会社の現預金は、複数の金融機関へ均等に分ければよいわけではありません。

大切なのは、今後どの金融機関との取引を重視するのかを決め、その方針に合わせて預金を置くことです。

貸借対照表を見れば、決算日時点の「現金及び預金」の合計額は分かります。
しかし、どの金融機関に、いくら預けているのかまでは読み取れません。

現金及び預金が3,000万円ある会社でも、一つの金融機関にほぼ全額を置いている場合もあれば、複数の金融機関に分けている場合もあります。

金融機関ごとの預金残高を見るときに使えるのが、預貯金等の内訳書です。

内訳書に記載された残高を金融機関ごとにまとめると、メインバンクや、今後取引を広げたい金融機関に預金を寄せられているかが分かります。

現預金が特定の金融機関に偏っていても、それだけで問題とはいえません。
メインバンクや今後取引を広げたい金融機関に預金が集まっているなら、自社の財務方針に合った配分と考えられます。

一方、今後の融資や相談対応を期待できない金融機関へ、手数料の安さや預金金利の高さだけを理由に預金を寄せている場合は、配分を見直す余地があります。

普通預金と定期預金の違いにも注意が必要です。
特に借入先に預けている定期預金は、必要になったときに、普通預金と同じように動かせるとは限りません。

この記事の要点
  • 貸借対照表だけでは、現預金の置き先までは分からない
  • 預貯金等の内訳書から、金融機関ごとの預金残高を読み取れる
  • 複数の口座がある場合は、金融機関ごとに残高を合計する
  • 預金シェアが、自社の金融機関取引の方針と合っているかを見る
  • 借入先に預けている定期預金は、実務上動かしにくいことがある
  • 手数料や金利だけでなく、融資や相談対応も含めて預金先を考える

預貯金等の内訳書は、勘定科目内訳明細書の一つです。
勘定科目内訳明細書の全体像は、次の記事でまとめています。

貸借対照表だけでは現預金の置き先は分からない

貸借対照表には、会社が保有する現金や預金の合計額が表示されます。

一方、預貯金等の内訳書には、主に次の内容が記載されています。

  • 金融機関名
  • 預貯金の種類
  • 口座番号
  • 期末現在高
  • 口座名義などの補足事項

貸借対照表に「現金及び預金3,000万円」と表示されていても、その3,000万円がどこに置かれているのかは分かりません。

預貯金等の内訳書を見ると、たとえば次のような内訳が分かります。

  • A銀行:1,500万円
  • B信用金庫:900万円
  • C銀行:600万円

A銀行に50%、B信用金庫に30%、C銀行に20%を置いている計算です。

現預金の合計額だけを見ていると、会社にお金がいくらあるかは分かっても、どの金融機関との取引を重視しているのかまでは見えてきません。

現預金を見るときは、合計額だけでなく、金融機関ごとの内訳まで目を通してください。

預貯金等の内訳書から預金シェアを確認する

預貯金等の内訳書を財務に使うときは、記載された口座を上から順番に眺めるだけでは足りません。

同じ金融機関にある口座をまとめたうえで、預金総額に占める割合を出します。

金融機関ごとに期末残高を合計する

同じ金融機関に複数の口座がある場合は、それぞれの期末現在高を合計します。

A銀行に次の口座があるとしましょう。

A銀行内訳
  • 普通預金:1,000万円
  • 当座預金:500万円
  • 定期預金:300万円

A銀行に置いている預金の合計額は、1,800万円です。

口座別に見ると3つに分かれていますが、金融機関別に見れば、1,800万円すべてがA銀行に置かれています。

預金の種類が異なっていても、同じ金融機関の口座はいったんまとめましょう。

預金総額に占める割合を計算する

金融機関ごとの残高をまとめたら、預金総額に占める割合を計算します。

金融機関別の預金割合 = 各金融機関の預金残高 ÷ 預金総額 × 100

預金総額が3,000万円で、内訳が次のようになっていたとします。

A銀行1,500万円50%
B信用金庫900万円30%
C銀行600万円20%
合計3,000万円100%

割合まで出すと、A銀行に預金全体の半分を置いていることが分かります。

ただし、50%という数字だけを見て、「A銀行に偏りすぎている」と決めることはできません。

A銀行がメインバンクで、今後も融資や資金繰りを相談していく方針なら、預金シェアが高いのは自然です。

反対に、A銀行との取引を縮小する方針なのに、預金の半分を置いたままになっているなら、会社の方針と実際の配分が合っていません。

割合の大きさだけでなく、その預金シェアが自社の財務方針と一致しているかを見ます。

定期預金は普通預金と分けて見る

金融機関ごとの残高をまとめた後は、普通預金定期預金を分けて見ます。

普通預金や当座預金は、日常の入出金に使われることが多い預金です。

一方、定期預金は、必要なときに普通預金と同じように使えるとは限りません。

特に注意したいのが、借入先の金融機関に預けている定期預金です。

借入先の定期預金は動かしにくいことがある

会社が借入先の定期預金を解約しようとすると、金融機関から次のように受け止められることがあります。

金融機関

「手元のお金が足りなくなったのではないか?」
「資金繰りが厳しくなっているのではないか?」

会社としては、設備投資や納税など、予定していた支払いに使いたいだけかもしれません。

金融機関側から見ると、今まで置かれていた定期預金を取り崩す動きになるため、会社の資金繰りに何か変化があった可能性を考えます。

また、定期預金を解約して事業資金に使いたいと相談した際に、借入金の返済に充ててはどうかと提案される場合もあります。

借入金の返済に充てれば、借入金残高は減ります。
しかし、会社が日常の支払いや設備投資に使えるお金は増えません。

会社は運転資金へ回したいのに、借入金の返済を優先する話になれば、当初予定していた資金の使い方ができなくなります。

借入先の定期預金を解約すれば、必ず借入金への充当を提案されるわけではありません。

金融機関との取引状況や、定期預金を作った経緯によっても対応は異なります。

ただ、会社の資金繰りを見るときは、借入先の定期預金を普通預金と同じように考えない方がよいでしょう。

現預金の合計額だけで余裕を判断しない

貸借対照表では、普通預金も定期預金も「現金及び預金」に含まれます。

しかし、資金繰りを考えるときは、すべてを同じように使えるお金として見ない方が安全です。

現金及び預金が3,000万円ある会社で、そのうち1,000万円が借入先に預けている定期預金だったとします。

貸借対照表には3,000万円と表示されますが、日常の支払いに使えるお金が3,000万円あるとは限りません。

現預金の合計額だけで安心せず、必要なときに動かしやすいお金がいくらあるかも見ておきましょう。

預金シェアを自社の財務方針と照らし合わせる

一つの金融機関に預金が集中していること自体が、問題なのではありません。

見るべきなのは、金融機関ごとの預金シェアが、自社の取引方針と一致しているかです。

メインバンクとの取引を重視しているなら、メインバンクの預金シェアが高くなるのは自然です。

今後取引を広げたい金融機関がある場合も、日常の入出金を少しずつ移していけば、その金融機関の預金シェアは大きくなっていきます。

メインバンクには日常の取引を集める

メインバンクには、会社の日常的な取引が集まりやすくなります。

  • 売上代金の入金
  • 仕入代金や経費の支払い
  • 給与の振込み
  • 税金の納付
  • 借入金の返済

入出金をまとめれば、預金残高も自然と大きくなります。

メインバンクから継続的に融資を受け、資金繰りについても相談していく方針なら、日常の取引を寄せることには意味があります。

今後取引を広げたい金融機関へ日常取引を移す

新たに取引を広げたい金融機関があるなら、融資の相談だけでなく、預金や日常取引の配分も考えます。

たとえば、次のような取引を移す方法があります。

  • 売上代金の入金口座
  • 経費の支払口座
  • 給与の振込口座
  • 税金の納付口座

今後どの金融機関から資金調達したいのかを決めたうえで、日常の取引を少しずつ寄せていきます。

結果として、今後取引を広げたい金融機関の預金シェアも高くなっていくでしょう。

ただし、預金を置けば必ず融資を受けられるわけではありません。

預金シェアは、金融機関との取引を考える項目の一つです。
実際の融資審査では、会社の財務内容や返済状況なども見られます。

取引を続ける意味が薄い金融機関へ預金を寄せすぎない

金融機関によっては、次のようなメリットがあります。

  • 振込手数料が安い
  • 預金金利が高い
  • 店舗やATMが近い

使いやすさやコストも、金融機関を選ぶうえで無視できません。

ただし、今後の融資や相談対応を期待できない金融機関へ、目先のメリットだけで多額の預金を置くべきかは、別に考える必要があります。

振込手数料が安い金融機関を、決済専用として使う方法はあります。
その場合でも、決済に必要な金額を超えて預金を置くかどうかは、自社の財務方針に合わせて判断してください。

借入先と預金の置き先がずれていないかを見る

預金シェアが財務方針と合っているかを見る際は、借入先との関係にも目を通します。

金融機関ごとに、預金残高借入金残高を並べてみてください。

メインバンクや今後取引を広げたい金融機関と、預金の置き先が大きくずれていないかを確認してみましょう。

「預金割合と借入金割合を同じにしなければならない」というわけではありません。
また、預金を移せば必ず融資条件が良くなるわけでもないです。

今後資金調達を相談したい金融機関に、預金や日常取引を寄せられているかを見てください。

預貯金等の内訳書を翌期の資金管理に活かす

預貯金等の内訳書を見ると、決算日時点の預金が、どの金融機関に置かれているかが分かります。

決算時には、次の順番で見てみましょう。

決算時の確認ステップ
STEP1
金融機関ごとに預金残高を合計する

同じ金融機関に複数の口座がある場合は、支店や預金の種類が違っていても、いったん合計します。

STEP2
預金総額に占める割合を計算する

金融機関ごとの預金シェアを出して、現預金がどこに集まっているかを見ます。

STEP3
普通預金と定期預金を分ける

日常の支払いに使う預金と、必要なときにすぐ動かせない可能性がある預金を分けます

STEP4
借入先に預けている定期預金を把握する

借入先の定期預金は実務上動かしにくいことがあるため、金額と預け先を押さえておきます。

STEP5
重視する金融機関の預金シェアを見る

メインバンクや今後取引を広げたい金融機関に、日常取引や預金を寄せられているかを見ます。

STEP6
預金配分を自社の財務方針と照らし合わせる

今後の融資や相談対応を期待する金融機関と、実際の預金の置き先が合っているかを考えます。

見直しの目的は、複数の金融機関へ預金を均等に分けることではありません。

メインバンクや今後取引を広げたい金融機関を決め、その方針に合わせて預金を置くことが目的です。

一方、借入先に預けている定期預金は、解約を申し出た際に資金繰りを心配されたり、借入金の返済に充てることを提案されたりする場合があります。

現預金の合計額だけで安心せず、必要なときに動かしやすい資金がいくらあるかも見ておきましょう。

預貯金等の内訳書を申告書に添付して終わりにせず、自社が重視する金融機関と、実際の預金配分が合っているかを見るために使ってください。

預貯金等の内訳書を確認した結果、メインバンクの預金シェアが低い場合や、今後の融資や相談対応を期待していない金融機関に預金が偏っている場合は、現在の預金配分を見直す必要があります。
また、借入先に預けている定期預金は、必要なときに動かしにくいことがあるため、普通預金とは分けて資金繰りを考えることが大切です。
当事務所では、確認したい範囲に応じて、次のサービスをご用意しています。

  • メール相談
    特定の金融機関への預金の偏りや、借入先に預けている定期預金の見方について相談したい方
  • 個別コンサルティング
    金融機関ごとの預金残高や借入状況を確認し、今後重視する金融機関と預金配分をまとめて整理したい方
  • 税務顧問
    毎月の資金繰りや借入金の返済状況を確認しながら、金融機関との取引方針と預金配分を継続的に見直したい方

金融機関ごとの預金配分や、今後の資金調達方針でお困りの場合は、相談ください。


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