価値の下落を、帳簿価額へ反映する

設備が古くなった、中古市場での価格が下がったという理由だけで、直ちに評価損を計上するわけではありません。価値が下がった原因や資産の状態を調べ、著しい価値の下落に該当するかを検討します。

また、会計上、評価損を計上しても、法人税の計算で同じ金額がそのまま損金になるとは限りません。
会計上の計上要否と、税務上の損金算入要件を分けて判断する必要があります。

決算では固定資産台帳と実際の資産を照合する

固定資産の決算確認では、会計ソフトに表示された金額だけを見ても、資産の現在の状態までは分かりません。

固定資産台帳に載っている設備が、すでに廃棄されていることもあります。
反対に、新しく購入した資産が台帳へ登録されていないケースも考えられます。

決算時には、次のような状態がないかを調べます。

  • 廃棄した資産が台帳に残っている
  • 売却した資産が帳簿から除かれていない
  • 新しく購入した資産が登録されていない
  • 使用を中止した資産が従来どおり処理されている
  • 災害で損傷した資産が以前の状態で記録されている

現物確認が難しい資産については、管理担当者や実際に使用している担当者から、現在の保有状況を聞き取ります。

固定資産台帳では、資産の有無だけでなく、減価償却計算の前提も見直しましょう。

固定資産台帳のチェック項目
  • 取得原価に含めた支出金額
  • 有形・無形などの資産区分
  • 償却方法
  • 耐用年数
  • 事業で使い始めた時期
  • 当期の減価償却費

中小会計要領のチェックシートでも、固定資産を取得原価で計上しているか、相当の減価償却を行っているか、著しい価値の下落が生じた場合に評価損を計上しているかが確認項目になっています。

固定資産台帳の数字が計算上合っていても、実際の資産と一致しているとは限りません。
請求書や契約書、製品仕様書、実際の使用状況を照らし合わせ、帳簿の数字に根拠があるかを確かめることが大切です。

まとめ

固定資産は、原則として購入代金に付随費用を加えた取得原価で計上し、資産の種類に応じて減価償却します。

取得原価の計算では、本体価格だけを見るのではなく、事業で使える状態にするまでにかかった費用を整理します。減価償却を始める前には、資産区分、償却方法、耐用年数が、取得した資産の実態と合っているかを確かめなければなりません。

決算では、次の順番で整理していくのがおすすめです。

STEP1
購入したものが固定資産に該当するか整理する

使用する期間や購入金額、取引内容を確認し、固定資産として処理するものを洗い出します。

STEP2
購入代金と付随費用から取得原価を計算する

本体価格に、運送費や据付費など、事業で使える状態にするまでの費用を加えます。

STEP3
有形固定資産や無形固定資産に分類する

建物や機械装置、ソフトウェアなど、取得した資産の内容に合った区分を選びます。

STEP4
償却の要否、償却方法、耐用年数を決める

資産の種類や用途をもとに、減価償却の要否、各期への配分方法、償却期間を整理します。

STEP5
固定資産台帳と実際の資産を照合する

台帳に記録された資産が実際に存在し、現在も事業で使われているかを確かめます。

STEP6
売却や廃棄、使用状況の変化を帳簿へ反映する

保有しなくなった資産や使わなくなった資産を把握し、現在の状態に合わせて処理します。

STEP7
著しい価値の下落があれば評価損を検討する

災害などによる大幅な価値の下落がないかを調べ、必要に応じて帳簿価額を見直します。

固定資産の処理は、購入した年度だけでは完結しません。

請求書の金額を会計ソフトへ入力するだけで終わらせず、契約内容や資産の用途、現在の保有状況まで継続して見直すことが、決算書の数字を実態に合わせることにつながります。

固定資産の金額は、請求書に記載された本体価格だけで判断せず、運送費や据付費など、事業で使える状態にするまでにかかった費用も含めて確認することが大切です。
また、減価償却を行う場合には、資産の種類や用途に合った償却方法と耐用年数を選び、固定資産台帳と実際の資産が一致しているかも確認する必要があります。
当事務所では、確認したい範囲に応じて、次のサービスをご用意しています。

  • 個別の設備やソフトウェアについて、取得原価や減価償却の方法を確認したい場合は、メール相談
  • 複数の固定資産について、資産区分、付随費用、耐用年数などをまとめて整理したい場合は、個別コンサルティング
  • 固定資産台帳と実際の資産を照合し、決算時の減価償却や税務上の取扱いを継続して確認したい場合は、税務顧問

固定資産の会計処理や減価償却について判断に迷う場合は、必要な範囲に合ったサービスをご利用ください。


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