事業で使っていた車を売却したら、車両を帳簿から外す仕訳を行います。

個人事業主の場合、車両の売却損益は、原則として事業所得には含めません。
売却による利益や損失は、譲渡所得として別に計算します。

消費税は、売却益ではなく、車両本体の売却代金にかかります。
課税事業者が事業用車両を売却した場合、車両本体の売却は消費税10%の対象です。
税抜経理では、売却代金を本体価額と仮受消費税等に分けて仕訳します。

一方、リサイクル預託金は非課税売上です。
車両本体と同じ税区分では処理できないため、買取明細書の内訳を見ながら金額を分けます。

この記事の前提

今回は、個人事業主が国内で事業用車両を売却し、税抜経理を採用している場合を前提にしています。

法人が事業用車両を売却した場合は、法人税法上、譲渡損益は他の利益と合算して課税されます。
個人事業主とは税金の計算が異なるため、別に確認が必要です。

法人のケースについては、下記の記事をご覧ください。

この記事の要点
  • 一般的な事業用車両の売却損益は、原則として譲渡所得になる
  • 個人事業主の仕訳では、事業主借と事業主貸を使う
  • 税抜経理では、売却代金を税抜価額と仮受消費税に分ける
  • 消費税は、売却益ではなく車両本体の売却代金にかかる
  • リサイクル預託金は、非課税売上として分けて処理する
  • 売却後は、固定資産台帳と消費税集計表も見直す

個人事業主の車両売却損益は譲渡所得になる

売却益を雑収入には入れない

事業で使っていた一般的な車両を売却した場合、売却による所得は、原則として譲渡所得に区分されます。

車両を仕事に使っていたとしても、売却益を青色申告決算書の雑収入へ入れるわけではありません。
売却損が出た場合も、事業所得の必要経費には入れず、譲渡所得の計算で扱います。

法人とは使う勘定科目が異なる

法人が車両を売却したときは、売却損益を固定資産売却益や固定資産売却損として処理します。

個人事業主が同じ科目を使うと、売却損益が事業所得へ入り込んでしまいます。
そのため、個人事業主の仕訳では事業主勘定を使います。

  • 売却代金の税抜価額は「事業主借」
  • 車両の帳簿価額は「事業主貸」
  • 売却代金に含まれる消費税は「仮受消費税」

事業主借と事業主貸の差額が、帳簿上の売却益または売却損に当たります。

仕訳の前に2つの書類を用意する

車両を売却したら、次の書類を確認します。

  • 固定資産台帳
  • 買取明細書

固定資産台帳では、売却時の帳簿価額を見ます。

買取明細書で見るのは、売却代金の内訳です。
車両本体とリサイクル預託金では消費税区分が異なるため、入金総額だけでは仕訳を作れません。

固定資産台帳で帳簿価額を確認する

売却損益を計算するときは、車両を買ったときの金額ではなく、減価償却後の帳簿価額を使います。

間接法(毎期「減価償却累計額」を計上しているケース)で減価償却を記帳している場合、計算式は次のとおりです。

取得価額 − 減価償却累計額 = 帳簿価額

取得価額300万円、減価償却累計額220万円の車両なら、帳簿価額は80万円です。

税抜100万円で車両本体を売却した場合、帳簿上の売却益相当額は20万円になります。

110万円 − 80万円 = 30万円

税抜70万円で売却した場合は、10万円の売却損相当額です。

70万円 − 80万円 = ▲10万円

差額は、仕訳を作るために確認する金額です。
確定申告では、売却にかかった費用や譲渡所得の特別控除なども含めて計算します。

買取明細書で売却代金を分ける

買取業者から111万円が入金されても、111万円の全額が車両本体の売却代金とは限りません。

車両売却時の入金額の内訳が、次のようになっていたとします。

  • 車両本体の税込売却価額:110万円
  • リサイクル預託金:1万円

車両本体110万円は、税抜価額100万円と消費税10万円に分けます。

リサイクル預託金1万円は非課税売上です。

入金額111万円の内訳
  • 車両本体の税抜価額:100万円
  • 仮受消費税等:10万円
  • リサイクル預託金:1万円

入金総額を一つの勘定科目や税区分で処理しないようにします。

車両を売却したときの仕訳

次の条件で仕訳を見ていきます。

  • 車両の取得価額:300万円
  • 減価償却累計額:220万円
  • 帳簿価額:80万円
  • リサイクル預託金:1万円
  • 税抜経理
  • 売却日までの減価償却費は計上済み
  • 車両は事業だけに使用
  • 売却代金は事業用口座へ入金

仕訳は、次の2段階の流れに分けていきます。

  1. 売却代金の入金を記録する
  2. 車両を帳簿から外す

売却益が出た場合

車両本体を税込110万円で売却し、リサイクル預託金1万円と合わせて111万円が入金された場合です。

最初に、入金を記録します。

借方金額貸方金額
普通預金1,110,000円事業主借1,000,000円
仮受消費税100,000円
リサイクル預託金10,000円

消費税区分は、次のように分かれます。

  • 事業主借100万円:課税売上10%に対応する税抜価額
  • 仮受消費税10万円:車両本体の売却に係る消費税
  • 預託金1万円:非課税売上

次に、車両を帳簿から外します。

借方金額貸方金額
減価償却累計額2,200,000円車両3,000,000円
事業主貸800,000円

事業主借100万円と事業主貸80万円の差額20万円が、帳簿上の売却益相当額です。

要注意

税込110万円と税抜100万円を混同しない

車両本体の税込売却価額は110万円ですが、税抜経理で売却損益を比べるときは、税抜価額100万円を使います。

100万円 − 帳簿価額80万円 = 売却益相当額20万円

一方、消費税申告では、税抜価額100万円が課税売上となり、10万円を売却時の消費税として処理します。

売却損が出た場合

車両本体を税込77万円で売却し、リサイクル預託金1万円と合わせて78万円が入金された場合です。

入金の仕訳は、次のとおりです。

借方金額貸方金額
普通預金780,000円事業主借700,000円
仮受消費税70,000円
リサイクル預託金10,000円

次に、車両を帳簿から外します。

借方金額貸方金額
減価償却累計額2,200,000円車両3,000,000円
事業主貸800,000円

事業主借70万円と事業主貸80万円の差額10万円が、帳簿上の売却損相当額です。

10万円を事業所得の必要経費には入れません。
確定申告では譲渡所得の計算で所得税を計算します。

個人口座で売却代金を受け取った場合

売却代金が個人口座へ振り込まれた場合は、普通預金の代わりに事業主貸を使います。

車両本体の税込売却価額110万円、リサイクル預託金1万円なら、仕訳は次のとおりです。

借方金額貸方金額
事業主貸1,110,000円事業主借1,000,000円
仮受消費税100,000円
リサイクル預託金10,000円

売却代金を個人口座で受け取っても、車両本体の消費税がなくなるわけではありません。
車両を帳簿から外す仕訳も必要です。

車両本体の売却は消費税10%の対象になる

売却益だけを課税売上にしない

課税事業者が事業用車両を売却した場合、車両本体の売却は消費税10%の対象になります。

税込110万円で売却した例では、金額を次のように分けます。

  • 車両本体の税抜価額:100万円
  • 仮受消費税:10万円
  • 帳簿上の売却益相当額:20万円

売却益相当額20万円だけを課税売上にすると、消費税申告へ反映される課税売上が80万円不足します。

課税売上は、車両本体の税抜売却価額100万円です。

免税事業者は、車両の売却代金を消費税の申告や納付の計算には含めません。

仕事と私用の両方で使っていた車両は、事業用部分を分けて考えます。
事業専用車とは計算が異なるため、使用割合も確認してください。

自動車税などの精算額も売却代金に含まれる

買取明細書には、未経過自動車税相当額や未経過自賠責保険料相当額が記載されることがあります。

別項目で表示されていても、中古車の売却に伴って受け取る未経過自動車税相当額などは、車両の売却代金に含まれます。
リサイクル預託金のような非課税取引ではありません。

買取明細書の項目名だけで税区分を決めず、車両の売却代金に含まれる項目かどうかを見ます。

リサイクル預託金は非課税売上になる

車両を売却すると、リサイクル預託金に係る権利も買主へ移ります。

リサイクル預託金相当額は、消費税では有価証券等の譲渡に当たるため、非課税売上です。

主な税区分をまとめると、次のようになります。

主な税区分
  • 車両本体:課税売上10%
  • リサイクル預託金:非課税売上
  • 未経過自動車税相当額など:車両の売却代金に含めて課税売上10%

車両本体とリサイクル預託金が同じ日に入金されても、税区分は分けて入力します。

課税売上割合では譲渡対価の5%を使う

本則課税で課税売上割合を計算する場合、リサイクル預託金に係る権利の譲渡は、譲渡対価の5%相当額を分母へ加えます。

リサイクル預託金が1万円なら、分母へ加える金額は500円(1万円 × 5% = 500円)です。

仕訳を登録した後は、消費税集計表を開き、非課税売上と課税売上割合への反映額を見ます。

売却後は貸借対照表も確認する

仕訳を登録した後は、固定資産台帳へ売却日を登録します。

売却済みの車両が台帳に残っていると、翌年も減価償却費が計算される可能性があります。

貸借対照表では、次の残高を見ます。

  • 売却した車両運搬具
  • 車両に対応する減価償却累計額
  • 買主へ移ったリサイクル預託金

税抜経理では、仮受消費税の金額も確認します。

消費税集計表では、次の金額を照合してください。

  • 車両本体の税抜売却価額
  • 売却時に計上した仮受消費税
  • リサイクル預託金の非課税売上
  • 自動車税などの精算額に関する課税売上

入金額と仕訳の貸借が合っていても、車両や預託金が帳簿に残っている場合があります。

貸借対照表と消費税集計表まで見ると、固定資産の消し忘れや税区分の誤りを見つけられます。

まとめ

個人事業主が一般的な事業用車両を売却した場合、売却損益は、原則として譲渡所得になります。

税抜経理では、車両本体の税込売却価額を、税抜価額と仮受消費税に分けます。
税込110万円で売却した場合は、税抜価額100万円と仮受消費税10万円です。

帳簿価額が80万円なら、仕訳上の売却益相当額は20万円となります。

税抜売却価額100万円 − 帳簿価額80万円 = 20万円

消費税の課税売上となるのは、売却益相当額20万円ではなく、車両本体の税抜売却価額100万円です。

リサイクル預託金は非課税売上になるため、車両本体とは分けて入力します。
仕訳後は、固定資産台帳と貸借対照表に車両や預託金が残っていないか、消費税集計表へ売却代金が正しく反映されているかを確認しましょう。

車両を売却したときの確認手順
STEP1
固定資産台帳で帳簿価額を確認する

取得価額から減価償却累計額を差し引き、売却時に帳簿へ残っている税抜金額を確認します。

STEP2
買取明細書で車両本体の売却価額を確認する

税込金額だけでなく、本体価額と消費税額がどのように記載されているかを見ます。

STEP3
車両本体とリサイクル預託金を分ける

車両本体は課税売上、リサイクル預託金は非課税売上となるため、金額を分けます。

STEP4
売却代金を税抜価額と消費税額に分ける

車両本体の税込売却価額を、事業主借と仮受消費税に分けて記録します。

STEP5
売却代金の入金を記録する

事業用口座への入金は普通預金、個人口座での受取りは事業主貸を使います。

STEP6
車両を帳簿から外す

車両運搬具と減価償却累計額を取り崩し、帳簿価額を事業主貸で処理します。

STEP7
固定資産台帳へ売却日を登録する

売却済みの車両に、翌年以降も減価償却費が計上されないようにします。

STEP8
貸借対照表に車両や預託金が残っていないかを見る

売却した車両と、買主へ移ったリサイクル預託金の残高が消えているかを確認します。

STEP9
消費税集計表で税抜価額と税額を照合する

車両本体の課税売上、仮受消費税等、リサイクル預託金の非課税売上を見比べます。

STEP10
確定申告で譲渡所得を計算する

帳簿上の差額だけで終わらせず、売却にかかった費用や特別控除も含めて計算します。

車両を売却したときは、固定資産台帳で売却時の帳簿価額を確認し、買取明細書に記載された車両本体、消費税、リサイクル預託金を分けて仕訳します。
また、個人事業主の車両売却損益は原則として譲渡所得になる一方、課税事業者が事業用車両を売却した場合は、車両本体の売却代金が消費税の課税対象となるため、所得税と消費税を分けて処理する必要があります。
当事務所では、確認したい範囲に応じて、次のサービスをご用意しています。

  • 個別の車両売却について、税抜経理の仕訳や消費税区分を確認したい場合は、メール相談
  • 固定資産台帳や買取明細書をもとに、帳簿価額の確認から譲渡所得の計算、消費税申告への反映まで整理したい場合は、個別コンサルティング
  • 車両の購入から売却までの固定資産管理、所得税・消費税の申告、次の車両購入を含む資金繰りを継続して確認したい場合は、税務顧問

買取代金をどのように仕訳すればよいか迷っている方や、車両の売却損益を譲渡所得と消費税申告へ正しく反映できているか確認したい方は、ご相談ください。


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