資金繰りが苦しい時ほど利益より資金繰り表を見る理由

財務

はじめに

「試算表では利益が出ているのに、なぜかお金が残らない」
「売上はあるのに、カード引落日前になると資金が足りない」
個人事業主やひとり社長の方から、このような相談を受けることがあります。
結論から言うと、資金繰りが苦しいときに見るべきなのは、会計上の「利益」だけではありません。

実際にお金がどのタイミングで入り、どのタイミングで出ていくのかを把握する「資金繰り」です。
この記事では、次の流れで解説します。

  1. 利益が出ていても資金ショートする理由
  2. 売掛金・未払金・カード払いの落とし穴
  3. 簡易資金繰り表の作り方

難しい会計用語はできるだけ使わず、事業用口座の残高をイメージいただける内容にしています。

利益が出ていても資金ショートする理由

利益とは、簡単にいうと「売上から経費を差し引いた金額」です。
たとえば、今月の売上が100万円、経費が60万円であれば、利益は40万円です。
試算表を見ると、事業は順調に見えるかもしれません。

しかし、ここで注意したいのが「売上=すぐに入金」ではないという点です。
請求書を発行して売上を計上しても、実際の入金は翌月末になることがあります。
いわゆる「末締め翌月末払い」の取引です。

この場合、月初に仕事をしても、入金されるのは翌月末です。
タイミングによっては、最悪で2か月弱、現金が入ってこないこともあります。
一方で、外注費、広告費、家賃、通信費、カード払いなどは先に出ていきます。
売上を作るために先行投資をした結果、利益は出ているのに口座残高が足りないという状態が起きます。

つまり、利益と資金繰りは同じではありません。
利益が出ていても、入金より先に支払いが来れば、資金ショートする可能性があります。

売掛金は「まだ入っていないお金」

資金繰りを考えるうえで、売掛金の理解はとても大切です。

売掛金とは、売上は発生しているものの、まだ入金されていない金額です。
たとえば、6月末に100万円の請求書を出し、入金予定が7月末だとします。
この場合、6月の売上としては100万円が計上されます。
しかし、6月中に事業用口座へ100万円が入るわけではありません。
この100万円を当てにして、6月中に広告費や外注費を支払ってしまうと、口座残高が不足することがあります。

さらに注意したいのは、予定どおり入金されるとは限らない点です。
取引先から、
「支払いを分割にしてほしい」
「今月の支払いを少し待ってほしい」
このような相談を受けることもあります。

売掛金があるから大丈夫と思っていても、入金が遅れれば資金繰りは一気に苦しくなります。
売掛金は「将来入る予定のお金」であって、「今使えるお金」ではありません。

未払金・カード払いの落とし穴

資金繰りで見落としやすいのが、カード払いです。
クレジットカードで経費を支払うと、その場では口座残高が減りません。
そのため、支払いを先送りできたように感じます。

しかし、カード払いには「締め日」と「口座引落日」があります。
たとえば、6月中にカードで広告費30万円を使ったとします。
実際に口座から引き落とされるのは、7月や8月かもしれません。

このとき注意すべきなのは、引落日に口座残高が足りるかどうかです。
仮に口座残高が20万円で、カード引落額が30万円なら、10万円不足します。
その翌日にまとまった売上入金がある予定でも、引落日に残高が足りなければ支払いはできません。

資金繰りでは、「いつか入る」ではなく「その日に足りるか」が重要です。
この感覚がないと、毎月カード引落日前に、プライベート口座から事業用口座や法人口座へお金を振り込む状態になりやすくなります。

法人の場合、社長個人のお金を会社に入れ続けると、役員貸付金などの管理も必要になります。
資金不足をその場しのぎで埋めていると、後から経理処理が複雑になることもあります。

資金繰り改善には資金繰り表と将来予測

資金繰りを改善する第一歩は、入金サイクルと支払サイクルを把握することです。
そのために役立つのが、資金繰り表です。
資金繰り表というと難しく聞こえるかもしれません。
しかし、最初はExcelやスプレッドシートで十分です。

次のような項目をメモしていきます。

  • 日付
  • 入金予定額
  • 支払予定額
  • 差引金額
  • 予定口座残高

たとえば、現在の口座残高が50万円だとします。
7月10日に外注費30万円を支払う。
7月15日にカード引落40万円がある。
7月31日に売掛金100万円が入金される。

この場合、7月15日時点では次のようになります。
現在残高50万円。
外注費30万円を支払うと、残高は20万円。
その後、カード引落40万円があると、20万円不足します。

7月31日に100万円入金される予定があっても、7月15日に資金ショートします。
このように、資金繰り表を作ると、将来のどの日にお金が足りなくなるのかが見えます。

会計ソフトを使っている場合は、資金繰り表を作成できる機能があるものもあります。
たとえば、弥生会計では資金繰り表の作成機能を利用できます。
ただし、最初から完璧な表を作る必要はありません。
大切なのは、売上や利益ではなく、実際の入金日と支払日を並べることです。

資金ショート直前の融資申込みは避けたい

資金繰り表を作る目的は、将来の現預金不足を早めに把握することです。
資金ショートの直前になって銀行へ融資を申し込んでも、すぐに入金されるとは限りません。

金融機関の審査には時間がかかります。
また、資金が尽きそうな状態での相談は、事業の見通しを説明するのも難しくなります。
一方で、早めに資金不足の時期がわかっていれば、対策を考える時間があります。

たとえば、次のような対応が検討できます。

  • 入金条件を見直す
  • 支払時期を調整する
  • 不要な支出を先送りする
  • 融資で現預金を増やす
  • 売掛金の回収状況を確認する

資金繰りは、問題が起きてから見るものではありません。
問題が起きる前に見るものです。

まとめ

利益が出ているのに資金繰りが苦しい原因は、入金と支払いのタイミングがズレていることにあります。
売掛金は、まだ入金されていないお金です。
カード払いは、後日にまとまって口座から引き落とされます。
売上を作るための先行投資で、入金より先にお金が出ていくこともあります。

そのため、資金繰りが苦しいときほど、利益だけを見るのではなく、資金繰りを見ることが大切です。

まずは、Excelやスプレッドシートで簡単な資金繰り表を作ってみましょう。
入金予定額と支払予定額を並べ、将来の残高がマイナスになる日を確認します。
残高がマイナスになる日があれば、その日が資金ショートの危険日です。

資金繰り改善には、資金繰り表と将来予測が欠かせません。
「利益は出ているのにお金が残らない」
「毎月、支払日前になると資金が不安になる」

このようなお悩みがある方は、早めに状況を整理することをおすすめします。

当事務所では、個人事業主・ひとり社長の方向けに、資金繰りや会計管理のご相談を承っています。
資金繰り表の作成や将来の資金不足への備えについてお悩みの方は、お問い合わせください。


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