中小会計要領では、経過勘定について、次のように定めています。

7. 経過勘定

(1) 前払費用及び前受収益は、当期の損益計算に含めない。

(2) 未払費用及び未収収益は、当期の損益計算に反映する。

引用元:日本税理士連合会|「中小企業の会計に関する基本要領」

前払費用、前受収益、未払費用、未収収益は、名前がよく似ています。
それぞれの内容を確認しても、実際の決算でどの勘定科目を使えばよいのか判断しにくいかもしれません。

たとえば、3月決算の会社が、1月に1年分の保険料を支払ったとします。

保険料の支払いは済んでいますが、保険期間には4月以降の分も含まれています。
支払額のすべてを当期の費用にすると、翌期に対応する保険料まで当期の費用に入ってしまいます。

反対に、借入金の利息を半年ごとに後払いする契約では、決算日までに利息が発生していても、支払いは翌期になることがあります。
支払っていないという理由で費用に計上しなければ、当期に発生した利息が決算書に反映されません。

どちらの場面でも、支払日だけを見ていたのでは、当期の費用を正しく計算できません。
決算時に重要なのは、支払ったかどうかではなく、何月分の費用なのかという点です。

代金を授受した時期と、費用や収益が発生する期間とのずれを調整するために、経過勘定を使います。

今回は、中小会計要領の各論のうち、経過勘定について確認していきます。

中小会計要領について確認されたい方は、下記の関連記事をご覧ください。

この記事の要点
  • 経過勘定は、代金の授受とサービスの対象期間とのずれを調整する
  • 前払費用と前受収益は、翌期以降に対応する部分を当期の損益から除く
  • 未払費用と未収収益は、当期に対応する部分を当期の損益に反映する
  • 決算では、契約書や請求書からサービスの対象期間を確認する
  • 金額的重要性が乏しいものは、簡便に処理できる場合がある

経過勘定はお金の動きとサービスの期間のズレを調整する

家賃や保険料、利息などは、一定の契約に基づいて継続的に発生します。

代金を支払う時期は、契約によってさまざまです。
サービスを受ける前に支払う契約もあれば、サービスを受けたあとに支払う契約もあります。

収益側でも、代金を先に受け取る場合と、サービスを提供したあとに受け取る場合があります。

代金の受取りとサービスの対象期間が同じ事業年度に収まっていれば、期間を分ける必要はありません。
決算日をまたぐ契約では、支払いや入金の時期と、費用や収益を計上する時期がずれるため、決算時に調整が必要になります。

費用や収益は対象となる期間に合わせる

3月決算の会社が、1月から12月までの保険料を1月にまとめて支払った場合、当期に対応する保険期間は1月から3月までです。

4月から12月までの保険料は、翌期に対応します。

支払額のすべてを当期の費用にすると、当期の費用が多くなり、利益は本来より少なく表示されます。
また、翌期には保険料の支払いがないため、翌期の費用は少なくなってしまいます。

収益についても、同様となります。

1年分の家賃を先に受け取っても、決算日後の賃貸期間に対応する金額まで、当期の収益になるわけではありません。まだ貸していない期間に対応する家賃は、翌期以降の収益です。

一方、サービスの提供が先で、支払いや入金が後になる取引もあります。

決算日までにサービスを受けていれば、代金を支払っていなくても、当期分は当期の費用に含めます。
サービスを提供済みであれば、入金前でも、当期分を収益に計上します。

経過勘定を考えるときは、お金が動いた日ではなく、サービスがどの期間に対応するのかを見る必要があります。

前払いと後払いでは確認する内容が異なる

前払いの取引では、すでに支払った金額や受け取った金額に、翌期以降の分が含まれていないかを確認します。

翌期以降の分が含まれていれば、当期の費用や収益から取り除きます。

後払いの取引では、当期中に発生した費用や収益が、帳簿から漏れていないかを確認してください。

前払いと後払いの取引については、次のようになります。

  • 前払いでは、翌期以降に対応する部分を当期の損益から除く
  • 後払いでは、当期に対応する部分を当期の損益に反映する

処理する方向は異なりますが、目的は同じです。
どちらも、当期に対応する費用と収益をそろえ、利益を正しく計算するために行います。

経過勘定は、一定の契約に基づいて継続的に提供されるサービスについて使います。
商品の購入代金や単発の取引では、前払金や未払金など、別の勘定科目を使う場合があります。

経過勘定は4つに分けて考える

経過勘定には、次の4つがあります。

  • 前払費用
  • 前受収益
  • 未払費用
  • 未収収益

最初に、費用と収益のどちらに関する取引なのかを確認します。
次に、代金の支払いや受け取りが済んでいるかを見れば、4つの勘定科目を整理できます。

勘定科目代金の状況サービスの状況決算時の処理貸借対照表
前払費用支払済みまだ提供を受けていない当期の費用から除く資産
前受収益受取済みまだ提供していない当期の収益から除く負債
未払費用未払すでに提供を受けた当期の費用に含める負債
未収収益未収すでに提供した当期の収益に含める資産

前払費用は翌期以降の費用を当期から除く

前払費用は、支払った金額のうち、決算日までにサービスの提供を受けていない部分です。

年払いの保険料では、決算日後の保険期間に対応する金額が前払費用に当たります。

支払時に保険料の全額を費用として入力している場合、決算では翌期以降に対応する金額を費用から減らします。
減らした金額は、前払費用として資産に計上し、翌期へ繰り越します。

確認する内容は、次のとおりです。

  • 契約の開始日と終了日
  • 決算日までに経過した期間
  • 決算日後に残っている期間

支払額だけを見ても、前払費用の金額は分かりません。
契約期間のうち、決算日後に残っている部分を確認します。

前受収益は翌期以降の収益を当期から除く

前受収益は、受け取った金額のうち、決算日までにサービスを提供していない部分です。

翌期分を含む家賃を先に受け取った場合、決算日後の賃貸期間に対応する金額が前受収益に当たります。

受取時に全額を収益として入力していると、まだ貸していない期間の家賃まで、当期の利益に含まれてしまいます。
決算では翌期以降に対応する金額を収益から減らし、前受収益として負債に計上します。

前受収益では、入金日だけでなく、決算日までにどの期間のサービスを提供したのかを確認することが大切です。

未払費用は未払いの当期分を費用に含める

未払費用は、決算日までにサービスの提供を受けているものの、代金をまだ支払っていない部分です。

借入金の利息を後払いする契約では、決算日までに発生した利息のうち、未払いとなっている金額が未払費用に当たります。

支払日が翌期でも、当期に対応する利息は当期の費用です。
決算では支払利息を計上し、同額を未払費用として負債に計上します。

通帳や支払明細だけを確認していると、まだ支払っていない費用を見つけられません。
借入金の返済予定表や契約書から、決算日までに発生した金額を確認する必要があります。

未収収益は未収の当期分を収益に含める

未収収益は、決算日までにサービスを提供しているものの、代金をまだ受け取っていない部分です。

貸付金の利息を後から受け取る契約では、決算日までに発生した利息のうち、未収となっている金額が該当します。

入金日が翌期でも、当期に対応する利息は当期の収益です。
決算では受取利息を計上し、未収収益を資産に計上します。

未収収益も、通帳の入金額だけでは確認できません。
契約に定められた利率や計算期間をもとに、当期分を計算します。

決算では契約内容と対象期間を確認する

経過勘定は、会計ソフトに表示された残高だけでは判断できません。

会計ソフトには、支払日や入金日を基準に取引が入力されていることがあります。
しかし、経過勘定を判断するために必要なのは、何月分のサービスに対する金額なのかという情報です。

契約書や請求書で対象期間を確認する

決算では、取引の内容に応じて、次の資料を確認します。

  • 契約書
  • 請求書
  • 利息計算書
  • 利用期間が記載された明細

請求書の日付と、サービスの対象期間は、必ずしも同じではありません。

請求書に「年間利用料」や「翌月分家賃」と記載されていれば、決算日後の期間が含まれている可能性があります。

自動更新される契約では、更新後の期間も確認してください。
前年と同じ月に支払っていても、契約変更によって対象期間や金額が変わっている場合があります。

決算日を基準に金額を分ける

3月決算の会社が、1月1日に1年分の保険料12万円を支払った場合を考えてみましょう。
保険期間は1月から12月までとします。

当期分と翌期以降の分に分けると、次のようになります。

  • 1月から3月までの3か月分:3万円
  • 4月から12月までの9か月分:9万円

当期の費用は、1月から3月までの3万円です。
4月以降に対応する9万円は、前払費用として翌期へ繰り越します。

12万円の全額を当期の費用にすると、当期の費用は9万円多くなります。
結果として、当期の利益は9万円少なく表示されます。

経過勘定は、勘定科目を正しく選ぶためだけの処理ではありません。
当期の経営成績を正しく把握するためにも必要な処理です。

STEP1
契約内容を確認する

継続的なサービスに関する取引か、商品の購入などの単発取引かを確認します。

STEP2
サービスの対象期間を確認する

契約書や請求書を見て、支払額や受取額が何月分に対応するのかを確認します。

STEP3
対象期間を決算日までと決算日後に分ける

契約期間が決算日をまたぐ場合は、当期に対応する期間と翌期以降の期間に分けます。

STEP4
当期分と翌期以降の金額を計算する

月数や日数など、契約内容に合った方法で、それぞれの期間に対応する金額を計算します。

STEP5
取引内容に合った勘定科目を選ぶ

費用か収益か、代金を授受済みかを確認し、4つの経過勘定から該当する科目を選びます。

同じ支払先でも契約ごとに確認する

同じ支払先への支払いでも、毎回同じ処理になるとは限りません。

同じ会社から、月額契約のサービスと年額契約のサービスを利用している場合があります。
月額利用料が当期分だけであっても、年額利用料には翌期以降の分が含まれているかもしれません。

継続契約に基づくサービスの利用料と、単発で購入した商品の代金でも、使用する勘定科目は変わります。

会計ソフトに登録された勘定科目や支払先の名前だけで処理を決めず、契約ごとに内容と対象期間を確認しましょう。

重要性が乏しいものは簡便に処理できる場合がある

中小会計要領では、金額的に重要性が乏しいものについて、受け取った期または支払った期の収益や費用として処理することも認めています。

決算日をまたぐ支払いは、本来、当期分と翌期以降の分に分けます。
ただし、決算数値への影響がほとんどない取引まで細かく分けると、処理にかかる手間だけが大きくなる場合があります。

金額的重要性が乏しい取引に簡便な処理が認められているのは、決算書への影響と事務負担のバランスを取るためです。

重要性は1件の金額だけで判断しない

1件の金額が小さくても、同じ取引が多数あれば、合計額は大きくなります。

毎期発生する取引について、年によって処理方法を変えると、前期との比較にも影響します。

金額的重要性を検討するときは、次の内容を確認します。

  • 対象となる取引の合計額
  • 決算数値に与える影響
  • 同じ取引が継続して発生するか
  • 毎期同じ方法で処理しているか

簡便な処理を採用する場合も、決算の都度、都合に合わせて処理方法を変えるのではなく、会社の規模や取引状況に合った基準を設け、継続して適用することが大切です。

なお、「会計上の処理と税務上の取扱いは、必ずしも一致しません。」
会計上、重要性が乏しいものとして簡便に処理した場合でも、法人税の計算で同じ処理が認められるかは、分けて確認する必要があります。

まとめ|経過勘定は支払日だけで判断しない

前払いした金額のすべてが、翌期の費用になるわけではありません。
後払いだからといって、支払時まで費用にならないわけでもありません。

経過勘定を判断するときは、支払日や入金日とともに、サービスの対象期間を確認します。

前払費用と前受収益では、翌期以降に対応する部分を当期の損益から除きます。
未払費用と未収収益では、当期に対応する部分を当期の損益に反映します。

会計ソフトの残高だけでは、サービスの対象期間まで確認できません。
契約書や請求書などの資料と照らし合わせ、当期分と翌期以降の分を分けたうえで、取引内容に合った勘定科目で処理することが大切です。

前払いや後払いとなる取引は、支払日や入金日だけで判断せず、契約書や請求書などからサービスの対象期間を確認することが大切です。
また、金額的重要性が乏しいものを簡便に処理する場合には、会計上の処理だけでなく、法人税の計算で同じ取扱いが認められるかも分けて確認する必要があります。
当事務所では、確認したい範囲に応じて、次のサービスをご用意しています。

  • 個別の前払いや後払いについて、当期分と翌期以降の分を確認したい場合は、メール相談
  • 複数の契約について、対象期間や使用する勘定科目を整理したい場合は、個別コンサルティング
  • 決算時の経過勘定や税務上の取扱いを継続して確認したい場合は、税務顧問

前払費用や未払費用などの計上額に迷っている方や、契約書・請求書と会計帳簿を照らし合わせて確認したい方は、ご相談ください。


当ブログに掲載している内容は、一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する専門的な助言を行うものではありません。 
内容の正確性および最新性の確保には十分留意しておりますが、法令の改正や個別の事情等により、実際の取扱いが異なる場合があります。また、理解しやすさを重視し、一部表現を簡略化または意訳している箇所がございます。 
当ブログの情報に基づいて行われた判断または行動により生じたいかなる結果につきましても、当事務所および執筆者は責任を負いかねます。内容に関する具体的な判断や手続きにつきましては、必ず税務署等または税理士等の専門家へご相談いただくとともに、最新の法令・通達等をご確認ください。 
なお、当ブログに掲載した情報は、予告なく変更または削除される場合がありますので、あらかじめご了承ください。