仮払金・貸付金の内訳書を手元に用意したら、前期の内訳書と並べてみてください。
最初に見るのは、金額の大きさではありません。
前年と同じ相手先に、同じような金額が残っていないかを確認します。
前年から動いていない仮払金があれば、精算や振替が止まっているかもしれません。
役員貸付金を返済しているはずなのに残高が減っていなければ、期中に新たな貸付けが発生している可能性があります。
関係会社への貸付金も、前年と同じ利率を内訳書へ転記するだけでは不十分です。
契約書に利率が書かれていても、現在まで使い続ける理由があるとは限りません。
仮払金・貸付金の内訳書は、申告書に添付する数字をまとめるだけの資料ではありません。
会社から出ていったお金が何に使われ、いつ精算または返済されるのかを確認する資料です。
本記事では、経営者が自社の内訳書を見ながら、決算前に確認したいポイントを順番に解説します。
- 前期と当期の仮払金・貸付金の内訳書
- 仮払金・貸付金の総勘定元帳
- 役員や関係会社との貸付契約書
- 返済予定表と利息計算表
- 前期と当期の内訳書を比べ、動いていない残高を見つける
- 内容が確定した仮払金は、正しい勘定科目へ振り替える
- 役員貸付金は、返済額と追加貸付額を分けて見る
- 役員貸付金が残っている理由と返済計画を説明できるようにする
- 関係会社への貸付金は、契約利率を使い続ける根拠を確かめる
- 契約書、利息計算表、会計帳簿、内訳書の数字をそろえる
仮払金(前渡金)の内訳書/貸付金及び受取利息の内訳書は、勘定科目内訳明細書の一つです。
勘定科目内訳明細書の全体像は、次の記事でまとめています
前期と当期の内訳書を並べて見る

仮払金・前渡金の内訳書には、相手先、期末現在高、取引内容などを記載します。
貸付金及び受取利息の内訳書には、貸付先や期末現在高に加え、期中の受取利息額、利率、担保の内容などを記載する欄があります。
当期の内訳書を開いたら、前期から残っている相手先を探してください。
続いて、残高がどのように変わったかを見ます。
- 前年と同じ金額が残っている
- 残高が前年より増えている
- 新しい相手先が追加されている
- 返済予定だった貸付金が残っている
- 貸付利率が前年と同じになっている
同じ相手先や金額が残っているだけで、直ちに問題があるわけではありません。
ただし、動いていない理由は確かめておく必要があります。
気になる残高を見つけたら、内訳書だけで判断せず、総勘定元帳を開きましょう。
発生日や摘要を確認し、領収書、精算書、契約書などの資料と照らし合わせます。
前期と同じ相手先に、同じ金額が残っていたら、総勘定元帳で発生日を確認します。
数年間動いていない残高は、精算漏れや返済の遅れがないかを優先して調べてください。
前年から動いていない仮払金を見つける

仮払金の内訳書で前年から残っている金額を見つけたら、元帳の摘要と支出日を確認します。
たとえば、出張旅費として従業員へ渡したお金が残っている場合は、出張後の精算が終わっているかを調べます。
領収書や精算書がそろっているなら、実際に使用した金額を旅費交通費などへ振り替えます。
内容が確定した仮払金は正しい科目へ振り替える
総勘定元帳を開き、次のような仮払金が残っていないかを見てください。
- 精算書が提出されていない
- 領収書などの資料が不足している
- 支出内容が分かっているのに振り替えていない
- 同じ金額が数年間動いていない
- 役員の個人的な支出が含まれている
内容が分かっている金額を、仮払金として翌期へ持ち越す必要はありません。
一方、決算日でも支出内容が確定していなければ、仮払金が残る場合もあります。
残高を減らすために、根拠なく費用へ振り替える処理は避けなければなりません。
決算で目指すのは、仮払金を機械的にゼロにすることではありません。
内容が確定した金額を正しい勘定科目へ振り替え、残った金額について理由を説明できる状態にすることです。
残す仮払金には精算予定日を付ける
決算日でも仮払金を残すなら、「後で精算する」で終わらせず、予定日まで決めておきましょう。
内訳書に残る金額について、次の質問に答えられるかを確かめます。
- 誰に渡したお金か?
- 何のために渡したのか?
- いつ渡したのか?
- 精算に必要な資料はそろっているか?
- いつ精算する予定か?
答えられない項目があれば、担当者などへ確認してください。
決算までに精算できなくても、理由と予定日が分かれば、翌期に追跡できます。
予定日が決まっていなければ、翌年も同じ残高が残りやすくなります。
前年から残っている仮払金に印を付け、次のどちらで対応するかを決めます。
- 内容が確定しているため、決算までに正しい科目へ振り替える
- 内容が未確定のため、精算予定日を決めて翌期に追跡する
役員貸付金は返済額と追加貸付額を分けて見る

役員貸付金は、期首残高と期末残高を比べるだけでは、返済が進んでいるか判断できません。
期首残高が500万円、期末残高が480万円だったとします。
残高だけを見ると、20万円返済されたように見えるでしょう。
ところが、期中に120万円の返済を受ける一方で、新たに100万円を貸し付けていれば、実際に減った残高は20万円です。
決算では、次の数字を分けて見てください。
- 期首の貸付金残高
- 期中に受けた返済額
- 期中に発生した追加貸付額
- 期末の貸付金残高
役員貸付金を減らすには、返済を受けるだけでなく、新たな貸付けを発生させないことも必要です。
契約書より先に返済実績を見る
金銭消費貸借契約書があっても、契約どおり返済されているとは限りません。
最初に預金通帳や元帳を開き、実際の返済日と返済額を確認します。
その後で、契約書や返済予定表と照らし合わせてください。
- 返済期限を過ぎていないか?
- 予定どおり返済されているか?
- 返済が途中で止まっていないか?
- 期中に追加の貸付けが発生していないか?
- 契約どおり利息を受け取っているか?
契約書があっても、返済実績がなければ、貸付金を回収できる見通しは立ちません。
返済が遅れている場合は、遅れた理由を確認します。
そのうえで、役員報酬や生活費とのバランスを踏まえ、実行できる返済額になっているかを見直しましょう。
役員貸付金を増やした支出を特定する
追加貸付けが発生している場合は、役員貸付金の元帳から原因となった支出を探します。
役員の個人的な支払いを会社の預金やクレジットカードで決済しているなら、返済を続けても貸付金は減りにくくなります。
今後の増加を防ぐには、役員貸付金が発生した都度、経理担当者が内容を確認できるようにしておくことが大切です。
返済計画を作るだけでなく、新しい役員貸付金を発生させない方法まで決めてください。
役員貸付金が残っている理由を説明できるようにする

役員貸付金が残っていると、会社と経営者のお金が明確に分けられているか、金融機関から説明を求められる可能性があります。
経営者保証に関するガイドラインでは、経営者保証に依存しない融資に向けた対応の一つとして、法人と経営者との関係を明確に区分・分離することが示されています。
金融機関から確認されたときは、少なくとも次の内容を答えられるようにしておきましょう。
- 貸付けが発生した理由
- 現在の残高
- 毎月の返済額
- 返済が終わる予定時期
- 追加貸付けを防ぐ方法
ただし、役員貸付金を減らせば、経営者保証が必ず外れるわけではありません。
会社の財務内容や情報開示の状況なども含め、金融機関が総合的に判断します。
経営者保証を外すことだけを目的に、残高を減らすわけではありません。
会社のお金と経営者個人のお金を分け、会社の資金がどこにあるのかを明確にすることが本来の目的です。
役員貸付金の利率と受取利息を見る

役員貸付金では、元本の返済だけでなく、利息も確認します。
役員への無利息・低利貸付では、役員が受けた経済的利益について、給与として課税される場合があります。
国税庁は、会社が借入金を原資として役員や使用人へ貸し付けた場合には、その借入金の利率によって利息相当額を計算する取扱いを示しています。
契約書と帳簿を並べ、次の数字を比べてみましょう。
- 契約書に記載された利率
- 利息計算に使用した利率
- 帳簿に計上された受取利息
数字が合わない場合は、期中に利率を変更したのか、前年の計算表を使い続けているのか、利息の計上が漏れているのかを調べます。
役員への貸付けと、関係会社への貸付けでは、税務上の論点が異なります。
同じ利率を機械的にあてはめずに、貸付先に応じて検討しましょう。
関係会社への貸付利率を前年のまま使わない

関係会社への貸付金について、前年の内訳書から利率をそのまま転記していないでしょうか。
前年と同じ利率を使うこと自体が問題なのではありません。
同じ利率を現在も使用する理由を説明できないことが問題です。
最初に貸付契約書を開き、現在の契約利率と、利率を見直す条項があるかを確認します。
続いて、契約当初から次の条件が変わっていないかを見てください。
- 自社の資金調達コスト
- 貸付期間
- 返済条件
- 担保の有無
- 貸付先の状況
契約書に利率が書かれていても、その数字に合理的な根拠があるとは限りません。
貸付利率を毎年変更する必要はありませんが、同じ利率を使い続ける理由は、決算ごとに確かめておきましょう。
内訳書へ記載する利率は、前年の内訳書から写すのではなく、貸付契約書で確認します。
前年と同じ利率を使う場合も、現在の貸付条件に照らして説明できるかを確かめてください。
無利息・低利貸付の理由を資料に残す
関係会社への無利息・低利貸付では、本来受け取るべき利息との差額が、税務上、寄附金として取り扱われる可能性があります。
ただし、利率が低いという事実だけで、直ちに寄附金になるわけではありません。
合理的な再建計画に基づく支援など、無利息・低利貸付とする相当な理由がある場合には、取扱いが異なることもあります。
国税庁も、災害を受けた取引先の復旧支援として行われる無利息・低利融資について、支援に合理性がある場合の取扱いを示しています。
重要なのは、「何%なら問題がないか」を探すことではありません。
なぜ、その相手に、その条件で貸し付けたのかを説明できる資料を残すことです。
貸付けの目的や返済条件に加え、利率を決めた理由、無利息・低利とした事情、貸付先の返済見込みなどを整理しておきましょう。
事情を後から思い出して説明するのではなく、貸付時や条件を見直した時点で資料に残しておくことが大切です。
利率を見直すなら契約内容も変更する

現在の貸付条件に照らして契約利率が低く、利率を決めた根拠も説明できない場合は、今後の契約条件を見直します。
会計帳簿の受取利息だけを増やしても、貸付先との契約条件が自動的に変わるわけではありません。
利率を変更する場合は、貸付先と協議し、新しい利率や変更日を決めます。
変更後の利率で計算を始める日や、利率を変更した理由も書面に残してください。
期中に利率を変更すると、変更前後で受取利息の計算を分ける必要があります。
変更日が曖昧では、どの時点から新しい利率を使うのか判断できません。
契約内容の法的な判断が必要な場合は、弁護士などの専門家への確認も検討しましょう。
貸付金ごとに受取利息を再計算する

契約書の利率を確認したら、貸付金ごとに受取利息を計算します。
期中に追加貸付けや返済があれば、期末残高に年利率を掛けるだけでは正しい利息になりません。
利息計算表には、追加で貸し付けた日と金額、元本を返済した日と金額を反映します。
期中に利率を変更した場合は、変更前と変更後に期間を分けてください。
決算日までに受け取っていない利息があれば、未収利息を計上する必要がないかも検討します。
預金利息と貸付金利息を分ける
利息計算が終わったら、計算した金額と会計帳簿の受取利息を比べます。
会計帳簿の「受取利息」には、貸付金の利息だけでなく、銀行の預金利息が含まれている場合があります。
貸付金及び受取利息の内訳書に記載する際は、貸付金から生じた利息を切り分けてください。
内訳書には、貸付金の期末現在高だけでなく、期中の受取利息額と利率を記載する欄があります。
契約書・帳簿・内訳書の数字をそろえる

受取利息を計算したら、貸付契約書、利息計算表、会計帳簿、内訳書を並べてみましょう。
まず、契約書に記載された利率と、利息計算に使った利率を比べます。
数字が違っている場合は、期中に契約を変更していないか、前年の計算表をそのまま使っていないかを確認してください。
次に、利息計算表で求めた金額と、会計帳簿の受取利息を照らし合わせます。
貸付金利息と預金利息を分けた後、貸付金から生じた受取利息が内訳書へ正しく記載されているかを確認しましょう。
最後に、帳簿の貸付金残高と、内訳書の期末現在高を比べます。
数字が合わないときは内訳書だけを直さない
契約書、利息計算表、会計帳簿、内訳書で数字が違っていても、内訳書だけを帳簿に合わせるのは避けましょう。
貸付金の増減、利率の変更、利息の計上漏れなど、違いが生じた理由を調べてから決算を確定します。
気になる残高は決算を確定する前に整理する

前期と当期の内訳書を比べて、同じ仮払金が残っていたら、総勘定元帳で発生日を確認してください。
支出内容が分かっているなら、正しい勘定科目へ振り替えます。
まだ内容が確定していない場合は、誰が、いつまでに精算するのかを決めておきましょう。
役員貸付金については、残高だけでなく、期中の返済額と追加貸付額を分けて見ます。
毎月返済を受けているのに残高がほとんど減っていなければ、新たな貸付けが発生しているかもしれません。
返済予定表と実際の入金を比べ、計画どおりに進んでいるかを確かめます。
関係会社への貸付金では、契約書に記載された利率と、その利率を決めた根拠を確認します。
前年と同じ利率を使うこと自体が問題なのではありません。
ただし、自社の資金調達コストや貸付条件が変わっているにもかかわらず、理由なく同じ利率を使い続けている場合は、契約条件を見直す余地があります。
- 何のために支出したのか分からない仮払金
- 精算予定日が決まっていない仮払金
- 予定どおり返済されていない役員貸付金
- 返済を受けているのに減っていない役員貸付金
- 契約内容と実際の返済条件が違う貸付金
- 利率を決めた根拠が残っていない関係会社貸付金
- 利息計算表と帳簿の受取利息が合っていない貸付金
理由を説明できない残高があれば、内訳書を完成させる前に、数字の中身を整理してください。
決算までに、すべて解消できない残高もあります。
仮払金であれば、精算予定日を決めて翌期に追跡します。
役員貸付金であれば、実行できる返済計画を作り、追加の貸付けを防ぐ方法も考えなければなりません。
関係会社への貸付利率について判断に迷う場合は、利率だけを修正せず、貸付けの目的や契約条件を整理したうえで税理士へ相談しましょう。
まとめ
前期と当期の仮払金・貸付金の内訳書を並べてください。
最初に見るのは、前年と同じ相手先や金額です。
動いていない残高があれば、総勘定元帳で発生日と取引内容を調べます。
仮払金は、内容が確定した金額を正しい勘定科目へ振り替えます。
決算日でも残す金額には、精算予定日を付けてください。
役員貸付金は、返済額と追加貸付額を分けます。
返済を続けているのに残高が減っていなければ、新たな貸付けが発生していないかを確認しましょう。
関係会社への貸付金では、前年と同じ利率を使う理由があるかを確かめます。
利率を変更する場合は、受取利息の計算だけでなく、貸付先との契約内容にも反映させます。
内訳書を作って終わりにせず、内訳書から見つかった問題を決算までに整理することが大切です。
役員貸付金の返済計画、関係会社への無利息・低利貸付、貸付利率の変更は、個別の事情によって税務上の判断が異なります。
自社だけで判断しにくい残高がある場合は、決算を確定する前に専門家へ相談してください。
仮払金や貸付金は、内訳書に数字を記載して終わりではありません。
前年から動いていない仮払金がある場合は、支出内容や精算予定を確認する必要があります。
役員貸付金については、返済額と追加貸付額を分け、実際に残高が減っているかを見ておきましょう。
関係会社への貸付金では、契約書に利率が記載されていても、その利率を現在も使い続ける理由を説明できるとは限りません。
貸付条件や受取利息に不明な点がある場合は、法人税申告書を作成する前に整理することが大切です。
当事務所では、確認したい範囲に応じて、次のサービスをご用意しています。
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仮払金や役員貸付金を増やさない仕組みを整え、貸付金の返済状況や受取利息を毎月の会計・資金繰りとあわせて継続的に確認したい方
仮払金の内容を説明できない場合や、役員貸付金の返済が予定どおり進んでいない場合、関係会社への貸付利率に不安がある場合は、翌期へ持ち越す前にご相談ください。
当ブログに掲載している内容は、一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する専門的な助言を行うものではありません。
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