固定資産の内訳書を開いたとき、土地や建物の金額だけを見ておわっていないでしょうか。
土地については、記載された所在地から、どの土地なのか分かる状態にしておきたいところです。
銀行へ融資を相談する場面では、土地の所在地だけでなく、地番や所有者、担保の設定状況なども確認されます。
建物についても、内訳書に載っているだけでは十分ではありません。
本社や工場を長く使っている会社では、大規模修繕や建替えでまとまった資金が必要になる時期も来ます。
固定資産の内訳書は、土地と建物の残高を記載するだけの資料ではなく、不動産の現状と今後の支出を考える資料になります。
- 土地の所在地は、登記上の地番と結び付けておく
- 会社所有の土地か、借りている土地かを確かめる
- 内訳書の期末現在高と、土地の担保価値は分けて考える
- 建物の修繕や建替えは、早めに資金計画へ反映する
固定資産の内訳書は、勘定科目内訳明細書の一つです。
勘定科目内訳明細書の全体像は、次の記事でまとめています。
固定資産の内訳書から土地と建物を見直す

固定資産の内訳書には、土地、土地の上に存する権利、建物について、主に次の内容が記載されています。
- 種類・構造
- 用途
- 面積
- 物件の所在地
- 期末現在高
- 期中に取得または処分した内容
土地や建物に動きがなければ、前年の内訳書を見ながら当期分を作ることも多いでしょう。
ただし、前年と同じ数字が載っているからといって、何も見る必要がないわけではありません。
本社の所在地は書かれているものの、登記上のどの土地に当たるのか分からない。
会社所有だと思っていた敷地が、代表者個人の名義になっていた。
倉庫として記載された建物を、現在は別の用途で使っている。
毎年同じ内容を転記していると、内訳書と実際の状況が少しずつ離れていくことがあります。
そこで、内訳書を開いたら、最初に所在地と用途を見てみます。
所在地を見て、どの場所の土地や建物かが思い浮かぶでしょうか。
また、記載されている用途は現在の使い方と合っているでしょうか。
経営者自身が説明できない物件があれば、内訳書から関係資料をたどる必要があります。
土地の所在地を地番と結び付ける

住所と地番が異なることがある
土地について、普段使っている住所と、不動産登記で土地を特定する地番は、同じとは限りません。
郵便物や名刺には、通常は住居表示を使います。
一方、土地の登記事項証明書を取得するときは、登記上の地番が必要です。
本社の住所を知っていても、敷地が登記上のどの土地に当たるのか、すぐには分からない場合があります。
また、工場や倉庫などの広い敷地では、複数の土地に分かれていることもあります。
固定資産の内訳書の「物件の所在地」欄について、地番の記載が一律に求められているわけではありません。
それでも、土地の所在地は、登記上の地番がわかる形にしておく方が実務では役立ちます。
複数の土地があり、内訳書だけでは分かりにくい場合は、所在地と地番の対応表を別に作ってもよいでしょう。
大切なのは、内訳書に書かれた所在地から、登記事項証明書に記載された土地を特定できることです。
地番がわかると銀行へ資料を出しやすい
銀行から土地に関する資料を求められたとき、地番がわからなければ、どの登記事項証明書を用意すればよいのか迷います。
内訳書の所在地と地番が結び付いていれば、説明の対象となる土地をすぐに特定できます。
複数の土地を持っている会社では、土地ごとに所在地、地番、面積、用途を整理しておくと便利です。
本社の敷地なのか、工場用地なのか、現在使っていない土地なのかもわかりやすくなります。
内訳書の所在地を見ても土地が思い浮かばない場合は、登記事項証明書や固定資産税の資料を見ながら、所在地と地番を結び付けておきましょう。
会社所有の土地か借地かを確かめる

長く使っていても会社の土地とは限らない
事業で何年も使っている土地だからといって、会社が所有しているとは限りません。
下記のように、土地と建物の名義が異なるケースがあります。
- 土地と建物の両方を会社が所有している
- 代表者個人の土地に、会社所有の建物が建っている
- 第三者から土地を借り、会社が建物を所有している
貸借対照表に「土地」が計上されていれば、帳簿上は会社が保有する土地として処理されています。
しかし、帳簿に土地が載っているだけでは、登記上の所有者まで確認できません。
また、過去に借地権を土地として計上している可能性もあります。
そのため、会社名義かどうかは、登記事項証明書で確かめます。
反対に、貸借対照表に土地が載っていなくても、会社が事業用地を使っている場合があります。
第三者から借りているのか、代表者個人の土地を使っているのかは、契約書や登記を見なければ分かりません。
土地を使っていることと、会社が土地を所有していることは別の話です。
借りている土地は契約内容まで見る
固定資産の内訳書の正式名称には、「土地の上に存する権利」という言葉が使われています。
内訳書には、土地のほかに借地権なども記載します。
土地の上に存する権利を確認するときにまず見たいのは、次の内容です。
- 土地の所有者
- 会社が土地を使う根拠となる契約
- 契約期間
- 更新条件
土地を借りていても、借地に関する権利が必ず貸借対照表に資産計上されるとは限りません。
貸借対照表に借地権が載っていないという理由だけで、自社所有の土地だと考えないようにします。
賃貸借契約書を開き、誰から、どの土地を、どのような条件で借りているのかを確かめます。
融資を申し込む前に名義を把握する
会社所有の土地と借地では、銀行へ出す資料や説明する内容が変わります。
会社所有の土地であれば、登記事項証明書から所有者や抵当権などの登記内容を確認できます。
第三者から土地を借りている場合は、賃貸借契約書も必要になるでしょう。
代表者個人の土地を会社が使っている場合には、利用条件や地代の支払いについて説明を求められる可能性があります。
融資の相談を始めてから名義や契約書を調べると、書類の準備に時間がかかります。
決算時に土地の情報を整理しておけば、銀行からたずねられたときも説明しやすくなります。
内訳書の期末現在高は担保価値ではない

固定資産の内訳書に記載される期末現在高は、会計帳簿上の金額です。
土地は通常、取得したときの金額を基に帳簿へ計上されます。
周辺の土地価格が変わっても、内訳書の期末現在高が同じように動くわけではありません。
何十年も前に購入した土地では、帳簿価額と現在の価値に差が生じている場合があります。
内訳書の金額を、そのまま融資に使える金額だと考えることはできません。
金融機関が土地を見る際は、帳簿価額だけでなく、土地を特定する情報や登記内容も確認します。
- 所在地と地番
- 面積
- 地目
- 登記上の所有者
- 抵当権などの登記内容
具体的な評価方法は、金融機関によって異なります。
会社が帳簿価額を見て、同じ金額で評価されると決めつけるのは避けた方がよいでしょう。
内訳書は、担保価値を計算する資料ではありません。
会社が持つ土地を特定し、銀行へ説明する資料につなげるために使います。
建物の取得時期から将来の支出を考える

帳簿価額だけでは建物の今後は分からない
固定資産の内訳書には、本社や工場などの建物も記載されています。
建物の期末現在高が少なくなっていても、建物が使えないとは限りません。
減価償却が進み、帳簿価額が少なくなった後も、事業に使い続けている建物はあります。
反対に、帳簿価額が残っていても、現在は使っていない建物があるかもしれません。
取り壊した建物が、固定資産台帳に残っている可能性もあります。
内訳書を見たら、まず建物の所在地と用途を、現在の利用状況と比べます。
次に、固定資産台帳から、いつ取得した建物なのかを調べます。
長く使っている本社や工場であれば、過去に大きな修繕を行った時期も振り返ってみましょう。
所在地と用途を見て、本社や工場など、どの建物が記載されているのかを確かめます。
建物を取得してから何年経過しているのかを確認し、長く使っている建物を把握します。
前回の大規模修繕からどの程度経過しているのか、請求書や工事記録を見直します。
現在の場所で事業を続ける予定と照らし合わせ、修繕や建替えに備える時期を考えます。
内訳書だけで、修繕や建替えの時期を決めることはできません。
それでも、将来の支出を考えた方がよい建物を見つけるのに有効な資料にはなります。
修繕か建替えかで必要な資金は変わる
長く使っている本社や工場は、いずれ大きな修繕が必要になります。
建物を今後も使い続けるのか、建替えを考えるのかによって、支出の規模も時期も変わります。
建物の情報を見ながら、次の点を考えてみてください。
- 今後も同じ場所で事業を続ける予定か?
- 前回の大規模修繕から何年経過しているか?
- 修繕や建替えの予定が経営計画に入っているか?
- 将来の支出に備えて資金を残せているか?
計画がまだ固まっていなくても、「数年以内にまとまった支出がありそうだ」と分かれば、資金繰りの見方が変わります。
利益が出ているかどうかだけでなく、数年先に必要となる資金を会社へ残せているのかも重要です。
予定時期と概算額を資金繰りへ入れる
修繕や建替えの内容が決まってから資金調達を考え始めると、希望する時期に工事を進められない場合があります。
長く使っている建物があるなら、正確な見積額が出る前でも、予定時期と概算額を資金繰りへ入れてみます。
たとえば、3年後に大規模修繕を見込むなら、次の点を確認します。
- 現在の現預金でいくら支払えるか?
- 3年間でいくら資金を残す必要があるか?
- 不足分を借り入れで準備するか?
- 現在の返済と新たな返済を両立できるか?
毎年の利益をすべて別の投資や借入金の返済に回していれば、工事の時期に資金が足りなくなるかもしれません。
予定を早めに資金繰りへ入れておけば、使える自己資金と必要な借入額が見えてきます。
銀行へ相談する時期も決めやすくなるでしょう。
建物の情報は、過去にいくらで取得したかを見るだけでなく、今後いくらの資金が必要になるかを考えるためにも使えます。
内訳書と関連資料の内容をつなげる

固定資産の内訳書を開いたら、登記事項証明書と固定資産台帳も手元に置いて、同じ土地や建物について、情報がつながっているかを見ます。
- 内訳書の所在地から、登記上の地番が分かるか?
- 内訳書の期末現在高と、固定資産台帳の残高が合っているか?
- 登記上の所有者と、会社が認識している所有者が同じか?
- 建物の用途が、現在の使い方と合っているか?
土地を借りている場合や、代表者個人の土地を使っている場合は、契約書も確認します。
資料を確認するときには、内訳書を見ても説明できない土地や建物を探します。
所在地を見ても物件が分からない。
所有者を答えられない。
建物が現在も使われているか分からない。
該当する物件があれば、登記事項証明書や固定資産台帳へ戻ります。
説明できない物件から順番に確認する方が、無理なく進められます。
固定資産の内訳書を閉じる前に確認すること

決算時に固定資産の内訳書を開いたら、次の4点を見てください。
- 土地を地番までたどれるか
所在地だけでは土地を特定できない場合、登記事項証明書や固定資産税の資料と結び付けます。 - 土地と建物の所有者を説明できるか
会社名義なのか、代表者個人や第三者の名義なのかを確かめます。
借りている土地は、契約内容も見ます。 - 帳簿価額を担保価値だと思っていないか
内訳書の期末現在高は帳簿上の金額です。
融資に使える金額を示しているわけではありません。 - 建物の将来支出を見込んでいるか
長く使っている本社や工場について、取得時期や修繕履歴を振り返ります。
まとまった支出が予想される場合は、資金繰りへ入れます。
まとめ|決算の数字を融資と将来の支出につなげる
固定資産の内訳書は、法人税申告書へ添付して終わる資料ではありません。
土地については、どこにあり、誰が所有しているのかを説明できる状態にします。
建物については、今後も使い続けるのか、修繕や建替えに向けて資金を準備する必要があるのかを考えます。
内訳書だけで、土地の担保価値や建物の将来まで分かるわけではありません。
しかし、内訳書には、会社が持っている土地や建物が並んでいまることから、所在地や用途を見ることで、登記や契約を確認した方がよい物件、将来の支出を考えた方がよい建物が見つかります。
所在地を見ても物件が分からない。土地の所有者を答えられない。
長く使っている建物があるのに、修繕や建替えの資金を考えていない。
1つでも当てはまれば、内訳書から関係資料をたどってみてください。
土地と建物の数字を実際の物件と結び付け、融資と将来の資金繰りへ生かす。
固定資産の内訳書を見直す意味は、記載された数字の先にあります。
固定資産の内訳書に記載された土地や建物は、所在地や帳簿価額を確認するだけでは十分ではありません。土地については、登記上の地番や所有者、借地の場合の契約内容まで把握しておく必要があります。
建物については、取得時期や過去の修繕状況を確認し、今後も使い続けるのか、修繕や建替えに備えるのかを考えます。
土地と建物の情報を実際の物件と結び付け、融資時の説明や将来の資金計画に生かすことが大切です。
当事務所では、確認したい範囲に応じて、次のサービスをご用意しています。
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所在地を見ても物件を特定できない場合や、会社所有の土地と借地の区別が分からない場合、修繕・建替えの予定を資金繰りへ反映できていない場合は、ご相談ください。
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