売掛金(未収入金)の内訳書を見るときは、各売掛金(未収入金)の内容を確認することが重要です。

決算のたびに、同じ取引先の残高が出てくる。
いつ発生した売掛金なのか、社内の誰もわからない。
取引先から入金されたはずなのに、帳簿には売掛金が残っている。

心当たりがある場合は、内訳書へ前年と同じ金額を転記する前に、残高の中身を調べてみましょう。

長期間残っている売掛金が、すべて問題になるわけではありません。
契約上の入金日が先に設定されている場合や、取引先と分割払いで合意している場合もあります。

一方、回収不能と判断される売掛金を、理由も確認せず資産として残し続けると、決算書が会社の実態と合わなくなります。

会計上、回収不能と判断した売掛金は貸倒損失として処理し、税務上の損金算入要件を満たさない場合には、法人税申告書で調整する方法があります。

このように整理すれば、売掛金(未収入金)の内訳書に記載されるのは、基本的に、取引の根拠や回収予定を説明できる残高になります。

この記事の要点
  • 前期以前から残っている売掛金・未収入金を見つける
  • 発生日と最後の入金日を調べる
  • 残っている理由と回収可能性を確認する
  • 会計上、回収不能と判断した売掛金は貸倒処理を検討する
  • 税務上損金にならない場合は、法人税申告書で調整する

売掛金(未収入金)の内訳書は、勘定科目内訳明細書の一つです。
勘定科目内訳明細書の全体像は、次の記事でまとめています。

長期間動いていない残高を見つける

売掛金(未収入金)の内訳書には、決算日時点の残高が相手先別に記載されます。

ただし、内訳書を1年分だけ見ても、個々の売掛金がいつ発生したのかはわかりません。
長期滞留を見つけるには、前期の内訳書や取引先ごとの帳簿と照らし合わせる必要があります。

前期の内訳書と比較する

最初に、当期と前期の内訳書を並べます。

同じ相手先に、同額または近い金額が残っていたら、詳しい内訳を確認しましょう。
特に注意したいのは、すでに取引が終わっている相手先の残高が、毎年そのまま繰り越されているケースです。

一方、毎月取引している相手先では、前期末と当期末の残高が偶然近くなることもあります。

毎月100万円前後を請求し、翌月末に入金される取引であれば、毎期末に似た金額が残っていても不自然ではありません。

そのため、期末残高の金額だけで長期滞留しているとは判断できません。

前期から同じ請求が残っているのか、当期に新しく発生した売掛金なのかを、請求単位で確認します。

発生日と最後の入金日を確認する

長期滞留している可能性がある残高を見つけたら、いつ発生し、最後にいつ入金されたのかを調べます。

確認する資料は、次のとおりです。

  • 得意先元帳
  • 売掛金や未収入金の補助元帳
  • 請求書
  • 通帳や入金明細
  • 未入金一覧

補助元帳とは、売掛金の発生と入金を、取引先ごとに確認できる帳簿です。

取引先別の残高しか表示されない場合は、請求書や販売管理システムのデータも使い、どの請求が残っているのかを特定します。

未収入金は、通常の営業取引以外から発生する未回収額(車両や機械を売却した代金など)が該当します。

未収入金については、相手先と金額だけでなく、何の取引から発生した残高なのかも確認してください。

約束した入金日を過ぎた請求を抽出する

売掛金が何か月残ったら長期滞留になるのか、すべての会社に共通する期間が決まっているわけではありません。

判断の基準になるのは、自社の契約条件や普段の回収サイクルです。

通常は請求月の翌月末に入金される取引であれば、数か月たっても入金されていない請求は、理由を確認する必要があります。
契約上、入金日が半年先に設定されている取引なら、決算日に残高があっても不自然ではありません。

単純な経過月数ではなく、約束した入金日を過ぎているかどうかを見ましょう。

残高が残っている理由を一件ずつ確認する

通常の回収期限を過ぎた請求を見つけたら、なぜ残っているのかを一件ずつ調べます。

実際に回収が遅れているとは限りません。
帳簿の処理や取引先の登録に原因があり、見かけ上の残高だけが残っている場合もあります。

入金の消込漏れを確認する

取引先から入金されていても、帳簿上の売掛金が残ることがあります。

消込(けしこみ)とは、入金額と請求済みの売掛金を対応させ、帳簿上の残高を減らす処理です。

消込漏れが起こりやすいのは、次のような場合です。

  • 振込名義と取引先名が異なっている
  • 複数の請求分がまとめて入金されている
  • 振込手数料が差し引かれている
  • 請求額と入金額に差がある

通帳や入金明細で該当する入金が見つかったら、内訳書の金額だけを減らすのではなく、帳簿の処理から見直します。

内訳書は帳簿上の残高をもとに作成するため、内訳書だけを直しても根本的な解決にはなりません。

取引先の登録間違いを確認する

同じ取引先が、複数の名称で登録されていることもあります。

本店名と支店名が別々に登録されている。
法人名の変更前後で取引先コードが分かれている。
請求先と振込名義が異なり、別の取引先として処理されている。

同じ取引先が複数に分かれていると、一方に売掛金が残り、別の取引先に入金額が記録されることがあります。

取引先コードや請求先を照合し、重複登録がないか確認しましょう。

計上した根拠を確認する

消込漏れや登録間違いが見つからなければ、売掛金や未収入金を計上した根拠まで戻ります。

売掛金については、取引内容に応じて、次の資料を確認します。

  • 請求書
  • 納品書
  • 検収書
  • 契約書
  • 取引先とのメールや連絡記録

未収入金は、発生原因がわかる資料を確認してください。

車両や機械の売却代金であれば、売買契約書や売却明細を見ます。
保険金であれば、保険会社からの通知書などで、金額と入金予定を確認します。

帳簿に残っている金額が、実際の取引に基づく債権なのか、今後回収できるのかを確かめることが重要です。

回収不能と判断した売掛金は会計上の貸倒処理を検討する

長期滞留している残高について、発生原因や回収状況を確認した後は、残高を次のように分けます。

  • 帳簿の誤りを修正する残高
  • 取引先へ回収を求める残高
  • 回収状況を引き続き管理する残高
  • 会計上の貸倒処理を検討する残高

会計上、回収不能と判断した売掛金を資産として残し続けると、貸借対照表の売掛金が実態より多く表示されます。

そのため、回収不能と判断できる売掛金については、貸倒損失として処理することを検討します。

長期滞留だけで貸倒損失にはしない

売掛金が長期間残っているという理由だけで、一律に貸倒損失へ振り替えることは適切ではありません。

契約上の入金日が先に設定されている場合もあれば、分割払いに変更している場合もあります。
取引先から支払期限の延長を求められ、双方で合意しているケースも考えられます。

契約内容や合意の記録が残り、回収予定を説明できるのであれば、売掛金として引き続き管理します。

一方、次のような場合は、会計上の貸倒処理を検討する必要があります。

  • 取引先が廃業し、連絡が取れない
  • 取引先に回収できる資産が見当たらない
  • 長期間督促しても入金がない
  • 法的整理などにより債権が切り捨てられた
  • 回収に向けた対応を行っても、回収の見込みがない

個別の事情によって判断が変わるため、事実関係と回収経緯を整理したうえで処理を決めます。

貸倒処理によって内訳書の売掛金を整理する

会計上、回収不能と判断した売掛金を貸倒損失として処理すると、対象となる金額は売掛金残高から外れます。

その結果、売掛金(未収入金)の内訳書には、原則として、次のような残高が残ります。

  • 取引の根拠を確認できる
  • 決算日に残っている理由を説明できる
  • 入金予定を把握している
  • 回収に向けた対応を説明できる

内訳書に載っている売掛金について、経営者が内容を説明できる状態にすることが理想です。

単に内訳書の見た目を整えるために貸倒処理をするのではありません。
回収できない債権を資産から外し、決算書を会社の実態に近づけることが目的です。

会計上貸倒処理しても税務上損金になるとは限らない

会計上、貸倒損失を計上した金額が、法人税の計算でもそのまま損金になるとは限りません。

税務上は、貸倒損失として損金算入できる場合は次のケースをとなります。

  • 法的手続や合理的な協議により債権が切り捨てられた場合
  • 債務者の資産状況や支払能力から、全額回収不能が明らかになった場合
  • 一定の売掛債権について、取引停止後1年以上弁済がない場合
  • 売掛債権が取立費用より少なく、督促しても弁済がない場合

取引停止後1年以上の取扱いは、継続的な取引をしていた債務者の支払能力などが悪化し、取引を停止した場合が対象です。
単発取引により生じた債権には適用されない点にも注意が必要です。

税務上の要件を満たさない場合は申告調整する

会計上は回収不能と判断して貸倒損失を計上しても、税務上の貸倒要件を満たさないことがあります。

税務上損金にならない金額は、法人税の計算上で会計上の利益に加算します。

会計上の仕訳によって売掛金は貸借対照表から外れますが、税務上は損金として認めず、課税所得へ戻すという考え方です。

これにより、「決算書には回収不能と判断した売掛金を残さない」「法人税は税務上の要件に従って正しく計算する」という整理ができます。

長期滞留だけを理由に貸倒処理しない

会計上の貸倒処理には、回収不能と判断した根拠が必要です。
また、会計上貸倒損失を計上しても、税務上の損金算入要件を満たすとは限りません。
取引先の状況、回収交渉の経緯、根拠資料を整理し、決算確定前に税理士へ相談してください。

税務上認められなかった金額は管理を続ける

会計上貸倒処理し、税務上は申告調整した場合、申告調整した金額が将来どのように扱われるかを管理する必要があります。

法人税申告書で加算したまま管理をやめると、将来、税務上の貸倒要件を満たしたときに、必要な申告調整を見落とすおそれがあります。

会計帳簿から売掛金が外れていても、次の情報は別途管理しておきましょう。

  • 取引先名
  • 貸倒処理した金額
  • 貸倒処理した事業年度
  • 税務上加算した金額
  • 回収交渉や法的手続の状況

また、会計上の貸倒処理によって、相手先に対する法的な請求権が当然に消滅するとは限りません。
債権放棄を行うか、引き続き回収を求めるかは、会計処理とは分けて判断します。

相手先ごとの残高から取引の偏りも確認する

回収可能な売掛金を整理した後は、相手先ごとの金額にも目を向けてみましょう。

特定の取引先に売掛金が集中している場合、その取引先からの入金が遅れると、自社の資金繰りにも大きく影響します。

大手企業や地元の老舗企業との取引は、自社の取引実績を説明する材料になります。

取引金額が大きく、入金までの期間が長ければ、自社が負担する運転資金も増えます。

売掛金が特定の相手先に集中している場合は、次の内容を確認してください。

  • 毎月の取引額
  • 締日と入金日
  • 入金が遅れた場合の資金繰りへの影響
  • 今後も同じ取引割合を続ける方針か

取引先への集中が、自社の財務方針や資金繰りと合っているかを、経営者自身が把握することは重要です。

決算時は6つの手順で確認する

決算時には、次の順番で売掛金と未収入金を確認します。

STEP1
前期の内訳書と比較する

同じ相手先に、前期から残っている金額がないか確認します。

STEP2
発生日と最後の入金日を調べる

取引先ごとの帳簿や入金明細を見て、通常の回収期限を過ぎた請求を抽出します。

STEP3
残っている理由を確認する

消込漏れや取引先の登録間違いを調べ、請求書や契約書で取引の根拠を確認します。

STEP4
回収可能性を判断する

取引先の状況や回収交渉の経緯を整理し、今後回収できるか検討します。

STEP5
回収不能と判断した残高は貸倒処理を検討する

会計上の貸倒処理が必要か、税務上も損金として認められるかを分けて確認します。

STEP6
申告調整した金額を管理する

税務上損金にならなかった金額は、将来の回収や貸倒要件の充足に備えて継続管理します。

売掛金や未収入金の確認は、経理担当者だけに任せておわるものではありません。

取引先との関係や回収予定を把握しているのは、経営者や営業担当者であることも多いからです。
経理の帳簿と現場が持っている情報を照らし合わせると、説明できない残高を見つけやすくなります。

まとめ|内訳書には説明できる売掛金を残す

売掛金(未収入金)の内訳書を見るときは、通常の回収期限を過ぎた請求がないか確認しましょう。

古い残高が見つかったら、発生日と最後の入金日まで戻ります。
入金の消込漏れや取引先の登録間違いであれば、内訳書だけでなく帳簿から修正します。

実際に回収が遅れている場合は、取引の根拠や入金予定を整理し、回収可能性を確認してください。

会計上、回収不能と判断した売掛金は、貸倒損失として処理することを検討します。
税務上の損金算入要件を満たさない場合は、法人税の計算時に調整します。

税務上の貸倒損失には、債権切捨てや全額回収不能などの条件があり、長期間入金がないという理由だけで、当然に損金算入できるわけではありません。

売掛金(未収入金)の内訳書に記載されている残高について、取引の根拠、残っている理由、今後の回収方針を説明できる状態にしておくことが大切です。

回収不能と考えられる売掛金がある場合は、決算書だけを優先して形式的に貸倒処理するのではなく、会計上の判断と税務上の取扱いを分けて整理しましょう。

売掛金や未収入金が長期間残っている場合は、まず発生日や入金履歴、取引の根拠を確認し、今後も回収できる債権なのかを整理する必要があります。

会計上、回収不能と判断される売掛金については、貸倒損失として処理することを検討します。ただし、会計上の貸倒損失が、そのまま法人税の計算でも損金として認められるとは限りません。決算書に会社の実態を反映しながら、税務上の要件に応じて申告調整することが大切です。

当事務所では、確認したい範囲に応じて、次のサービスをご用意しています。

  • メール相談
    長期間残っている売掛金について、会計上の貸倒処理や法人税申告での取扱いを個別に確認したい方
  • 個別コンサルティング
    売掛金や未収入金の発生原因、入金履歴、回収可能性を整理し、帳簿を修正する残高、回収を続ける残高、貸倒処理を検討する残高に分けて確認したい方
  • 税務顧問
    毎月の売掛金残高や入金状況を確認しながら、長期滞留債権の回収管理、決算時の会計処理、法人税申告まで継続的に見直したい方

勘定科目内訳明細書に記載される売掛金は、取引の根拠や残っている理由、今後の回収方針を説明できる状態にしておくことが重要です。

何年も動いていない売掛金や、発生原因を説明できない未収入金がある場合は、前年と同じ残高を繰り越す前にご相談ください。


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