決算日に残った商品や材料は、いくらで計上すればよいのでしょうか。
仕入れたときの金額を使うのか、直近の仕入単価を使うのか。
売れ残って価値が下がった商品を、購入時と同じ金額で計上してよいのか。
棚卸資産には、判断に迷いやすい点があります。
中小会計要領では、棚卸資産について、原則として取得原価で計上することとされています。
6. 棚卸資産
(1) 棚卸資産は、原則として、取得原価で計上する。
(2) 棚卸資産の評価基準は、原価法又は低価法による。
(3) 棚卸資産の評価方法は、個別法、先入先出法、総平均法、移動平均法、最終仕入原価法、売価還元法等
による。(4) 時価が取得原価よりも著しく下落したときは、回復の見込みがあると判断した場合を除き、評価損を計
引用元:日本税理士連合会|「中小企業の会計に関する基本要領」
上する。
購入した商品であれば、購入金額に付随費用を加えた金額です。
自社で製造した製品は、製造にかかった原価を積み上げます。
ただし、同じ商品でも、仕入れた時期によって価格が異なることがあります。
決算日に残った在庫をいくらにするかは、自社が採用している評価方法に従って計算しなければなりません。
取得原価を計算した後は、在庫の価値が下がっていないかも確認します。
今回は、中小会計要領の各論のうち、棚卸資産について確認していきます。
なお、中小会計要領については、下記の関連記事をご覧ください。
- 決算日に残った商品や原材料は、棚卸資産として翌期へ繰り越す
- 棚卸資産は、原則として取得原価で計上する
- 購入した商品は、購入金額に付随費用を加える
- 製造した製品は、製造にかかった原価を積み上げる
- 期末在庫の取得原価は、自社が採用している評価方法で計算する
- 価値が著しく下がった在庫は、評価損の計上を検討する
- 会計上の評価損と税務上の損金は分けて確認する
在庫は原則として取得原価で計上する

決算日に残っている商品や材料は、すべて当期の費用にするのではなく、棚卸資産として貸借対照表に計上します。
まだ販売や使用をしておらず、翌期以降の売上や製造につながる資産だからです。
たとえば、商品を100個仕入れ、決算日までに80個を販売したとします。
販売した80個分は売上原価になりますが、残った20個分は翌期以降に販売する在庫です。
期末棚卸高は、基本的に次の式で計算します。
期末棚卸高 = 決算日に残っている数量 × 1単位あたりの取得原価
つまり、決算では次の2つを確認する必要があります。
- 決算日にいくつ残っているか?
- 1単位あたりの取得原価はいくらか?
商品や原材料も棚卸資産に含まれる
日常的に使われる「在庫」は、会計上「棚卸資産」と呼ばれます。
主な棚卸資産は、次のとおりです。
- 仕入れて販売する商品
- 自社で製造した製品
- 製造途中の半製品や仕掛品
- 製造に使用する原材料
完成した商品や製品だけが、棚卸資産になるわけではありません。
決算日に製造途中のものがあれば、半製品や仕掛品として計上します。
まだ製造に使っていない材料も、原材料として棚卸資産に含めます。
期末在庫の誤りは利益にも影響する
棚卸資産の金額は、貸借対照表だけでなく、損益計算書の売上原価にも影響します。
売上原価は、一般に次の式で計算します。
売上原価 = 期首棚卸高 + 当期仕入高 − 期末棚卸高
期末棚卸高を多く計上すると、売上原価は小さくなり、当期の利益は大きくなります。
反対に、期末棚卸高を少なく計上すると、売上原価が大きくなり、利益は小さくなります。
決算書を申告のためだけでなく、会社の状況を確認する資料として使うためにも、期末棚卸高の根拠を明確にしておくことが大切です。
取得原価は購入や製造にかかった金額をもとに計算する

棚卸資産は、原則として取得原価で計上します。
ただし、購入した商品と、自社で製造した製品では、計算方法が異なります。
購入した商品は、購入金額に付随費用を加えます。
自社で製造した製品は、製造にかかった原価を積み上げて金額を求めます。
購入した商品には付随費用を加える
購入した商品の金額は、商品そのものの購入金額だけで決まるとは限りません。
商品の購入や受け入れに直接かかった費用があれば、取得するためにかかった金額として加える場合があります。
付随費用には、たとえば次のようなものがあります。
- 引取運賃
- 荷役費
- 購入手数料
商品100個を100,000円で購入し、引取運賃として5,000円を支払った場合を考えてみましょう。
引取運賃を商品の取得にかかった金額へ含める場合、購入時の金額は105,000円です。
100個で割ると、1個あたり1,050円になります。
ただし、商品に関係する支出を、すべて棚卸資産の金額へ加えるわけではありません。
商品の購入や受け入れに直接かかった費用か、金額的な重要性があるかなどを確認して判断します。
製造した製品は製造原価を積み上げる
自社で製造した製品には、仕入商品のような購入金額がありません。
製品をつくるためにかかった原価を積み上げて、取得原価を計算します。
製造原価を構成する主な費用は、次のとおりです。
- 材料費
- 労務費
- 製造経費
材料費だけで製品の金額を計算すると、製造に必要となった人件費や工場の経費が反映されません。
製造途中の仕掛品についても、材料費だけを見るのではなく、決算日までにかかった製造原価をもとに金額を求めます。
原価法と低価法では評価基準が異なる

中小会計要領では、棚卸資産の評価基準として、原価法または低価法が示されています。
原価法と低価法は、取得原価と時価をどのように扱うかという基準です。
一方、先入先出法や総平均法などは、仕入時期によって異なる原価を、期末在庫へどのように配分するかという計算方法です。
名称は似ていますが、意味は異なります。
評価基準
取得原価と時価をどのように扱うかを決めます。原価法と低価法があります。
評価方法
仕入時期によって異なる原価を、期末在庫へどのように配分するかを決めます。先入先出法や総平均法などがあります。
原価法は取得原価で在庫を評価する
原価法は、取得原価によって期末棚卸資産を評価する基準です。
同じ商品を何度も仕入れていると、時期によって仕入価格が異なることがあります。
決算日に残った商品の取得原価を求めるには、自社が採用している評価方法に従い、各仕入れの原価を期末在庫と売上原価に分けます。
低価法は取得原価と時価を比べる
低価法では、取得原価と決算日時点の時価を比べ、低い方の金額で棚卸資産を評価する基準です。
たとえば、取得原価が1,000円、決算日時点の時価が700円であれば、低い方の700円で評価します。
原価法と低価法では、時価が下がった場合の扱いが異なります。
低価法を採用している場合
取得原価と決算日時点の時価を比べ、低い方の金額で評価します。
原価法を採用している場合
原則として取得原価で評価します。ただし、時価が著しく下落し、回復の見込みがない場合には、評価損を計上します。
まず、自社が採用している評価基準を確認します。そのうえで、決算日に残っている在庫の価値を確認しましょう。
評価方法によって期末在庫の取得原価を計算する

同じ商品でも、仕入れた時期によって価格が変わることがあります。
たとえば、同じ商品を次の単価で仕入れていたとします。
- 1月は1個1,000円
- 6月は1個1,100円
- 11月は1個1,200円
決算日に商品が残っている場合、どの仕入れの原価を期末在庫へ配分するかによって、期末棚卸高が変わります。
中小会計要領では、棚卸資産の評価方法として、次の方法が示されています。
| 評価方法 | 取得原価の求め方 |
|---|---|
| 個別法 | 在庫ごとの実際の取得原価を使う |
| 先入先出法 | 先に仕入れたものから払い出したと考える |
| 総平均法 | 一定期間の取得原価を平均する |
| 移動平均法 | 仕入れの度に平均単価を計算する |
| 最終仕入原価法 | 期末に最も近い時期の仕入単価を使う |
| 売価還元法 | 売価と原価率から取得原価を求める |
評価方法によって、期末在庫へ配分される取得原価は変わります。
自社が採用している評価方法を確認し、その方法に従って計算することが重要です。
採用した評価方法は継続して使う
評価方法は、決算のたびに選び直すものではありません。
仕入価格が上がった年と下がった年で評価方法を変えると、期末在庫と利益の計算方法も毎期変わってしまいます。
採用した評価方法は、継続して適用することが基本です。
会計ソフトや在庫管理システムで自動計算している場合も、設定されている評価方法と実際の会計処理が一致しているかを確認しましょう。
価値が著しく下がった在庫は評価損を検討する

評価方法に従って取得原価を計算した後は、決算日に残っている在庫の状態を確認します。
古くなった商品や破損した商品を、通常の商品と同じ金額で計上すると、棚卸資産が実際の価値よりも大きく表示される可能性があるからです。
時価の下落と回復の見込みを確認する
原価法を採用している場合でも、時価が取得原価よりも著しく下落したときは、回復の見込みを確認します。
回復の見込みがあると判断した場合を除き、評価損の計上が必要です。
ただし、販売価格が少し下がっただけで、直ちに評価損を計上するわけではありません。
確認するポイントは、次の2つです。
- 時価が取得原価よりも著しく下落しているか?
- 下落した価値が回復する見込みはあるか?
商品の時価は、商品ごとの売価や最近の仕入金額から把握することが考えられます。
値札だけで判断せず、実際の販売価格や直近の仕入資料も確認しましょう。
陳腐化や損傷は在庫ごとに確認する
正確な時価を把握することが難しくても、商品の状態から、取得原価のまま計上することが適切ではないと判断できる場合があります。
評価損を検討する代表的な状態は、次のとおりです。
- 著しく陳腐化している
- 災害によって著しく損傷している
- 賞味期限が切れている
- 雨ざらしなどにより、ほとんど価値がない
長期間売れていないという理由だけで、直ちに評価損を計上できるとは限りません。
売れ残っている期間に加えて、実際の販売価格や商品の状態を確認します。
今後、通常の価格で販売できる見込みがあるかも重要な判断材料です。
会計上の評価損と税務上の損金を分ける
会計上、棚卸資産評価損を計上しても、その金額がそのまま税務上の損金になるとは限りません。
税務上、評価損を損金にできるかは、価値が下がった原因や商品の状態を確認し、事実を裏付ける資料をもとに個別に判断します。
単に売れ行きが悪い、今後値下がりするかもしれない、といった見込みだけで税務上の処理を決めることはできません。
棚卸資産を会計上いくらで計上するかという判断と、計上した評価損を税務上の損金にできるかという判断は、分けて確認します。
会計上の評価損が税務上の損金として認められない場合には、法人税の申告で調整が必要となることがあります。
決算では数量・取得原価・在庫の状態を確認する

棚卸資産の金額は、会計ソフトに表示された残高だけでは判断できません。
決算日に実際に残っている在庫と、仕入資料などを照らし合わせながら確認します。
実地棚卸で数量を確認する
最初に、決算日に実際に残っている数量を数えます。
帳簿上の数量と実際の数量が、一致しているとは限りません。
差が生じる主な原因は、次のとおりです。
- 入出庫の記録漏れ
- 破損や紛失
- 数え間違い
- 保管場所の確認漏れ
倉庫以外に保管している商品や、外部へ預けている在庫がある場合は、棚卸しの対象から漏れないように注意しましょう。
取得原価と評価損の根拠を残す
数量を確認した後は、自社が採用している評価方法に従って取得原価を計算します。
取得原価の確認には、次のような資料を使います。
- 仕入台帳
- 納品書や請求書
- 在庫管理表
- 製造原価の集計資料
価値が下がった在庫については、評価損を計上する根拠も残しておきます。
- 商品ごとの販売実績
- 最近の販売価格や仕入価格
- 値下げの記録
- 破損や劣化の状態がわかる写真
- 廃棄や処分に関する記録
商品だけでなく、製品、仕掛品、原材料など、決算日に残っているものを漏れなく確認します。
実地棚卸を行い、帳簿上の数量と実際に残っている数量が一致しているかを確かめます。
購入した商品は購入金額と付随費用、製造した製品は決算日までにかかった製造原価を確認します。
先入先出法や総平均法など、自社が継続して採用している方法に従って期末在庫の金額を求めます。
最近の販売価格や仕入価格に加えて、売れ残り、陳腐化、破損などがないかを在庫ごとに確認します。
時価が取得原価よりも著しく下落している場合は、価値が回復する見込みも踏まえて判断します。
会計上の評価損が、そのまま税務上の損金になるとは限らないため、要件と根拠資料を別に確認します。
まとめ|棚卸資産は数量・取得原価・現在の価値を確認する
決算日に残った在庫は、原則として取得原価で計上します。
ただし、正しい期末棚卸高を求めるには、数量を数えるだけでは足りません。
購入した商品は、購入金額に加えて、購入や受け入れに直接かかった付随費用を確認します。自社で製造した製品や仕掛品については、決算日までにかかった製造原価を整理します。
次に、自社が採用している評価方法に従い、期末在庫へ配分する取得原価を計算します。
最後に確認するのが、決算日時点の在庫の価値です。
時価が著しく下落している場合や、陳腐化や損傷によって価値がほとんどなくなっている場合は、評価損の計上を検討します。
決算時の確認ポイントは、次の3つです。
- 決算日にいくつ残っているか
- 採用している評価方法で取得原価はいくらになるか
- 決算日時点で価値が著しく下がっていないか
棚卸資産の金額は、数量を確認し、取得原価を計算したうえで、現在の価値を確認して決めます。
判断に迷う在庫がある場合は、仕入資料や在庫一覧に加えて、販売実績や商品の状態がわかる資料もそろえましょう。
会計上の計上額と税務上の取扱いを分けて確認すれば、決算書に計上した在庫金額の根拠も明確になります。
棚卸資産の金額は、在庫の数量だけでなく、購入や製造にかかった金額、採用している評価方法をもとに計算します。
また、価値が下がった在庫について評価損を計上する場合には、会計上の処理だけでなく、法人税の計算で損金にできるかも分けて確認する必要があります。
当事務所では、確認したい範囲に応じて、次のサービスをご用意しています。
- 個別の在庫について、取得原価や評価方法を確認したい場合は、メール相談
- 複数の在庫について、取得原価や評価損の要否を整理したい場合は、個別コンサルティング
- 決算時の棚卸資産の評価や税務上の取扱いを継続して確認したい場合は、税務顧問
決算日に残っている在庫の計上額に迷っている方や、在庫一覧と仕入資料などを照らし合わせて確認したい方は、ご相談ください。
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