はじめに
この記事では、ひとり社長や法人成りを検討している個人事業主向けに、コンテンツ販売を始める前に決めておきたいお金のルールを解説します。
具体的には、次の順番で確認していきます。
- コンテンツ販売は法人税やるべきか、個人でやるべきか
- 法人から社長へお金を支払う場合の考え方
- ひとり社長が最初に決めるべき実務ルール
コンテンツ販売は、動画講座、note、オンライン教材、会員向けコンテンツなど、ひとり社長でも始めやすい事業です。
一方で、始めやすいからこそ、あとから「これは会社の売上なのか?社長個人の売上なのか?」という問題が起きやすい分野でもあります。
特に法人を持っている場合、法人と個人の財布を混ぜてしまうと、税務上のリスクが大きくなってしまうので注意が必要です。
コンテンツ販売は法人でやるべきか?個人でやるべきか?
まず決めるべきことは、そのコンテンツ販売を法人の事業として行うのか、個人の事業として行うのかです。
たとえば、法人のホームページ、法人名義のSNS、法人の顧客リストを使って販売する場合は、法人の売上と考えるのが自然です。
一方で、社長個人の名前で、法人とは別の活動として販売している場合は、個人の収入として整理するケースもあります。
問題になるのは、次のようなケースです。
- 販売ページは社長個人名義
- 決済口座は法人名義
- 広告費は法人カードで支払い
- 制作作業は社長個人が休日に行っている
- 売上だけは個人で申告したい
このように法人と個人が混ざると、売上が法人or個人のどちらに属するかがあいまいになります。
法人税の考え方では、資産の販売や役務提供などの収益は、原則として契約などの取引単位で認識していくことが前提とされています。国税庁の法人税基本通達でも、資産の販売等に係る収益は原則として個々の契約ごとに計上することになっています。
つまり、コンテンツ販売も「誰が契約し、誰が販売し、誰が対価を受け取るのか」を整理しておくことが大切です。
法人と個人をその時々で変えると何が問題か
コンテンツ販売では、試算表を見る度に利益が出ている年だけ個人にしたい、赤字になりそうな年だけ法人にしたい、という考えが出てしまう人がいるかもしれませんが、これは利益調整に該当してしまうため大変危険な行為となります。
意図的ではない場合でも、同じコンテンツについて、年度ごとに法人の売上になったり、個人の売上になったりすると、利益調整をしているのではないか?という誤解を招くので税務上のリスクが高くなります。
また、売上の帰属が変われば、それに対応する経費も変わります。
たとえば、法人の売上とするなら、次のような経費も法人側で整理する必要があります。
- 広告宣伝費
- 決済手数料
- 撮影機材代
- 編集ソフト代
- 外注費
- サーバー代
- 販売ページ作成費
反対に、個人の売上とするなら、これらの経費を個人側で整理する必要があります。
後から「このレシートは法人?個人?」と分けようとしても、内容を忘れていることが多いです。
その結果、プライベートのクレジットカードで払った経緯を法人の帳簿に乗せた結果、残高が合わなくなり、記帳の修正、申告内容の見直しなどが必要になり、非常に手間がかかります。
法人から社長へお金を支払う場合の考え方
コンテンツ販売を法人で行う場合でも、社長個人がコンテンツを作ることがあります。
この場合、法人から社長へ何らかの支払いをするかどうかが論点になります。
代表的には、次のようなケースが考えられます。
役員報酬として支払う
社長が法人の役員としてコンテンツ制作や販売活動を行う場合、法人から社長への支払いは役員報酬とするケースがあります。
役員報酬は、法人税で細かいルールがあります。
そのため、思いつきで金額を増減させることは避けるべきです。
外注費として支払う
社長個人が法人とは別の立場で制作業務を請け負うような形にする場合、外注費として考えることがあります。
ただし、ひとり社長の場合、法人と個人の関係が近いため、実態の説明が重要になります。
実際には業務を依頼する側(法人)と依頼される側(個人)が同じ人になりますので、合理的に業務委託を説明することは難しいと思われます。
なお、社長個人以外の第三者へ業務を外注する場合でも、契約書、業務内容、金額の妥当性、支払条件などを整理しておく必要があります。
著作権料として支払う
社長個人が著作権を持つ教材や原稿を、法人が利用して販売する場合、著作権料として整理する考え方もあります。
ただし、この場合も「誰が著作権を持っているのか」「法人は何を利用しているのか」を明確にしておく必要があります。
いずれの方法でも、重要なのは形式だけを整えることではありません。
実際のお金の流れ、契約の内容、販売の実態が一致していることが大切です。
ひとり社長が最初に決めるべき3つのルール
コンテンツ販売を始める前に、少なくとも次の3つは決めておきましょう。
1. 財布・銀行口座・カードを完全に分ける
- 法人の売上は法人名義の口座へ入金する。
- 法人の経費は法人カードや法人名義の口座から支払いをする。
- 個人の売上や支出は、個人口座、個人カードで管理する。
これだけでも、後からの確認がかなり楽になります。
2. レシートを法人と個人で分ける
撮影用のライト、マイク、書籍、セミナー参加費などは、法人でも個人でも使えそうなものが多いです。
だからこそ、購入時点で「これは法人の事業に使うものか」を判断しておくことが大切です。
法人と個人の財布が同じだと、数か月後に整理しようとしても判断できないことがあります。
3. 売上・経費データをすぐに記帳する
コンテンツ販売は、少額の売上や決済手数料が細かく発生しやすいです。
月末や決算時にまとめて処理しようとすると、内容の確認に時間がかかります。
クラウド会計と決済サービス、銀行口座、クレジットカードを連携しておくと、記帳漏れを防ぎやすくなります。
税務調査で見られやすいポイント
税務調査では、単に売上が正しく入っているかだけでなく、法人と個人の間で売上や経費を都合よく付け替えていないかが見られることがあります。
特に注意したいのは、次のような状態です。
- 同じコンテンツなのに、ある年は法人売上、別の年は個人売上になっている
- 売上は個人、広告費は法人になっている
- 法人カードで支払った経費を、個人の売上に対応する経費としている
- 法人サイトで販売しているのに、入金先が個人口座になっている
会計では、収益とそれに対応する費用を合理的に対応させる考え方が重要です。
また、会計処理は毎期継続して適用することが求められ、企業会計原則でも「処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりに変更してはならない」とされています。
そのため、コンテンツ販売を法人で行うと決めたなら、売上、経費、入金口座、契約名義を法人側にそろえることが基本です。
個人で行うと決めたなら、法人の資産や経費と混ざらないように整理する必要があります。
まとめ
コンテンツ販売は、ひとり社長にとって始めやすく、利益率も高くなりやすいビジネスです。
しかし、法人と個人の区別があいまいなまま始めると、売上の帰属や経費の処理で問題が起きやすくなります。
大切なのは、始める前のルール作りです。
- 法人で販売するのか
- 個人で販売するのか
- 入金口座はどこにするのか
- 経費はどちらで支払うのか
- 社長への支払いをどう整理するのか
このあたりを事前に決めておけば、記帳も申告もスムーズになります。
コンテンツ販売を始める予定がある方や、すでに法人と個人のお金が混ざっている方は、早めに整理しておくことをおすすめします。
当事務所では、ひとり社長や法人成りを検討している方の税務・会計整理をサポートしています。
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