会社で株式などを保有していると、決算でいくらにすればよいのか迷うことがあります。

購入した金額のままでよいのか、決算日の株価に直すのか。
株価が大きく下がっている場合は、帳簿の金額を減らす必要があるのか。
有価証券を保有する機会が少ない会社にとっては、判断しにくいところです。

中小会計要領のルールでは、下記のとおり、有価証券は原則として取得原価で計上します。

5. 有価証券

(1) 有価証券は、原則として、取得価額で計上する。

(2) 売買目的の有価証券を保有する場合は、時価で計上する。

(3) 有価証券の評価方法は、総平均法、移動平均法等による。

(4) 時価が取得価額よりも著しく下落したときは、回復の見込みがあると判断した場合を除き、評価損を計
  上する。

引用元:日本税理士連合会|「中小企業の会計に関する基本要領」

ただし、短期的な価格変動から利益を得る目的で保有する売買目的有価証券は、決算時の時価で計上します。
また、取得原価で計上する有価証券でも、価値が著しく下がり回復の見込みがない場合には、評価損の計上が必要です。

決算日の株価だけを見ても、有価証券の金額は決められません。

決算では、次の3点を順番に確認します。

  1. 銘柄ごとの取得原価はいくらか
  2. 売買目的有価証券に該当するか
  3. 取得時より価値が著しく下がっていないか

今回は、中小会計要領の各論のうち、有価証券について確認していきます。

なお、中小会計要領については、下記の関連記事をご覧ください。

この記事の要点
  • 有価証券は、原則として取得原価で計上する
  • 取得原価は、総平均法や移動平均法などで計算する
  • 売買目的有価証券は、決算時の時価で計上する
  • 時価が著しく下落し、回復の見込みがなければ評価損を計上する
  • 非上場株式は、発行会社の財政状態も確認する
  • 会計上の評価損と税務上の損金は分けて判断する

有価証券は原則として取得原価で計上する

中小会計要領では、有価証券は、原則として取得原価で計上します。

取得原価は、有価証券の購入代金などをもとに計算した帳簿上の金額です。会社が株式を100万円で購入した場合は、100万円をもとに帳簿へ記録します。

決算時の株価が110万円になっていても、保有しているすべての株式を110万円に変更するわけではありません。
反対に、株価が90万円まで下がっていても、直ちに90万円へ変更するとは限りません。

上場株式だから時価で計上する、株価が下がったから帳簿の金額も下げる、という判断基準ではない点が重要です。

まずは、銘柄ごとの保有数量と取得原価を確認します。

取得原価は銘柄ごとに計算する

同じ会社の株式を、異なる時期に複数回購入することがあります。

たとえば、同じ銘柄を次のように購入したとします。

  • 1回目:100株を1株1,000円で購入
  • 2回目:100株を1株1,200円で購入

購入した時期によって単価が異なるため、期末に残っている株式の取得原価を計算しなければなりません。

有価証券の取得原価は、会社が保有する株式をすべてまとめて計算するのではなく、銘柄ごとに確認します。

後ほど説明する評価損についても、保有する有価証券の合計額ではなく、個々の銘柄について判断します。

総平均法や移動平均法で平均単価を計算する

同じ銘柄を異なる価格で複数回購入した場合は、総平均法や移動平均法などを使って、平均単価を計算します。

先ほどの例では、取得価額の合計は22万円(100株×1,000円+100株×1,200円)、保有数量は200株です。
200株すべてを保有していれば、平均単価は次のようになります。

22万円 ÷ 200株 = 1株あたり1,100円

総平均法と移動平均法では、平均単価を計算するタイミングが異なります。

総平均法は、一定期間に購入した有価証券の取得価額と数量をまとめて平均する方法です。

移動平均法は、新たに有価証券を購入するたびに、それまで保有していた分と合わせて平均単価を計算し直します。

購入と売却を繰り返している場合は、採用する方法によって、売却した有価証券の原価や期末に残る金額が変わることがあります。

会社が採用した評価方法は、毎期継続して使うことが基本です。
決算では、前年の処理も見ながら、自社がどの方法を採用しているか確認しましょう。

売買目的有価証券は時価で計上する

有価証券は取得原価で計上することが原則ですが、売買目的有価証券は、決算時の時価で計上します。

売買目的有価証券とは、短期的な価格変動から利益を得る目的で保有する有価証券です。

ただし、上場株式を保有しているだけで、売買目的有価証券になるわけではありません。

取得した目的に加えて、取得時の帳簿記録や、ほかの有価証券との区分なども確認する必要があります。

売買目的かどうかは取得目的と帳簿記録から判断する

売買目的有価証券に該当するかどうかは、保有期間の長さや売買回数だけでは決まりません。

法人税法上の売買目的有価証券に該当するかを確認するときは、主に次の事項を見直します。

  • 有価証券を取得した目的
  • 取得時の帳簿書類への記載
  • 使用している勘定科目
  • ほかの有価証券との区分
  • 実際の購入と売却の状況

短期売買を目的として取得した有価証券でも、取得時に売買目的であることを帳簿書類へ記載せず、ほかの有価証券と区分していない場合は、売買目的有価証券に該当しない可能性があります。

一方、取引先との関係を維持するために長く保有している株式は、短期的な値上がり益を目的とする有価証券とは性格が異なります。

売買目的であるかどうかを、決算時の状況に合わせて選ぶことはできません。
取得時の目的などを総合的に判断することが大切です。

取得原価と時価の差額は当期の損益に反映する

売買目的有価証券に該当する場合は、決算時の時価を貸借対照表に計上します。

取得原価100万円の売買目的有価証券について、決算時の時価が120万円だったとしましょう。

取得原価と時価の差額20万円は評価益となり、その期の利益に反映されます。

反対に、決算時の時価が80万円であれば、差額20万円は評価損です。

売買目的有価証券は、実際に売却していなくても、決算時の価格によって、その期の利益が増減します。

時価が著しく下落した場合は評価損を検討する

売買目的有価証券に該当しない有価証券は、原則として取得原価で計上します。

ただし、取得原価で計上する有価証券でも、価値が大きく下がっている場合は、そのままの金額にできないことがあります。

時価が取得原価よりも著しく下落し、回復の見込みがない場合は、評価損を計上します。

売買目的有価証券の時価評価と、価値の著しい下落による評価損は、別の処理です。

売買目的有価証券は、通常の決算処理として時価で計上します。
一方、取得原価で計上する有価証券の評価損は、価値が大幅に下がったため、帳簿の金額を切り下げる処理です。

売買目的でなくても、価値の下落は確認します。

取得原価で計上する有価証券も、価値が著しく下がっている場合は、評価損を計上するか検討します。

50%程度以上の下落は判断の目安になる

市場価格のある有価証券では、銘柄ごとの時価が取得原価に比べて50%程度以上下落している場合、「著しい下落」に該当するかを検討します。

取得原価100万円の株式について、決算時の時価が45万円まで下がっている場合を考えてみましょう。

  • 取得原価:100万円
  • 決算時の時価:45万円
  • 下落額:55万円
  • 下落率:55%

50%程度以上下落しているため、評価損を検討する段階に入ります。

下落率は、会社が保有する有価証券全体で計算するものではありません。

ある銘柄で値下がりし、別の銘柄で値上がりしていても、差し引いて判断することはできません。
取得原価と時価は、銘柄ごとに比べます。

また、50%程度という数字だけで、評価損の計上が自動的に決まるわけでもありません。
次に、価格が回復する見込みを検討します。

回復の見込みがなければ評価損を計上する

時価が著しく下落している場合は、価格が回復する見込みがあるかを確認します。

中小会計要領では、回復の見込みがあると判断した場合を除き、評価損を計上する考え方が示されています。

判断するときは、株価が下がった理由や、発行会社の財政状態などを確認します。

決算日の後に株価が少し上がったという事実だけで、回復の見込みがあるとは判断できません。
一方で、株価が下がっているという理由だけで、回復の見込みがないとも決められません。

重要なのは、決算時点で確認できる資料をもとに判断し、根拠を残すことです。

評価損を計上しない場合も、判断に使った資料を保管しておきましょう。

非上場株式は発行会社の財政状態を確認する

非上場株式には、上場株式のように日々公表される株価がありません。
そのため、取得原価と市場価格を単純に比べることは困難です。

しかし、市場価格がわからないからといって、取得原価のまま計上し続けてよいとは限りません。

非上場株式は、発行会社の決算書をもとに、取得したときよりも価値が大きく下がっていないかを確認します。

非上場株式は発行会社の決算書を確認する

非上場株式の価値を確認するときは、発行会社の直近の決算書が重要な資料になります。

主な確認項目は、次のとおりです。

  • 純資産の状況
  • 債務超過の有無
  • 業績の大幅な悪化
  • 事業を継続しているか

帳簿に取得原価が記録されていても、その金額が現在の価値を表しているとは限りません。

会社を設立したときに取得した株式や、取引先との関係から保有している株式が、何年も同じ金額で残っていることもあります。

前年の帳簿残高をそのまま引き継ぐのではなく、発行会社の財政状態まで確認しましょう。

大幅な債務超過は評価損を検討するきっかけになる

発行会社が大幅な債務超過に陥っている場合など、株式の実質的な価値が著しく低下していると考えられるときは、評価損を計上するか検討します。

非上場株式では、決算日の終値を確認するだけでは判断できません。
発行会社の資産と負債の状況を確認し、株式にどの程度の価値が残っているかを見積もる必要があります。

発行会社の決算書を入手できない場合や、価値の回復を見込めるか判断しにくい場合は、会社だけで結論を出すことが難しくなります。

会計上の評価損と税務上の損金は分けて確認する

会計上、評価損を計上したからといって、その金額がそのまま法人税の計算でも費用になるわけではありません。

法人税を計算するときに、所得から差し引ける金額を、税務上の損金といいます。

有価証券の評価損を損金にするためには、価額の著しい低下など、法人税法上の要件を満たしているかを別に確認する必要があります。

決算では、次の二つを分けて判断します。

  1. 中小会計要領に基づき、会計上の評価損を計上するか
  2. 法人税法に基づき、評価損を税務上の損金にできるか

会計上は評価損の計上が必要でも、税務上の要件を満たさない場合があります。
その場合は、法人税申告書で調整が必要です。

評価損を決算書に計上したからといって、法人税の計算でも同じ金額を差し引けるとは限りません。

会計処理と税務上の取り扱いを混同しないようにしましょう。

まとめ|有価証券は残高だけでなく金額の根拠まで確認する

有価証券の決算では、貸借対照表に記載された残高だけを見ても、正しく処理されているかは判断できません。

たとえば、貸借対照表に有価証券が100万円と記載されていても、金額の根拠まではわかりません。

決算では、主に次の点を確認します。

  • 銘柄ごとの保有数量は合っているか
  • 取得原価は正しく計算されているか
  • 売買目的有価証券に該当しないか
  • 取得時より価値が大きく下がっていないか

帳簿に記載された金額と、その根拠となる資料を銘柄ごとに照らし合わせることが大切です。

根拠資料
  • 取引報告書
    購入した銘柄、数量、金額を確認する
  • 残高報告書
    決算時に保有している銘柄と数量を確認する
  • 取得時の帳簿記録
    取得原価、取得目的、売買目的としての区分を確認する
  • 決算時の市場価格
    売買目的有価証券の時価と、取得原価からの下落状況を確認する
  • 発行会社の決算書
    非上場株式の価値が大きく下がっていないかを確認する

まず、取引報告書と残高報告書から、銘柄ごとの取得内容と決算時の保有数量を確かめます。
同じ銘柄を複数回購入している場合は、会社が採用している評価方法で取得原価を計算します。

次に、取得時の帳簿記録を見直し、売買目的有価証券に該当するかを判断します。

取得原価で計上する有価証券についても、確認は終わりません。
市場価格のある有価証券は決算時の時価を確認し、非上場株式は発行会社の決算書から、価値が著しく下がっていないかを検討します。

有価証券は、前年の帳簿残高をそのまま引き継ぐのではなく、取得原価、保有目的、決算時の価値まで確認することが大切です。

評価損を計上する場合は、会計上の処理だけで判断を終えず、法人税の計算で損金にできるかも分けて確認しましょう。

有価証券は、帳簿に記載された残高だけで判断せず、取引報告書や残高報告書、発行会社の決算書などと照らし合わせて確認することが大切です。
また、評価損を計上する場合には、会計上の処理だけでなく、法人税の計算で損金にできるかも分けて確認する必要があります。 当事務所では、確認したい範囲に応じて、次のサービスをご用意しています。

  • 個別の有価証券の取得原価や評価方法を確認したい場合は、メール相談
  • 複数の有価証券について、時価評価や評価損の要否を整理したい場合は、個別コンサルティング
  • 決算時の評価や税務上の取り扱いを継続して確認したい場合は、税務顧問

自社が保有する有価証券の計上額に迷っている方や、帳簿の残高と根拠資料が合っているか確認したい方は、ご相談ください。


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