買掛金・未払金・未払費用の内訳書を確認するときに、合計額だけを見て終わっていないでしょうか。

内訳書には、相手先ごとの残高が記載されています。
残高の大きい相手先について、いつ、いくら支払うのか、その後に現預金がいくら残るのかまで見れば、決算後の資金需要を把握できます。

また、買掛金の相手先を前期と比較すると、特定の仕入先に取引が集中していないかも見えてきます。
1社からの仕入れが大きくなっている場合は、仕入価格や支払条件だけでなく、その仕入先から商品を仕入れられなくなった場合の影響も考えておきたいところです。

ただし、買掛金残高が大きいだけで、仕入れが1社へ偏っているとは断定できません。
決算直前の仕入れや支払条件によっても残高は変わるため、仕入先別の年間の仕入高とあわせて判断します。

買掛金・未払金・未払費用は、月次で支払予定まで把握し、決算時には帳簿と内訳書が合っているかを確かめるのが理想です。
内容を確認することで、決算後に初めて資金不足へ気付く状態から、数か月先の現預金を見通せる状態へ変えていくことが可能です。

この記事の要点
  • 買掛金・未払金・未払費用は、今後出ていくお金として見る
  • 内訳書の相手先と期末現在高から、支払予定を洗い出す
  • 買掛金の前期比較から、特定の仕入先へ残高が集中していないかを見る
  • 支払予定と入金予定を日付順に並べる
  • すべての支払いを終えた後に残る現預金を計算する
  • 資金不足が見込まれる場合は、決算を待たずに対応を検討する

買掛金(未払金・未払費用)の内訳書は、勘定科目内訳明細書の一つです。
勘定科目内訳明細書の全体像は、次の記事でまとめています。

買掛金・未払金の内訳書から今後の支払いを読む

貸借対照表には、決算日時点の買掛金や未払金の合計額が表示されています。

一方、「買掛金(未払金・未払費用)の内訳書」では、主に次の内容を確認できます。

  • 科目
  • 相手先名称
  • 所在地
  • 期末現在高
  • 摘要

未払金については、摘要欄に取引内容を記載することととなっています。

もし、貸借対照表に買掛金1,000万円と記載されていても、合計額だけでは支払先や支払時期が分かりません

内訳書の相手先ごとの残高を見れば、取引先ごとに支払時期が決まっていれば、翌月に支払う会社や翌々月以降に支払う会社などにわけられます。

同じ買掛金1,000万円でも、翌月に1,000万円を一気に支払う場合と、数か月にわけて支払う場合では、必要となる手元資金が異なります。

一般的には、売上が増えれば、それに伴い仕入量が増えるため、買掛金が多いこと自体を直ちに問題と考える必要はありません。

問題なのは、「約束した日に買掛金を支払った後も、会社を動かす十分な現預金が会社に残っているか」です。

内訳書を資金繰りに生かすには、この視点が欠かせません。

内訳書の相手先ごとに支払日を書き出す

内訳書には期末現在高が記載されていますが、通常は、支払日までは載っていません。

資金繰りを確認するときは、内訳書に記載された相手先ごとに支払日の情報を加えます。

その際には、支払日と金額を書き出した支払予定表を作成するのがおすすめです。

買掛金は仕入先への支払日を見る

買掛金には、商品や材料など、本来の営業取引から生じた未払額が計上されています。

内訳書に記載された仕入先について、締め日と支払日を調べます。

月末締め翌月末払いであれば、決算日の翌月に支払いが発生します。
また、20日締め翌月10日払いであれば、決算から間を置かずに支払代金が必要となる場合もあります。

残高の大きい仕入先については、前期の内訳書とも比べます。
当期の残高が増えている場合に考えられる主な理由は、次のとおりです。

  • 仕入れが増えた
  • 決算前にまとめて購入した
  • 支払条件が変わった
  • 支払いが予定より遅れている

仕入れの増加に伴って買掛金も増えたのであれば、事業規模の拡大が原因かもしれません。

仕入高が大きく変わっていないにもかかわらず、買掛金だけが増えている場合は、支払条件や実際の支払状況に変化があったかを調べます。

仕入先への支払いが遅れれば、通帳には一時的に預金が残ります。

しかし、その預金には仕入先への支払いという使い道があるため、設備投資や借入金返済へ自由に回せる資金とは限りません。

買掛金の推移から仕入先の偏りを見る

前期と当期の内訳書を並べることで、買掛金が特定の仕入先へ集中しているかも確認できます。

たとえば、買掛金の大部分を一社が占め、その割合が前期よりも高くなっている場合は、一社からの仕入依存度が増えている可能性があります。

なお、買掛金の割合を確認する際は、次の要因によっても割合が増減することも考慮します。

  • 決算日前後の仕入時期
  • 仕入先ごとの締日
  • 支払サイト
  • 一時的な大量購入

月間の仕入額が同じでも、支払サイトが長い仕入先は、決算日の買掛金残高が大きくなりやすく、取引量が多くても、現金払いや支払サイト短ければ、期末残高は小さくなります。

仕入先の偏りを見るときは、内訳書と仕入先別の仕入高を並べます。

見る項目は、次の三つです。

  1. 前期と当期の買掛金残高
  2. 当期の仕入先別仕入高
  3. 仕入先ごとの支払条件

買掛金残高だけでなく、年間の仕入高も特定の相手先へ集中している場合は、仕入先構成を検討するきっかけになります。

複数の仕入先から同じ商品や材料を調達できるのであれば、価格や支払条件を比較する材料にもなります。
また、一社からの仕入れに依存している場合は、取引先の事情により仕入れが止まったときの影響も大きくなります。

未払金は摘要欄から取引内容をたどる

未払金には、商品や材料の仕入れ以外から生じた未払額が計上されます。

中小企業では、次のような取引が未払金として残ることがあります。

  • 設備や備品の購入代金
  • 建物や機械の修繕代金
  • 専門家への報酬
  • 広告やシステムの導入費用

内訳書の相手先名と金額だけでは、支払時期を判断できないため、摘要欄の取引内容をを読み、それでも内容が分からなければ、総勘定元帳や請求書までたどります。

もし、300万円の未払金があった場合でも、一括払いと分割払いでは、預金への影響が異なります。

特に、設備や大規模な修繕に関する未払金は、金額が大きくなりやすい項目です。
未払金の支払日と支払額を確認して、資金繰りへ反映させます。

また、内訳書には載っているものの、社内の支払予定には入っていない未払金が見つかることもあります。
その場合は、現在の現預金で予定どおり支払えるかを検討します。

未払費用は翌期の支払いへつなげる

未払費用には、すでにサービスの提供を受けているものの、決算日時点では支払っていない費用が計上されます。

主な例は次のとおりです。

  • 給与
  • 社会保険料
  • 地代家賃
  • 借入金利息

毎月ほぼ同じ金額が発生する費用は、翌期の支払いも予測しやすいでしょう。

一方、決算時にまとめて計上した費用や、年に数回しか発生しない費用は、通常の支払予定から漏れやすくなります。

支払予定を日付順に並べる

相手先と取引内容を把握したら、内訳書の残高を支払予定へ置き換えます。

一覧にする項目は、次の三つです。

  1. 相手先
  2. 支払予定日
  3. 支払金額

支払いが多い場合は、期間を分けると資金需要をつかみやすくなります。

  • 決算後1か月以内
  • 決算後2か月以内
  • 決算後3か月目以降

内訳書の合計額を一つの数字として見るだけでは、支払いが集中する時期を把握できません。

買掛金1,000万円のうち、翌月に800万円を支払うのであれば、少なくとも翌月までに800万円を準備する必要があります。

今後の支払予定を把握することで、決算後の資金繰りを早期に確認することができます。

支払予定と使える現預金を比べる

支払予定を日付順に並べたら、現在の現預金と比べます。

たとえば、翌月末までに次の支払いが予定されているとします。

  • 買掛金  600万円
  • 未払金  200万円
  • 未払費用 100万円

合計は900万円です。

預金残高が1,000万円であれば、900万円を支払えるように見えます。

しかし、決算後には法人税や消費税の支払などの事業支出も発生します。

買掛金などの支払いが900万円、法人税や消費税などの支払いが300万円なら、必要な資金は合計1,200万円です。
預金残高が1,000万円であれば、200万円不足します。

内訳書の残高と預金残高を比べるだけでは、資金繰りは判断できません。

入金予定は金額だけでなく入金日を見る

得意先からの入金予定があれば、資金繰りへ加えます。

ただし、月内に入金される予定でも、月内のすべての支払いに使えるとは限りません。

25日に600万円を支払い、月末に500万円が入金される場合、月末の預金残高だけを見ても、25日時点では資金不足となります。

入金予定について見る項目は、次のとおりです。

  • 入金予定日
  • 入金予定額
  • 過去の入金状況

帳簿に売掛金が載っていても、予定日に入金されるとは限りません。
過去に入金が遅れている得意先については、予定どおりの入金を前提にしない方が安全です。

入金と支払いを日付順に並べ、途中で現預金が不足する日がないかを見ます。

預金残高の全額が支払いに使えるとは限らない

通帳に1,000万円あっても、全額を仕入代金へ回せるとは限りません。

近いうちに給与や税金の引き落としがあれば、その資金を残す必要があります。
口座振替が予定されている金額も、すでに使い道が決まっています。

定期預金については、普通預金と同じように動かせるとは限りません。
解約できるか、金融機関との取引上どのような位置付けとなっているかを踏まえ、資金繰りに含める金額を判断します。

見るべき数字は、内訳書を確認した時点の預金残高ではありません。

予定された支払いを終えた後、会社にいくら残るのか。

現預金は、支払後の残高で見ます。

現預金が不足する時期を早めに把握する

支払予定と現預金を並べた結果、資金不足が見込まれる場合は、不足額と不足時期を明らかにします。

「資金繰りが厳しい」という感覚だけでは、具体的な対応を決められません。

数字にする項目は、次の3つです。

  1. 不足する金額
  2. 不足する時期
  3. 一時的な不足か、毎月続く不足か

一時的な不足であれば、売掛金の入金日と買掛金の支払日のずれが原因かもしれません。

毎月不足する場合は、入出金の時期だけでなく、利益や借入金返済を含めた資金繰りの見直しが必要です。

不足額と時期が分かれば、税理士や金融機関へ相談するときも、必要な資金を具体的に説明できます。

融資の相談は支払直前を避ける

融資が必要になりそうな場合、決算書の完成を待ってから相談を始めると、支払予定に間に合わない可能性があります。

大口の仕入れや設備購入が決まり、まとまった支払いが分かった時点で、月次試算表と支払予定を準備します。

金融機関へ相談しても、希望する金額を希望日までに借りられるとは限りません。
必要書類の準備や審査にも時間がかかります。

支払直前に不足へ気付くより、数か月先の現預金を見通せる方が、検討できる対応は増えます。

資金繰りは、現預金が不足した後の対処ではなく、不足する時期を事前に見つけるための管理です。

決算では月次管理と内訳書を合わせる

買掛金・未払金・未払費用は、決算時だけ見る数字ではありません。

日常的な管理は、次の順番で行います。

買掛金等の日常管理
  1. 月次で買掛金・未払金・未払費用の残高を見る
  2. 相手先ごとの支払日と金額を支払予定へ入れる
  3. 支払後の現預金を計算する
  4. 決算時に帳簿と内訳書を照合する

買掛金については、前期と当期の相手先別残高も並べます。
特定の仕入先への残高集中が続いている場合は、仕入高や支払条件まで確認します。

決算時に内訳書を作成してから初めて未払額を把握する状態では、資金繰りへの対応が遅れます。

今回、内訳書を見て初めて支払予定を作った場合は、翌月以降も一覧を更新します。
次回の決算では、月次で管理してきた残高と内訳書が合っているかを確かめられます。

内訳書を作ってから資金繰りを考えるのではなく、毎月管理している支払予定が、決算時の内訳書にも正しく反映されている状態が望ましい形です。

未払配当金・未払役員賞与も支払予定へ加える

買掛金・未払金・未払費用の内訳書には、未払配当金と未払役員賞与を記載する欄もあります。
いずれも、今後会社から現金が出ていく予定です。

配当や役員賞与を決めたことだけで、会社に十分な資金があるとは判断できません。

利益剰余金があっても、同額の現預金が残っているとは限らないためです。
配当や役員賞与を支払った後も、仕入代金や給与、税金に必要な資金が残るかを見ます。

未払役員賞与について、事前確定届出給与としている場合には、届出書と実際の支給予定を照合します。

見る項目は、主に次の2つです。

  • 支給日
  • 支給額

届出書に記載した支給日や金額と実際の支給内容が異なる場合は、損金算入に影響する可能性があります。
支給前に税務上の取扱いを確認しましょう。

資金繰りの面では、届出どおりの時期に支給しても事業資金が残るかを、ほかの支払予定と合わせて判断します。

前期から残る未払金の内容を確かめる

支払予定を整理したら、内訳書と帳簿も照合します。

最初に、内訳書の合計額と貸借対照表の残高を科目ごとに比べます。

  • 買掛金
  • 未払金
  • 未払費用

合計額が一致していても、相手先別の残高が正しいとは限りません。

特に注意したいのは、次のような残高です。

  • 支払済みなのに帳簿へ残っている
  • 同じ相手先が複数の名称で登録されている
  • 相手先名が「その他」にまとめられている
  • 摘要を読んでも取引内容が分からない
  • 前期から同じ金額が残っている

前期と同じ未払金が残っている場合は、請求書や契約書、支払記録まで戻ります。

支払済みであるにもかかわらず、帳簿上の未払残高だけが残っている場合もあります。
相手先と自社で、残高の認識が食い違っている可能性も考えられます。

内容の分からない残高を毎年繰り越すと、本当に支払うべき金額を把握できません。

内訳書と帳簿を合わせる目的は、申告書の数字を整えることだけではありません。

今後、本当に支払う金額を明らかにすることが、正確な資金繰りにつながります。

まとめ|自社の内訳書で4つの数字を見る

自社の「買掛金(未払金・未払費用)の内訳書」を開いたら、残高の大きい相手先から次の4つの数字を並べます。

  1. 相手先ごとの期末現在高
  2. 近いうちに支払う金額
  3. 支払いに使える現預金
  4. すべて支払った後に残る現預金

買掛金については、前期の内訳書も確認します。

特定の仕入先だけ残高が大きく増えている場合は、仕入先別の仕入高と支払条件も併せて見ます。
取引量の増加によるものか、支払サイトの違いによるものかを切り分けるためです。

次に、内訳書の相手先ごとに支払日を確認します。
現在の預金残高と今後の入金予定を日付順に並べ、給与や税金などの予定支出も加えます。

ここまで行うと、次の2点が見えてきます。

  • 支払いが集中して現預金が不足する時期
  • 買掛金残高が特定の仕入先へ集中している状況

現預金の不足が見込まれる場合は、支払直前になってから対応するのではなく、月次試算表と支払予定を基に、税理士や金融機関へ早めに相談する必要があります。

仕入先への集中が見られる場合は、仕入価格や支払条件を比較できる余地があるか、一社から仕入れられなくなった場合に代替先があるかを、経営判断として検討します。

約束どおりに支払った後、会社を動かす資金がいくら残るか。
そして、その支払いが特定の仕入先へ集中していないかは今後の経営方針を決定するうえで重要な情報だと言えます。

買掛金・未払金・未払費用は、内訳書に数字を記載して終わりではありません。

相手先ごとの残高に支払日を加え、給与や税金などの予定支出も含めて、支払後に現預金がいくら残るかを確認する必要があります。

前期と比べて買掛金が増えている場合は、仕入れの増加によるものか、支払条件の変更や支払いの遅れによるものかを分けて見ておきたいところです。
特定の仕入先に買掛金が集中している場合には、仕入先別の仕入高や支払条件も並べると、取引の偏りを把握する手掛かりになります。

内訳書と帳簿の残高が合わない場合や、支払後の現預金が不足する場合は、法人税申告書を作成する前に状況を整理することが大切です。

当事務所では、確認したい範囲に応じて、次のサービスをご用意しています。

  • メール相談
    買掛金や未払金の残高、未払役員賞与の税務処理など、一つの論点に絞って確認したい方
  • 個別コンサルティング
    内訳書、月次試算表、支払予定、預金残高など、複数の資料を確認しながら、支払後の現預金や必要となる資金を整理したい方
  • 税務顧問
    買掛金・未払金・未払費用を月次で把握し、支払予定、現預金、借入金をあわせて継続的に確認したい方

内訳書に載っている支払予定が社内で把握できていない場合や、支払後の現預金が不足する場合、前期から内容の分からない未払金が残っている場合は、ご相談ください。


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