仮受金や預り金が決算書に記載されていたら、金額を見るだけではなく、どのようなのお金が、なぜ決算日に残っているのかまで把握しておきたいところです。
特に気になるのは、前期と当期の内訳書に、同じ相手先と同じ金額が並んでいる場合です。
預り金は、納付や返金を予定しているため、通常は決算後に残高が動きます。
何年も変化がなければ、過去の処理を詳しく調べないまま、同じ内容を繰り越している可能性があります。
仮受金についても、入金内容が判明するまで一時的に使う科目です。
決算をまたいで残っている場合は、売掛金の回収や前受金など、別の取引として処理すべき金額が含まれていないかを確認します。
科目名だけを見て判断せず、入金時の資料やその後のお金の動きまで確認することが大切です。
その確認の際に必要となる資料が、「仮受金(前受金・預り金)の内訳書」です。
前期と当期の内訳書を見比べると、金額が動いていない残高に気付きやすくなります。
そこから決算後の預金通帳や元帳までたどれば、納付や返金が済んでいるかも分かります。
仮受金や預り金を整理することにより、入金の実態を明らかにして、負債の中身を経営者が把握できるようになります。
- 仮受金は、入金内容が判明するまで一時的に使う勘定科目
- 預り金には、納付先や返還先がある
- 前期から金額が変わっていない残高は、発生時の資料までさかのぼる
- 決算後の通帳や元帳から、納付や返金の有無を調べる
- 入金内容が分かれば、取引の実態に合う勘定科目を検討する
- 内容不明の仮受金を、安易に雑収入へ振り替えない
仮受金(前受金・預り金)の内訳書は、勘定科目内訳明細書の一つです。
勘定科目内訳明細書の全体像は、次の記事でまとめています。
仮受金・預り金は決算日に残っている理由を見る

仮受金と預り金は、どちらも貸借対照表の負債に計上されます。
しかし、2つの科目が表している内容は異なります。
仮受金なら「何が原因で入金されたのか?」、預り金なら「何の目的で預かっているのか?」という違いを押さえておきましょう。
仮受金は入金内容が分かるまでの一時的な科目
仮受金は、入金があったものの、取引内容をすぐに判断できないときに使う勘定科目です。
取引先から振り込みがあっても、どの請求に対する入金か分からない場合があります。
経理処理をいったん進めるために仮受金へ計上し、内容が判明した段階で本来の科目へ振り替えます。
言い換えると、仮受金は入金の正体が分かるまでの仮の置き場所です。
決算時点で残高がある場合は、入金内容の確認がおわっていない可能性があります。
時間がたつほど、仮受金計上時の事情を覚えている人は少なくなり、請求書やメールも探しにくくなります。
また、調べても決算までに内容が判明しないこともあります。
その場合は、根拠のない科目へ振り替えるのではなく、どの資料を調べ、なにが分かったのかを記録しておきます。
預り金には納付先や返還先がある
預り金は、会社が自由に使えるお金ではありません。
会社以外の人が負担する金額を一時的に預かり、後で所定の相手へ支払う場合に使います。
よく見られる預り金の内容は、次のとおりです。
- 源泉所得税
- 住民税
- 社会保険料
- 雇用保険料
預り金の内訳を見るときは、預かった理由と、その後の支払先を対応させます。
決算日に残高があるからといって、処理が誤っているとは限りません。
決算後に納付する金額なら、期末時点で残っていても不自然ではないでしょう。
確認する必要があるのは、何に関する預り金かわからず、納付や返金の動きもないケースです。
名目上は預り金でも、実際には別の取引から生じた金額かもしれません。
前期と当期の内訳書から金額が動いていない行を探す

当期の内訳書だけでは、長く残っている金額なのか、当期に発生した金額なのかを判断できません。
前期と当期の「仮受金(前受金・預り金)の内訳書」を横に並べ、次の項目を見比べます。
- 科目
- 相手先
- 期末現在高
- 摘要
期末現在高は、決算日時点の残高です。
摘要には、入金の理由や取引内容が記載されています。
相手先を見比べた後、金額を見ていきます。
前期と当期で両方が一致している項目を確認しておくと、後から資料をたどりやすくなります。
同じ相手先と金額が続いている項目を見る
前期と当期の内訳書に、同じ相手先と同額の残高が並んでいたら、期中の元帳を確認してみてください。
一度納付や返金をした後、同じ金額が新たに発生していることもあります。
内訳書の数字が同じでも、前期から残ったままなのか、当期に改めて発生したのかによって意味は変わります。
前期と同額だからといって、必ず修正が必要になるわけではありません。
ここで区別したいのは、次の2つです。
- 前期から残ったままの金額
- 当期に改めて発生した金額
前期から繰り越している場合は、残高が続いている理由を調べます。
当期に発生した金額であれば、元となった取引と、決算後の予定を見ておきます。
摘要欄だけで分からなければ発生時の元帳へ戻る
摘要に「源泉所得税預り金」や「受注に伴う前受金」と書かれていれば、残高の内容をある程度読み取れます。
一方、次のような記載だけでは、入金の実態までは分かりません。
- 預り分
- 一時受入れ
- その他
- 前期繰越
- 詳細不明
摘要から手掛かりを得られないときは、勘定科目ごとの取引を記録した総勘定元帳を開きます。
残高が最初に発生した日を探し、同じ日の預金通帳や振込明細と照らし合わせてください。
請求書や契約書が残っていれば、入金との関係も確認しやすくなります。
数年前から続いている金額は、当期の資料を見ても分からないことがあります。
そのときは、最初に計上した事業年度まで戻り、入金当時の記録を探すことになります。
決算後の入出金から残高の行方を追う

内訳書に記載されているのは、決算日時点の金額です。
正常に残っているのか、処理が止まっているのかは、決算後の動きも見なければわかりません。
3月決算法人の預り金が3月末に残っていても、4月以降に予定どおり納付されていれば、金額の流れは自然です。
仮受金も、決算後に入金内容が判明し、売掛金や前受金などへ振り替えられていれば、取引の内容に沿って処理されたことが分かります。
納付や返金を通帳と元帳で追う
決算後の預金通帳を開き、内訳書に載っている金額に対応する入出金を探します。
通帳で動きを見つけたら、翌期の元帳と照らし合わせます。
主に見るのは、次のような処理です。
- 税金や社会保険料の納付
- 入金者への返金
- 売掛金の回収処理
- 前受金などへの振替
- 入金内容の訂正
通帳に支払いが記録されていても、どの預り金に対応するのか分からないことがあります。
支払日と金額を元帳で照らし合わせると、期末残高がどのように減ったのかを追えます。
翌期に入っても動きが見当たらなければ、入金時の資料へ戻ります。
手元に集めたい資料は、次のとおりです。
- 預金通帳や振込明細
- 請求書や契約書
- 給与台帳
- 税金や社会保険料の納付記録
- 入金について社内でやり取りした記録
書類が残っていなければ、当時の経理担当者や、入金の事情を知る人へ確認する必要があります。
源泉所得税預り金は納付記録と対応させる
「仮受金(前受金・預り金)の内訳書」には、源泉所得税預り金の内訳を記載する部分があります。
源泉所得税預り金は、給与や源泉徴収の対象となる報酬などを支払う際に会社が差し引き、納付するまで預かる金額です。
源泉所得税は、原則として給与などを支払った月の翌月10日までに納付します。
なお、特例を受けている場合は、対象となる所得税を6か月分まとめて納めるため、決算日に数か月分の残高が残ることもあります。
内訳書では、期末残高がどの月の支払いから生じた金額なのかを見ます。
つづいて、納付書やインターネットバンキングの記録から、期限までに納付されたかをたどります。
納付済みなのに元帳の預り金が減っていなければ、納付時に別の勘定科目を使っているかもしれません。
反対に、納付期限を過ぎても残高が残り、支払った記録も見当たらなければ、納付状況を早めに調べる必要があります。
決算日に残高があるかどうかだけではなく、内訳書の金額と納付予定が対応しているかを見ます。
長く残る仮受金・預り金は入金時の取引までさかのぼる

前期から続く金額について、決算後の納付や返金も見当たらなければ、入金時の取引を改めて調べます。
仮受金のまま残っている金額には、次のような可能性があります。
- 売掛金の回収
請求済みの代金が入金されたものの、売掛金を消し込まず、仮受金へ計上している - 商品やサービスの前受代金
納品やサービス提供の前に受け取った代金を、前受金ではなく仮受金で処理している - 返金が必要な誤入金
入金者や金額を確認した結果、自社が受け取る理由のないお金だと判明して、後日返金する予定のもの - 会社が借り入れた資金
会社へ入金された資金について、借入れとして処理しないまま仮受金に残している - 売上計上を検討すべき入金
商品の引渡しやサービスの提供が済んでいるものの、対応する売上が帳簿に計上されていない
同じ仮受金でも、必要な処理は一律ではありません。
入金に対応する請求や契約を探し、帳簿上の処理と一致しているかを見ます。
売掛金の回収か前受金かを見分ける
取引先からの入金であれば、請求書や売掛金元帳を見ます。
すでに売掛金を計上していた取引なら、入金は売掛金の回収です。
仮受金を売上高へ振り替えるのではなく、対応する売掛金を消し込みます。
商品やサービスを提供する前に受け取った代金なら、前受金として処理することが考えられます。
売上へ振り替える時期は、商品の引渡しやサービスの提供状況など、取引内容に応じて判断します。
売上としてまだ計上していない取引の代金だった場合は、売上の計上時期も含めた検討が必要です。
特に気を付けたいのが、売上の二重計上です。
すでに売上高や売掛金を計上しているにもかかわらず、仮受金を再び売上高へ振り替えると、同じ取引を二度計上してしまいます。
入金の理由が分かったら、過去の帳簿も見て、対応する売上や売掛金が計上済みかを確かめます。
内容が分からないまま雑収入へ振り替えない
決算で仮受金を残したくないからといって、内容不明の金額を安易に雑収入へ振り替えるべきではありません。
後日入金者へ返すお金かもしれません。
また、すでに計上した売掛金の回収や、商品を引き渡す前に受け取った代金である可能性もあります。
根拠を調べずに雑収入へ振り替えると、利益が実態より多くなり、法人税などの計算にも影響するおそれがあります。
資料を探しても内容が判明しなければ、分かった事実と不明な点を分けて記録しておきます。
記録しておきたい内容は、次のようなものです。
- 通帳から分かった入金日と名義
- 元帳に記載されていた摘要
- 社内で聞き取った内容
- 見つからなかった請求書や契約書
- 判断できなかった取引の経緯
不明な点を無理に埋めず、集めた資料を税理士などの専門家へ見せて、処理方法を検討することをおすすめします。
まとめ|仮受金・預り金を整理して貸借対照表の中身を明確にする
前期と当期の内訳書を見比べたら、同じ相手先と金額が続いている行や、摘要から内容を読み取れない項目をひろい出します。
該当する残高について、次の4項目を書き出してみてください。
- 相手先
誰から受け取ったお金か - 入金理由
何のために受け取ったか - 解消方法
納付、返金、振替のどれに当たるか - 予定日
いつ残高が動く見込みか
前期から続いている残高は、元帳で発生日を探します。
預金通帳や振込明細へ戻れば、入金者と入金日をたどれるでしょう。
入金理由が分かったら、納付する金額なのか、返金するお金なのか、本来の勘定科目へ振り替えるのかを考えます。
予定日も書いておくと、調べた残高を再び放置せずに済みます。
源泉所得税預り金であれば、納付予定日を記入します。
前受金なら、商品を引き渡す日やサービスを提供する時期が目安になります。
予定日を決められない残高については、誰がどの資料を調べるのかまで整理しておきましょう。
担当者と期限が曖昧なままでは、次の決算でも同じ金額が残ってしまいます。
判断できない残高は決算確定前に相談する
何年も前から続く残高は、通帳や元帳だけでは内容を特定できないことがあります。
分からないまま科目を変更するより、確認できた事実と関連資料をもとに専門家へ相談してください。
相談するときは、次の資料があると話を進めやすくなります。
- 前期と当期の内訳書
- 残高が発生した年度の元帳
- 入金時の預金通帳
- 関連する請求書や契約書
- 税金などの納付記録
- 社内で聞き取った内容のメモ
過去から引き継いだ残高は、当期だけの問題とは限りません。
以前の売上計上や申告内容に関係する場合もあるため、決算書を確定する前に相談した方が、状況に応じた処理を検討しやすくなります。
仮受金や預り金の中身が分かると、貸借対照表に載っている負債を読み取りやすくなります。
経営者にとって知りたいのは、勘定科目の名前だけではないはずです。
- 近いうちに納付する金額はいくらか?
- 取引先へ返すお金が残っていないか?
- 売上や売掛金の処理に漏れがないか?
数字の内訳が分かれば、決算書は申告のためだけの書類ではなくなります。
前期と当期の内訳書を並べたら、同じ相手先と同じ金額が続いている行を見てください。
入金時の資料と決算後の動きをたどることで、残高が残っている理由が見えてきます。
内容を説明できない金額があれば、そのまま次の決算へ持ち越さず、決算を確定する前に整理しておきましょう。
仮受金や預り金の内訳書を前期と比べると、同じ相手先と金額が何年も残っていることがあります。
気になる残高があれば、入金時の通帳や元帳までさかのぼり、何のお金なのかを明らかにしたうえで、取引の実態に合う勘定科目へ整理することが大切です。
源泉所得税預り金については、内訳書の金額と納付記録が対応しているかも見ておきましょう。
当事務所では、確認したい範囲に応じて、次のサービスをご用意しています。
- メール相談
仮受金や預り金の会計処理、振替先となる勘定科目など、確認したい点が具体的に決まっている方 - 個別コンサルティング
前期と当期の内訳書や元帳を見ながら、長く残る金額の発生経緯、決算後の動き、決算書への反映をまとめて整理したい方 - 税務顧問
仮受金や預り金の残高を毎期見直し、源泉所得税の納付状況や貸借対照表の内容まで継続的に確認したい方
仮受金の入金理由が分からない場合や、預り金が何年も同じ金額で残っていて整理したい場合は、ご相談ください。
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