個人で作った文章、イラスト、動画、オンライン教材、講座コンテンツ、デザイン、音楽、ノウハウなどは、法人へ譲渡したり、法人に使用許諾したりすることがあります。
そのときに注意すべきなのは、個人で作った著作権を法人へ譲渡したり、法人に使用許諾したりすると、その譲渡対価や著作権使用料に対して課税関係が生じるという点です。
この記事では、個人で作った著作権を法人へ移す場合の税金と会計処理について、譲渡と使用料の基本を中心に整理します。
著作権を法人へ移す方法は「譲渡」と「使用許諾」に分かれる
近年は、個人が自分の作品やコンテンツを発表できる場が増えています。
イラスト、写真、音楽、デザイン、教材、テンプレート、ノウハウ資料なども、インターネットを通じて販売・提供しやすくなりました。
このような流れの中で、個人で始めたコンテンツビジネスが成長し、法人化や法人での販売に移っていくことがあります。
その場合に問題になりやすいのが、個人で作った著作権を法人でどのように扱うかです。
個人が作ったコンテンツを法人で使うのであれば、権利関係、お金の流れ、税務処理、会計処理を整理する必要があります。特に、著作権を法人へ完全に移すのか、それとも個人に残したまま法人に使わせるのかによって、処理の考え方が変わります。
個人が作った著作権を法人で使う場合には、個人から法人へ何らかの権利移転や使用許諾があったものとして整理する必要があります。
たとえば、個人が法人に著作権を譲渡したのであれば、個人側には譲渡対価の収入が発生します。法人側では、その著作権を取得したものとして会計処理を検討します。
一方、著作権は個人に残したまま法人に使わせるのであれば、個人側には著作権使用料やロイヤリティ収入が発生し、法人側では使用料の支払いとして処理を検討します。
このように、同じ「法人でコンテンツを使う」という場面でも、契約の内容によって税務・会計処理が変わります。
著作権を法人へ譲渡する場合
著作権を法人へ譲渡する場合とは、個人が持っている著作権そのものを法人へ移すことをいいます。
この場合、法人はその著作権を保有する立場になります。個人は著作権を移す対価として譲渡代金を受け取ることになります。
税務上は、個人側では著作権を譲渡したことによる所得を検討します。法人側では著作権を取得したものとして、資産計上の要否を検討することになります。
たとえば、個人で作ったオンライン教材の著作権を法人へ譲渡し、今後は法人がその教材を販売していくような場合です。このようなケースでは、単に売上や経費だけを見るのではなく、著作権という権利が誰にあるのかを整理しておくことが重要です。
著作権を法人に使用許諾する場合
使用許諾とは、著作権そのものは個人に残したまま、法人に一定の範囲で利用を認める方法です。
たとえば、個人が作った教材やイラストを、法人が一定期間だけ販売・利用できるようにする場合です。この場合、法人は個人に対して著作権使用料やロイヤリティを支払うことがあります。
使用許諾の場合は、著作権そのものを法人に移すわけではありません。そのため、譲渡とは異なり、個人側では使用料収入として整理し、法人側では使用料の支払いとして処理することになります。
個人が著作権を法人へ譲渡した場合の税金
譲渡対価には課税関係が生じる
個人が法人へ著作権を譲渡し、その対価を受け取った場合、個人側では課税関係が生じます。
個人から法人へ著作権という財産を移し、その対価を受け取ったのであれば、個人側で申告の要否を確認する必要があります。
また、無償や著しく低い金額で著作権を移す場合にも、税務上の検討が必要になることがあります。
金額設定については、対象となるコンテンツの価値、利用範囲、収益性、契約条件などを踏まえて考える必要があります。
著作権の譲渡は譲渡所得として整理する
個人が著作権そのものを法人へ譲渡した場合、その所得は譲渡所得として整理することになります。
ここで重要なのは、著作権の譲渡と著作権使用料を混同しないことです。
著作権そのものを法人へ移したのであれば、譲渡所得として整理します。一方、著作権は個人に残したまま法人に利用させ、使用料を受け取る場合は、事業所得または雑所得として検討することになります。
所得区分を間違えると、確定申告書の作成や税額計算に影響する可能性があります。そのため、まずは「権利そのものを移したのか」「使わせただけなのか」を確認することが重要です。
著作権の譲渡所得では計算項目の確認が必要
譲渡所得を計算する場合、単に入金額すべてがそのまま課税対象になるわけではありません。
一般的には、譲渡価額、取得費、譲渡費用などを確認します。
ただし、著作権の場合は、取得費をどのように考えるかが難しいことがあります。自分で創作した著作権の場合、外部から購入した資産とは異なり、取得費を明確に把握しにくいことがあるためです。
そのため、将来の著作権譲渡を想定する場合には、創作時から関連資料を残し、処理方針を整理しておくと、後日の譲渡時に計算根拠を確認しやすくなります。
個人が法人から著作権使用料を受け取る場合の税金
使用許諾の場合は著作権使用料・ロイヤリティが発生する
著作権を法人へ譲渡せず、個人に残したまま法人に使わせる場合には、法人から個人へ著作権使用料やロイヤリティを支払う形が考えられます。
たとえば、個人が作った教材を法人が販売し、売上の一定割合を個人に支払う場合です。また、月額固定の使用料を設定する場合や、一定期間の利用に対して一括で使用料を支払う場合もあります。
このような使用料は、個人側では収入になります。そのため、確定申告での取り扱いを確認する必要があります。
著作権使用料は事業所得または雑所得として整理する
著作権使用料を受け取った場合、個人側では事業所得または雑所得として整理することになります。
継続的にコンテンツ制作やライセンス提供を行っている場合には、事業所得として検討することがあります。一方で、単発的な収入や副業的な収入である場合には、雑所得として整理することも考えられます。
つまり、「著作権使用料」という名称だけで所得区分が決まるわけではありません。活動の実態、継続性、規模、営利性、帳簿管理の状況などを踏まえて判断する必要があります。
源泉徴収が関係する場合もある
法人から個人へ著作権使用料や原稿料、講演料などを支払う場合、源泉徴収が関係することがあります。
源泉徴収がある場合、個人が実際に受け取る金額は、支払総額から源泉所得税等が差し引かれた金額になります。しかし、確定申告では、入金額だけではなく、支払総額や源泉徴収税額を確認する必要があります。
支払明細、請求書、契約書、入金額、源泉徴収税額をセットで管理しておくと、あとから整理しやすくなります。
法人が著作権を取得した場合の会計処理
著作権を取得した場合は無形固定資産としてB/Sに計上する
法人が個人から著作権を取得した場合、法人側では著作権を資産として整理します。
この場合、支払った金額を単なる経費として処理するのではなく、貸借対照表(B/S)の無形固定資産として計上することになります。
たとえば、法人が個人からオンライン教材の著作権を取得した場合、その著作権は法人が保有する権利です。そのため、法人の資産として管理する考え方になります。
実務上は、次の資料を残しておくことが大切です。
- 著作権譲渡契約書
- 請求書
- 支払記録
- 対象コンテンツがわかる資料
- 金額設定の根拠に関するメモ
会計ソフトに入力する前に、まずは「これは費用なのか、資産なのか」を整理しておくことが大切です。
著作権は減価償却資産ではない点に注意する
法人側で特に注意したいのが、著作権の減価償却です。
著作権は無形固定資産として扱いますが、税務上の減価償却資産には該当しません。
そのため、会計ソフトで固定資産登録をする際に、無形固定資産だからといって自動的に減価償却費を計上しないよう注意が必要です。
特許権、商標権、ソフトウェアなどと混同してしまうと、法人側で減価償却費を誤って計上してしまう可能性があります。著作権を取得した場合は、無形固定資産として管理しつつ、減価償却費を計上しない処理方針を確認しておくことが大切です。
法人が著作権使用料を支払う場合の会計処理
法人が個人から使用許諾を受けて著作権使用料を支払う場合、その使用料は法人側で費用として処理します。
この場合、貸借対照表(B/S)の資産ではなく、損益計算書(P/L)の費用として計上することになります。
勘定科目としては、会社の管理方法に応じて、著作権使用料、ロイヤリティ、支払手数料などを検討します。継続的に使用料が発生する場合には、専用の勘定科目を設けると、あとから金額を確認しやすくなります。
また、支払先が個人の場合には、源泉徴収の有無も確認する必要があります。契約書、請求書、支払明細、源泉徴収税額などを保管しておくことで、税務処理や決算時の確認がしやすくなります。
まとめ
個人で作った著作権を法人へ移す場合には、まず譲渡なのか使用許諾なのかを整理することが大切です。
著作権を法人へ譲渡する場合、個人側では譲渡所得、法人側では無形固定資産としてB/Sに計上します。
一方、著作権を法人へ使用許諾する場合、個人側では著作権使用料を事業所得または雑所得、法人側では使用料をP/Lの費用として処理します。
また、法人が著作権を取得した場合には、著作権は無形固定資産ではあるものの、減価償却資産ではないため、減価償却費を計上しない点にも注意が必要です。
著作権そのものを移すのか。法人に使わせるだけなのか。個人側ではどの所得区分になるのか。法人側では資産なのか費用なのか。
この順番で整理していくことで、コンテンツビジネスの税務・経理は対応しやすくなります。
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